IBMが「量子版TSMC」へ 米政府10億ドル支援で始まる量子コンピューター製造革命

  • 2026年9月17日
  • 2026年9月17日
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IBM(IBM)の量子コンピューティング戦略が、新たな段階に入りました。

IBM子会社のアンデロンは、米商務省から10億ドルの研究開発助成金を受ける契約を正式に締結したことを受け、ニューヨーク州北部で量子チップを製造するファウンドリーを整備します。IBM自身もアンデロンに10億ドルを拠出する方針です。

今回の計画で重要なのは、単なる量子コンピューターへの追加投資ではありません。量子コンピューティング産業が研究室での技術開発から、実際にチップを継続生産する製造インフラの整備へ進み始めたことです。

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IBMが量子チップの製造基盤を独立させる意味

アンデロンの施設は300mmウエハーに対応し、すでに最初のチップの製造を開始しています。

注目されるのは、この施設がIBM専用ではない点です。IBMは顧客の1社という位置付けで、D-ウェーブ・クオンタム(QBTS)など他社も関心を示しています。

これは現在の半導体産業で広く利用されているファウンドリーモデルに近い考え方です。

IBMが自社の量子プロセッサーだけを製造するのであれば、社内設備として運営する方法もあります。しかし、アンデロンを独立した子会社として運営し、外部企業にも製造能力を提供できれば、IBMは量子コンピューターそのものだけでなく、量子産業の製造インフラから収益を得られる可能性があります。

どの企業や技術方式が将来の量子コンピューティング市場を主導するかは、まだ決まっていません。そのため、複数の開発企業を顧客として取り込める製造基盤を保有することには大きな戦略的意味があります。

毎年新しい量子プロセッサーを開発する体制へ

IBMリサーチは2026年5月、毎年新しい量子プロセッサーを設計する段階に入ったと説明しています。

新しいプロセッサーを継続して投入するためには、設計技術だけでは十分ではありません。安定して試作と製造を繰り返せる生産基盤が必要になります。

アンデロンが本格稼働すれば、IBMは設計、製造、検証、改良という開発サイクルを継続的に回しやすくなります。

現在の半導体産業でも、設計能力と同様に高度な製造技術が競争力を左右しています。量子コンピューティングでも同じ構造が形成されるなら、早い段階から製造ノウハウを蓄積するIBMには長期的な優位性が生まれる可能性があります。

量子関連企業では、すでに研究開発だけでなく、受注や売上を伸ばす動きも見え始めています。量子コンピューティング市場全体が「研究」から「商業化」へ移行できるかも、アンデロンの将来を考えるうえで重要です。

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米政府が量子技術を国家戦略として支援

今回の10億ドルの助成金は、2022年に成立したCHIPS and Science Actに基づくものです。

さらに、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)、D-ウェーブ・クオンタム、クオンティニュアム(QNT)も米商務省とそれぞれ1億ドルの契約を締結しています。

グローバルファウンドリーズ(GFS)についても、米国内製造に関する3億7,500万ドル規模の契約が結ばれています。

こうした動きを見ると、米政府は1社だけを支援するのではなく、量子コンピューティングの研究開発から製造までを含むエコシステム全体を米国内に構築しようとしていることが分かります。

背景には経済政策に加え、安全保障があります。高性能な量子コンピューターは将来的に、現在広く利用されている暗号技術の一部を解読できる可能性があります。

量子技術は単なる新しいコンピューター市場ではなく、国家安全保障と結び付いた戦略技術になりつつあります。

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DARPAも2033年の実用化を検証

米国防総省傘下のDARPAも、量子コンピューターの実用化に向けた検証を進めています。

約12社の科学者が参加し、2033年までに誤り訂正機能を備えた実用規模の量子コンピューターを構築できるかを検証しています。

米政府はさらに、2028年までにフォールトトレラント型量子コンピューターを国立研究所へ提供する目標も掲げています。

量子コンピューターは規模を拡大するとエラーが増えやすく、誤り訂正が実用化の大きな課題です。

アンデロンが直接この問題を解決するわけではありませんが、高性能な量子チップを継続的に製造し、改良できる環境が整うことは、技術開発を加速させる基盤になります。

IBM株への短期的な効果はまだ見えない

量子コンピューティングの将来性と、IBM株の短期的な値動きは分けて考える必要があります。

アンデロンの正式発表が行われた2026年9月16日、IBM株は4.4%下落し、年初来では約20%の下落となりました。

現時点では、量子コンピューティング事業がIBM全体の業績を大きく左右する規模には達していません。

技術的に有望な市場であることと、短期間で利益に貢献することは別の問題です。

投資家にとって今後重要になるのは、アンデロンがIBM以外の外部顧客をどこまで獲得できるか、量子チップの生産量が拡大するか、そして量子コンピューターの実用化が実際に進むかという点です。

IBM株の評価については、量子事業の将来価値だけでなく、現在の株価にどこまで成長期待が織り込まれているかを見る必要があります。

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IBMは「量子版TSMC」を目指せるのか

アンデロン設立で最も興味深いのは、IBMが量子コンピューターを開発する企業であると同時に、量子チップの製造インフラを提供する立場にもなることです。

現在の量子コンピューティング市場には、IBMのほか、アルファベット(GOOGL)、リゲッティ・コンピューティング、D-ウェーブ・クオンタム、クオンティニュアムなど複数の企業が存在しています。

どの技術が最終的に主流になるかが分からない段階では、特定の方式だけに依存するより、多くの企業が利用できる製造基盤を提供する戦略には合理性があります。

半導体市場では、多数の設計企業から製造を受託するファウンドリーが大きな価値を持っています。

量子コンピューティングでも同じ産業構造が形成されれば、アンデロンはIBMにとって新たな競争力になる可能性があります。

ただし、現時点の量子コンピューターは、古典コンピューターに対する優位性を実証した事例が小規模な研究課題に限られています。

今回の10億ドルの政府支援は、量子コンピューターの商業化が完成したことを意味するものではありません。

むしろ重要なのは、量子産業が研究開発だけの段階から、製造設備へ大規模な資金を投入する段階に進み始めたことです。

IBMのアンデロンは、量子コンピューティングが「研究室から工場へ」と移行する流れを象徴する存在になりそうです。

情報ソース: Barron’s: “IBM Seals $1 Billion Government Deal to Build America’s First Quantum Foundry” (By Mackenzie Tatananni, Sept. 16, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら IBM

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