AI半導体市場をけん引するエヌビディア(NVDA)は、時価総額が5兆ドル規模に達する世界最大級の企業です。ここまで企業価値が膨らむと、「すでに株価は十分高い」と考える投資家も少なくありません。
しかし、バロンズは9月17日付の記事で、UBSによる興味深い分析を紹介しています。UBSは独自の企業価値評価モデルを用いた結果、現在の株価には将来の大幅な成長鈍化が織り込まれており、エヌビディアは業績の強さと比較すると割安な可能性があるとみています。
好決算でも株価は3カ月ほぼ横ばい
エヌビディアの業績は依然として高成長を続けていますが、株価はここ3カ月ほど方向感に欠けています。
バロンズによると、この期間の株価上昇率は約1.5%にとどまっています。9月17日のプレマーケットでは1.4%高の216.83ドルで取引されていますが、これまでの急騰局面と比較すると株価の動きは限定的です。
市場では、AI向けGPU需要の急成長がいつまで続くのかという警戒感が強まっています。これが好業績にもかかわらず株価が伸び悩んでいる背景の1つと考えられます。
UBSが注目するCFROIは86%
UBSがエヌビディアを評価するうえで重視しているのが、HOLTと呼ばれる企業分析フレームワークです。
特に注目されている指標がCFROIです。CFROIはCash Flow Return on Investmentの略で、企業が投下した資本に対して、どれだけ効率良くキャッシュフローを生み出しているかを測ります。
UBSはエヌビディアのCFROIが約86%に達すると予想しています。バロンズによると、この水準に達している企業は世界でも約30社しかありません。
エヌビディアは売上高や利益が急成長しているだけでなく、投下した資本から非常に高いキャッシュフローを生み出していることになります。
時価総額5兆ドルという巨大企業でありながら、これほど高い資本効率を維持している点がUBSの高評価につながっています。
株価は売上高成長率3%までの低下を織り込む
今回の分析でもう1つ重要なのが、現在の株価に織り込まれている将来の成長率です。
UBSによると、現在のバリュエーションは、今後エヌビディアの利益率が約8ポイント低下し、2029年から2030年頃には年間売上高成長率が約3%まで鈍化することを前提としているとみられます。
現在のエヌビディアはAIデータセンター需要を背景に高い成長を続けています。それにもかかわらず、株価には数年後に成長率が急速に低下するシナリオがかなり織り込まれていることになります。
仮にAI投資が市場予想より長く続き、エヌビディアが2桁成長を維持できれば、現在の株価には再評価余地が生まれる可能性があります。
AI投資ブームは終わるのか
エヌビディアに対する最大の懸念は、現在のAIインフラ投資が一時的なブームに終わる可能性です。
マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、メタ(META)などのハイパースケーラーは、AIデータセンターに巨額の投資を続けています。
一方で、こうした企業が将来設備投資を抑制すれば、エヌビディアのGPU需要にも影響が及びます。また、大手テクノロジー企業は独自AIチップの開発も進めており、長期的にはエヌビディアへの依存度が低下するとの見方もあります。
しかし、UBSは現時点でAIインフラ需要が大きく失速している証拠は乏しいとみています。
ChatGPT登場以降、データセンター関連のサプライチェーン企業は株式市場全体を大きく上回るパフォーマンスを記録しており、AI設備投資の恩恵は半導体だけでなく、ネットワーク、電力、冷却設備などにも広がっています。
旧世代GPUの需要も強い
バロンズの記事で興味深い材料として紹介されているのが、ネビウス・グループ(NBIS)の動きです。
同社はエヌビディア製GPUを利用したクラウドサービスを提供していますが、エヌビディア製ハードウェアのレンタル料金を引き上げる方針を示しました。
対象には最新GPUだけでなく、発売から数年が経過した製品も含まれています。
AI半導体では、新製品が登場すると旧世代GPUの価値が急速に低下するとの懸念があります。しかし、古いGPUでもレンタル料金を引き上げられるほど需要が強いのであれば、製品の経済的な寿命は市場が想定しているより長い可能性があります。
これはエヌビディアの収益力を考えるうえで重要な材料です。
競争激化は引き続きリスク
もちろん、エヌビディアの成長が保証されているわけではありません。
中国のファーウェイ・テクノロジーズは今後2年間で新しいAI半導体を投入する計画を示しています。米国による半導体輸出規制の影響で、中国では独自AIチップの開発が加速しています。
さらに、世界の大手クラウド企業も独自AIチップへの投資を拡大しています。
AI半導体市場そのものが成長しても、その成長のすべてをエヌビディアが取り込めるわけではありません。競争環境やAI設備投資の動向は今後も重要な確認ポイントになります。
5兆ドル企業でも割安になり得る
今回のUBSの分析から読み取れるのは、「時価総額が大きいから株価が割高」とは単純に判断できないということです。
重要なのは企業の規模ではなく、将来生み出すキャッシュフローと現在の株価との関係です。
エヌビディアの株価には、すでに利益率低下や成長率の大幅な鈍化がかなり織り込まれているとUBSは分析しています。
今後もAIデータセンター投資が拡大し、高いCFROIや利益率を維持できれば、時価総額5兆ドルという巨大企業であっても株価がさらに評価される余地があります。
一方で、AI投資の減速や独自AIチップの普及、中国企業との競争などのリスクも無視できません。
エヌビディアを評価する際には、単純な時価総額の大きさだけではなく、今後の成長率とキャッシュフロー創出力をどこまで維持できるかを見ることが重要です。
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情報ソース: Barron’s: “Nvidia Stock Looks Like a $5 Trillion Bargain” (By Adam Clark, Sept. 17, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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