良くて損益分岐点ぎりぎり、悪ければ赤字というのが、つい最近までのアマゾン(AMZN)の決算報告でした。しかし、その時代は終わったようです。
今日、同社は絶対的な利益創出マシンとなっています。2020年、アマゾンは213億ドルの純利益を上げ、世界で最も収益性の高い企業のひとつとなりました。今年の第1四半期には、81億ドルの純利益を上げ、四半期の新記録を達成しました。純利益率は7.5%で、過去10年以上で最高の利益率を記録しています。
このような結果は偶然ではありません。長年にわたる投資、顧客満足度の高さ、高成長・高利益率のビジネスを可能にする競争力の強化がもたらした結果なのです。
その利益率は今後ますます高くなって行くことが予想されます。利益を生み出す柱となるのが以下の3つの事業です。
マーケットプレイス
アマゾンは、最初は電子商取引の直接販売のみを行っていました。今でもその事業は同社の最大の収益源ですが、利益率は低いものです。直販事業はコストが高く、実店舗の小売業者やEコマース企業など、さまざまな企業と競争しています。
同社のサードパーティ・マーケットプレイスは、真の意味での利益の原動力となっています。
アマゾンは、自社プラットフォームでの販売を希望する業者にフルフィルメントなどのサービスを提供し、販売ごとに手数料を徴収しています。
1999年に販売を開始したそのビジネスは現在ファーストパーティの売上よりも大きくなっており、第1四半期には、アマゾンで販売された商品の55%がサードパーティの販売者によるものでした。
アマゾンがサードパーティの販売でどれだけの利益を上げているかは明らかになっていませんが、アマゾンの巨大な顧客基盤、高いトラフィック、物流ネットワークなど、同社の競争力を活用したマーケットプレイスであるため、利益率は格段に高いと見込まれます。
ショッピファイなどのライバルもいますが、いまのところ、アマゾンは圧倒的に有力な選択肢であり、ほとんどのオンライン販売者が最初に利用する場所です。
また、アマゾンは過去1年間に454億ドルの設備投資を行っていますが、その多くは生産能力と出荷速度を向上させるための物流に充てられています。これにより、サードパーティの販売者にとっては、より魅力的なプラットフォームであり続けると思われます。
広告事業
アマゾンは2008年に広告事業を開始しましたが、近年までその事業を拡大することはありませんでした。現在では、アルファベット、フェイスブックに次ぐ第3位のデジタル広告事業となっており、広告は販売者の売上向上に貢献するなど、さまざまな面でマーケットプレイスを補完しています。
第1四半期、主に広告で構成されるアマゾンの「その他」カテゴリーの売上は、77%増の69億ドルに急増しました。
広告販売は、すでに同社のウェブサイトに来ているトラフィックと、同社のプラットフォーム上ですでにビジネスを展開している販売者を活用しているだけのものであり、インフラがすでに整備されているため、同社にとって利益率の高い事業です。
CFOのブライアン・オルサフスキー氏は決算説明会で、トラフィックが好調であることに加え、広告チームが新製品を展開し、関連性やコンバージョンを高めていることを評価しました。
アルファベットやフェイスブックの今期の好調な業績報告が示すように、デジタル広告はブームを迎えています。パンデミックの影響でスクリーンタイムが急増し、企業は経済の回復に乗じようと躍起になっているため、少なくとも年内は広告需要は堅調に推移すると思われます。
AWS
アマゾンは、クラウドインフラサービスの先駆けとなったAmazon Web Servicesを10年近くにわたって収益の柱としてきました。
最近では、eコマース事業に注目が集まっていますが、AWSは成長を続け、増益を続けており、その勢いは衰えることを知りません。
第1四半期のAWSの売上高は、前年同期比32%増の135億ドル、営業利益は35%増の42億ドルとなりました。
オルサフスキーCFOは、AWSの勢いを強調し、ナショナルホッケーリーグやPGAツアーなどのスポーツ関係、Disney+を展開するウォルト・ディズニー、Torc roboticsなどの自動車メーカー、ディッシュ・ネットワークなどの通信事業者との新たな契約など、幅広い顧客層で成長が加速していると述べています。
クラウド・インフラストラクチャーの分野で以前よりも競争が激化していますが、この業界は活発に成長しており、高い利益率を生み出しているため、今後も長期的な収益の柱になると考えられます。