AI向けデータセンターへの投資が世界的に加速しています。オラクル(ORCL)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)など大手テクノロジー企業は、AI需要の拡大を見込み巨額の設備投資を進めています。
しかし、現在発表されているデータセンター計画のすべてが実際に完成するとは限りません。
バロンズは9月29日、コロンビア・ビジネス・スクールのスタイン・ファン・ニューワーバーグ教授による研究を紹介しました。同教授の分析によると、米国で計画されているデータセンター容量のうち、約45%が最終的に建設されない可能性があります。
AIインフラ投資の規模が急拡大するなか、投資家にとっては「発表された計画」と「実際に稼働する設備」を分けて考えることが重要になっています。
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米国で計画されるデータセンターは509GW
バロンズによると、2026年7月時点で米国では約509GWの新規データセンター容量が計画されています。
これは現在稼働している容量の約9倍という非常に大きな規模です。
さらに、計画されている容量の約4分の1は、稼働開始が2033年以降になる可能性があります。
AIブームを背景にデータセンターの新設計画は相次いでいますが、計画発表から実際の稼働までには長い時間がかかります。その間に資金調達や電力供給、建設コストなどさまざまな問題が発生する可能性があります。
建設されない計画を金額にすると9.3兆ドル規模
前述の509GWに45%を当てはめると、建設されない可能性がある容量は約229GWとなります。
では、この229GWは金額にするとどの程度になるのでしょうか。
ニューワーバーグ教授は、200MW規模のAIデータセンターキャンパス1カ所を建設するために約82億ドルが必要になると試算しています。
229GWは229,000MWなので、200MW規模のデータセンター約1,145カ所分に相当します。バロンズがこの前提をもとに計算すると、実現しない可能性がある投資額は約9.3兆ドルになります。
つまり、すでに9.3兆ドルが投資され、それが失われるという意味ではありません。現在発表されているデータセンター計画のうち、建設されない可能性がある部分を金額に換算すると約9.3兆ドルになるという試算です。
この数字は確定した予測ではなく、将来の建設確率など複数の仮定をもとにしたシナリオです。それでも、現在公表されているAIインフラ計画がどれほど巨大な規模に膨らんでいるかを示しています。
それでも10.3兆ドルの投資が実現する可能性
一方で、今回の分析はAIデータセンター投資の崩壊を示しているわけではありません。
中心シナリオでは、現在計画されているデータセンターのうち約300GWは実際に建設されると予想されています。
2032年までの累計投資額は約10.3兆ドルに達する可能性があり、年間平均では米国GDPの約3.6%に相当します。
これは鉄道、高速道路、通信網など、米国で過去に行われた大規模なインフラ投資を上回る可能性があります。
つまり、計画の45%が実現しなかったとしても、残った投資だけで歴史的な設備投資ブームになるということです。
データセンター建設には多くの障害
データセンター計画が実現しない理由はいくつも考えられます。
特に大きな問題となるのが電力です。AIデータセンターは大量の電力を必要とするため、電力網への接続や発電能力の確保が建設スケジュールを左右します。
このほか、建設費の上昇、地域住民の反対、許認可の遅れなどもリスクになります。
さらに、AI技術は急速に進歩しています。半導体性能の向上やAIモデルの効率化が進めば、現在想定されているほど多くのデータセンター容量が必要なくなる可能性もあります。
稼働開始までの期間が長いプロジェクトほど、こうした変化の影響を受けやすくなります。
オラクルなど大手企業にも建設リスク
バロンズの記事では、オラクルのデータセンター計画にも触れています。
オラクルはAI向けクラウドインフラへの投資を急速に拡大していますが、ニューメキシコ州で計画するデータセンターをめぐり、建設遅延への備えに関する報道が株価材料となりました。
オラクル側はその後、プロジェクトは予定通り進んでいると説明しています。
ただ、AIインフラ投資が巨大化するにつれて、市場は設備投資額の大きさだけではなく、実際の建設進捗や稼働開始時期まで確認する必要があります。
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アルファベットやアマゾンでは資金負担も拡大
巨額のデータセンター投資は、アルファベットやアマゾンなど大手クラウド企業のキャッシュフローにも影響を与えています。
投資規模が拡大するなか、企業がすべての建設資金を自社で負担するのではなく、プロジェクトファイナンス、共同事業、プライベートクレジットなどを利用するケースも増えています。
データセンターはテクノロジー業界だけの設備ではなく、不動産、電力、金融市場まで巻き込む巨大なインフラ資産になりつつあります。
アルファベットでは、AIデータセンターの電力確保に向けた取り組みも進めています。AI投資が拡大するほど、データセンターそのものだけではなく、それを動かすための電力確保も重要になります。
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アマゾンについても、AWSを中心にAIインフラへの投資を拡大しています。今後は巨額の設備投資をどこまでクラウド事業の成長と利益につなげられるかが重要になります。
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AI投資では「計画」より「実行」が重要に
今回のバロンズの記事で重要なのは、AIデータセンター投資が終わるという話ではありません。
むしろ、発表されている計画があまりにも巨大になったため、すべてが予定通り完成すると考えることにリスクがあるという指摘です。
投資家は今後、データセンターへの投資額だけでなく、電力の確保、建設進捗、資金調達方法、完成後の需要、投資回収までの期間を見る必要があります。
エヌビディア(NVDA)をはじめとする半導体企業にとっても、データセンター建設の実績はAI半導体需要を左右します。
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AI相場を見る際には「何兆ドルを投資するのか」という発表だけでなく、そのうちどれだけが実際のデータセンターとして稼働するのかが、これまで以上に重要になっています。
情報ソース: Barron’s: “Why Planned Data Centers Worth $9 Trillion May Never Be Built” (By Nate Wolf, Sept. 29, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。