機関投資家の仮想通貨投資への参入が相次いでいます。以前中心だった個人、ヘッジファンド、富裕層から、現在は年金基金、財団、保険など伝統的な機関投資家に広がってきました。ビットコインなどの存在感が高まっています。
ただ、そんな機関投資家を悩ませているのが、ボラティリティの高さ。ビットコインの価格は1月9日に40,500ドル以上に高騰したあと、1月21日に32,200ドル強まで下落しました。このような価格の乱高下が安定したリターンを求める機関投資家の頭痛の種になっているのです。
ただ、ビットコイン価格の中長期的なターゲット価格を146,000ドルと試算するところ（JPモルガン・チェース）も出るなど、強気の見通しも増えており、金の代用資産になるとの声も出てきています。これまでのように無視はできない存在に仮想通貨はなっているのです。
仮想通貨とエヌビディア
こんな状況の中、仮想通貨でより安全確実に収益をあげる方法としてエヌビディア（NVDA）株の購入が注目されるようになりました。
仮想通貨の取引では、取引データを承認するために「マイニング（採掘作業）」と呼ばれる作業が必要になります。この作業は高性能のパソコンを使って行われ、この作業者を「マイナー」と呼びます。
マイニングに必要となるハードウェアがグラフィックカードであり、マイナーは採掘のためにエヌビディアのカードを使っています。
マイニングは3年前にブームとなり、当時のエヌビディアの売上の5%近くを占めていました。ブームはいったん過ぎましたが、今また需要が旺盛になっています。
RBC Capital Marketsによると、グラフィックスのスペシャリストであるエヌビディアは、2021年度第3四半期に1億7500万ドル相当のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)をマイナーに販売したそうです。
これは、エヌビディアの第3四半期の売上47.3億ドルのわずか3.7％に過ぎませんが、需要が供給を上回って価格が上昇しているため、マイニングの需要の高まりは同社にとって大きな意味があります。
エヌビディアの最新のグラフィックカードRTX 30シリーズは、ゲーマーと仮想通貨のマイナーの両方からの大量の需要のおかげで、供給が不足しています。カードは、発売されるとすぐに在庫切れになると言われており、GPUの供給は、4月に終了する同社の会計年度第1四半期を通して、不足した状態が続くことを明らかにしています。
また、エヌビディアは、最新のRTX 30 Ampereカードの売上が、先行するRTX 20シリーズの2倍のペースで推移していることも明らかにしています。驚異的な需要と供給不足の組み合わせが、GPU価格の高騰を招いているのです。
旺盛な需要
仮想通貨需要はエヌビディアの業績に二つのインパクトを与えています。ひとつは需要の増加、もうひとつは販売価格の上昇です。
マイニング専用のカードがないため、マイニング需要の高まりをエヌビディアは正確な数字としてつかまえてはいません。推測されるのは、カードがあまりにも急激に市場からなくなってしまったことと、新しいRTXカードでのマインニングの方が効率が良くなる性能面から、販売好調の主因は仮想通貨需要によるものと見られます。
イーサリアムのマイニングでは、RTX 3080への投資をわずか233日で回収できることが報告されており、利益が出るまでに2年半かかったRTX 2080よりも大幅に改善されています。
さらに、RBCによると、最近のイーサリアムのマイニングにおける技術的な変更によりマイナーは新しいハードウェアへの変更を余儀なくされるとのこと。そうなれば、エヌビディアのカードの需要はますます旺盛になります。
仮想通貨への安全投資
エヌビディアの事業の柱は仮想通貨ではありません。伝統的に強いビデオゲーム市場、そして近年急速に伸びているデータセンター市場が彼らの事業の要です。3年前もそうだったように仮想通貨需要の減少から受ける影響は少なくはありませんが、メインの事業でないだけにその範囲は限定的です。
大きく伸びることが期待できる一方で、急激に失速する恐れも強い仮想通貨。そのリスクを避け、少しでも安全な投資を行うならば、仮想通貨を直接買うよりも、エヌビディア株を買うことによる間接投資の方が良いのかもしれません。