ARK InvestのCEOであるキャシー・ウッド氏と同氏のチームがアクティブに運用しているARKイノベーションETF(ARKK)の下落が止まりません。
2020年に153%のリターンを実現した同ETFですが、先週だけで13%下落、過去3カ月で27%の下落となっています。5月6日も下落しており、米国東部時間13時42分には3.8%減の107.28ドルとなりました。
このETFは、バイオ技術、ロボット工学、人工知能、ブロックチェーン、金融技術などの分野における「破壊的イノベーション」銘柄に注目しています。一握りの高成長株に大きく傾斜した、テーマ別の集中型ファンドです。
上位10銘柄がポートフォリオの半分近くを占めています。テスラ(TSLA)が資産の約11%を占める最上位の保有銘柄で、スクエア(SQ)が6.5%、テラドック・ヘルス(TDOC)が6.3%、ロク(ROKU)が5.5%などとなっており、残りのトップ10は、ジロー (Z)、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ (ZM)、バイドゥ (BIDU)、ショッピファイ (SHOP)、スポティファイ・テクノロジー (SPOT)、イグザクト・サイエンシズ (EXAS)となっています。
これらの銘柄の多くは、市場の主役が高成長・高倍率銘柄からバリュー株やシクリカル株に移ったことで暴落しました。このETFは、長期的に有望な革新的技術分野へのエクスポージャーを提供していますが、投資家のリスク選好が冷え込み、モメンタムトレードが逆転する中で、不振に陥っています。
例えば、テスラは過去3ヶ月で22%下落しています。ズーム、ジロー、バイドゥは約30%下落。スポティファイとイグザクト・サイエンシズはそれぞれ25%の下落です。テラドックもポートフォリオの足を引っ張っており、4月26日以降の21%の落ち込みを含め、過去3カ月で47%の下落となっています。
210億ドルの資産を持ち、アクティブ運用されているETFの中では最大級の規模を誇るETFですが、ファクトセット社によると、投資家は先週7億7,000万ドルの株式を償還し、先月は全体で8億6,600万ドルの株式を償還しました。
この償還により、ETFの一部の中小型株に売り圧力がかかっている可能性がありますが、テスラやバイドゥなどのメガキャップにはあまり影響がないと思われます。
ここ数カ月の間に買った投資家は、大きな損失を抱えているかもしれません。Bear Traps Reportによると、ETFへの資金流入の大部分はここ9ヶ月間に行われています。このことは、ETFに流入した資金の50%が水面下に沈んでいることを意味する、と同レポートは述べています。
「資金流入の半分以上が損をしているということは、損切りをする投資家が増えていることを物語っている。一方で、インタラクティブ・ブローカーズでは、ARKKはもう借りられない(ショートできない)と聞いている」とBear Traps Reportは述べています。
テクニカル指標も良くありません。5月5日に「非常に弱気な終値」を記録し、6日の朝には1年以上ぶりに200日移動平均線を突破したそうで、Bear Traps Reportによるとこのレベルを下回ることは、「意味のある売り」がまだ続く可能性を示唆しているとのことです。
アナリストの評価も厳しくなっています。
CFRAは4月30日、このETFの評価を5つ星から2つ星に格下げしました。CFRAのETF・投資信託リサーチ部門の責任者であるトッド・ローゼンブルート氏は、「我々にとっての2つ星は、今後9カ月間にアウトパフォームする可能性が低いことを意味する」と述べています。また手数料は経費率で0.75%を徴収しており、平均的なリスク・リターンに見合わないとしています。
モーニングスターのアナリスト、ロビー・グリーンゴールド氏も弱気派です。このETFは、「しばしば不採算で、変動が激しく、連動して急落する可能性のある企業を好んでいる」とレポートに記載。ウッド氏の投資スタイルは、様々な市場環境におけるポートフォリオ全体のリスク・エクスポージャーをシミュレートしようとするのではなく、ボトムアップのストック・ピッキングというレンズを通してリスクを捉えていると指摘しています。また、ETFの資産規模が拡大するにつれ、「ファンドの流動性が低下し、深刻な損失を受けやすくなっている」とも指摘しています。
とは言え、早くからこのETFに投資し上昇の波に乗った投資家にとっては、ETFの記録は依然として驚異的なものです。
モーニングスター社によると、2014年10月の発売から2021年2月まで期間での年率36%というリターンは、ミッドグロース・カテゴリーの他のアクティブ運用のETFをすべて上回っています。また、ラッセル・ミッドキャップ・グロース・インデックスの15%のリターンや、ナスダック総合株価指数の19%の上昇率も上回っています。
ただ、やはり投資のタイミングは重要で、モーニングスターによると、アウトパフォーマンスの大部分は2017年と2020年にもたらされましたが、2015年にはカテゴリーに遅れをとり、市場の修正時にはインデックスや同業他社を下回る結果となっています。