スペースXが通信業界を揺るがす!AT&Tは好決算でも株価6%急落

  • 2026年10月22日
  • 2026年10月22日
  • BS余話

✨ この記事でわかること

  • AT&Tは2026年第3四半期に市場予想を上回る決算を発表し、通期利益見通しを上方修正しました。
  • それにもかかわらず、AT&T株は10月21日の取引中に6%下落。スターリンクの脅威に加え、携帯契約者数の伸び鈍化と負債増加が懸念されています。
  • 年間配当1.11ドルと約100億ドルの自社株買い計画は維持されていますが、競争激化と財務負担の拡大が高配当株としての評価を左右する可能性があります。

好決算でも売られたAT&T株

米通信大手AT&T(T)が10月21日に発表した2026年第3四半期(7〜9月期)決算は、売上高と調整後1株利益(EPS)がともに市場予想を上回る堅調な内容でした。

さらに、2026年通期の利益見通しを引き上げ、約100億ドルの自社株買いを進める方針も示しました。

通常なら株価の上昇材料となる発表ですが、21日の米国株式市場でAT&T株は大幅に下落しました。

米東部時間午後12時53分時点の株価は22.01ドルで、前日終値から1.41ドル安(-6.04%)となっています。

好決算に加えて通期利益見通しの上方修正、自社株買いの加速という好材料がそろったにもかかわらず、株価は大きく売られています。

背景には、イーロン・マスク氏率いるスペースX(SPCX)が展開する衛星通信サービス「スターリンク・モバイル」への警戒があります。

さらに、携帯電話契約者数の伸び鈍化や、周波数帯取得に伴う負債の増加も投資家の懸念材料となっています。

今回の決算は、通信大手の現在の収益力と、将来の競争環境や財務負担を巡る不安が鮮明になった事例です。

売上高5.3%増、調整後EPSは市場予想を上回る

AT&Tの第3四半期決算では、売上高が前年同期の307億ドルから323億ドルへ5.3%増加しました。

主要な決算数値は以下の通りです。

項目実績比較
売上高323億ドル前年同期比+5.3%
調整後EPS0.65ドル前年同期0.54ドル
調整後EPS市場予想0.60ドル予想を上回る
売上高市場予想316.9億ドル予想を上回る
調整後EBITDA125億ドル前年同期比+5.4%
フリーキャッシュフロー50億ドル前年同期49億ドル

市場予想は、ファクトセットおよびLSEGが集計したアナリスト予想に基づきます。

調整後EPSは前年同期から約20%増加し、市場予想を約8%上回りました。

一方、米国会計基準(GAAP)に基づく継続事業の希薄化後EPSは0.13ドルで、前年同期の1.29ドルから大幅に減少しました。

これは売却予定のメキシコ通信事業に関連する26億ドルの非現金減損損失などが影響したためです。前年同期にはDIRECTV投資の売却益も含まれていました。

そのため、GAAPベースの利益減少と、調整後利益の改善を区別して評価する必要があります。

光ファイバーと無線通信の成長が加速

今回の決算で特に注目されるのは、AT&Tが成長分野と位置付ける「アドバンスト・コネクティビティ」事業です。

同事業のサービス売上高は239億ドルとなり、前年同期比6.1%増加しました。

営業利益は76億ドルで18.9%増加しています。

インターネットサービスの純増契約数も過去最高の76万9,000件を記録しました。

内訳は光ファイバーが44万2,000件、固定無線アクセスが32万7,000件です。

AT&Tは光ファイバーと携帯電話サービスを組み合わせて提供する戦略を進めています。同社の高度な家庭向けインターネットサービスを利用する世帯の42.8%が、AT&Tの携帯電話サービスも契約しています。

ただし、ロイターによると、光ファイバー事業ではセット割引などの影響で顧客当たり平均売上高が前年同期比4%低下しました。

契約者数の増加を、将来の利益拡大につなげられるかが重要になります。

株価急落の理由はスターリンク、携帯契約者数、負債増加

好決算にもかかわらず株価が下落した背景には、主に3つの懸念があります。

1つ目は、携帯電話の契約者数です。

AT&Tの後払い方式の携帯電話契約者純増数は37万9,000件となり、前四半期の43万2,000件を下回りました。

後払い契約は安定した継続収入につながるため、通信会社の成長力を測る重要指標です。

今回の増加数は市場予想とおおむね一致したものの、前四半期からの減速が投資家の慎重な見方につながった可能性があります。

2つ目が、スペースXの通信市場参入です。

スペースXは10月20日の決算発表後、スターリンク・モバイルの月間利用者が2,200万人を超え、前四半期から37%増加したと明らかにしました。

さらに、衛星通信と地上通信網を組み合わせ、既存の大手携帯通信会社と競争する構想を進めています。

バロンズは、スペースXの参入に対する警戒がAT&T株の下落を増幅させた可能性を指摘しています。

実際、21日の取引ではベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)やTモバイルUS(TMUS)の株価も下落しました。

これは、AT&T固有の決算内容だけでなく、通信業界全体の将来に対する市場の評価が変化していることを示しています。

関連記事:スペースXが通信業界を揺るがす AT&T急落の裏で急騰した銘柄とは

3つ目は、負債の増加です。

AT&Tはエコスターからの周波数帯取得などに伴い、第3四半期末の純負債が前四半期の1,264億ドルから1,498億ドルへ増加しました。

その結果、純負債を調整後EBITDAで割った負債倍率は、前四半期の2.68倍から3.13倍へ上昇しました。

同社は、この倍率を目標とする2.5倍程度に戻す時期について、2029年を見込んでいます。

負債倍率の上昇は、将来の設備投資や株主還元に使える財務上の余力に影響する可能性があります。

Investing.comも、周波数帯取得に伴う負債増加が財務の柔軟性に対する懸念を高めていると指摘しています。

このため、株価下落の背景には、スターリンクとの競争だけでなく、成長投資に伴う財務負担への警戒もあると考えられます。

年間配当1.11ドルを維持、自社株買いも加速

高配当株としてAT&Tを保有する投資家にとって、最も重要なのは株主還元の持続性です。

AT&Tは今回の決算発表で、年間1株当たり1.11ドルの普通株配当を維持する計画を改めて示しました。

10月20日の終値に基づく配当利回りは約4.7%です。

さらに、2026年の自社株買いを約100億ドルに加速させる方針を発表しました。

2026〜2028年には、配当と自社株買いを通じて総額450億ドル以上を株主に還元する計画です。

配当の裏付けとなるフリーキャッシュフローは第3四半期に50億ドルを確保しており、2026年通期では180億ドル以上を見込んでいます。

ただし、現在の配当維持方針が将来の支払いを保証するわけではありません。

スターリンクの参入によって料金競争が激化したり、負債削減に必要な資金が増加したりすれば、利益率やフリーキャッシュフローへの影響を確認する必要があります。

通期利益見通しを上方修正、2028年までの成長計画も維持

AT&Tは2026年通期の調整後EPS見通しを、従来の2.25〜2.35ドルから約2.40ドルへ引き上げました。

また、2028年までの3年間で調整後EPSの年平均成長率を2桁とする目標を掲げています。

資本投資については、2026年に230億〜240億ドル、2027年と2028年には年間220億〜230億ドルを予定しています。

ここでいう資本投資(Capital investment)は、通常の設備投資(Capital expenditures)にベンダーファイナンスに関する現金支払額を加えた指標です。

第3四半期では、設備投資51億ドルとベンダーファイナンスの現金支払5億ドルを合わせ、資本投資は56億ドルとなりました。

フリーキャッシュフローの見通しも、2027年に190億ドル以上、2028年には210億ドル以上としています。

光ファイバーのサービス提供可能拠点は2026年末に4,000万超、2030年末には6,000万超に拡大する計画です。

こうした数字は、AT&Tが当面の利益成長と積極的な株主還元を両立させようとしていることを示しています。

一方、負債倍率の目標達成が2029年となる見通しを踏まえると、成長投資、株主還元、負債削減のバランスが今後の重要な課題になります。

投資家が今後確認すべき4つのポイント

今回の決算を踏まえると、今後のAT&T株を評価するうえで重要なのは次の4点です。

  • 携帯電話の後払い契約者数が再び増加するか、また解約率が低水準を維持できるか。
  • 光ファイバー契約者の増加が、割引による顧客単価の低下を補い、利益とキャッシュフローを押し上げるか。
  • スターリンク・モバイルがどの程度の速度で通信網を整備し、既存通信会社の顧客や料金体系に影響を与えるか。
  • 純負債と調整後EBITDAの倍率が改善し、株主還元を維持しながら負債削減を進められるか。

特に、衛星通信による競争が現実の契約者流出や料金引き下げにつながるかどうかに加え、負債倍率が今後どのように推移するかが重要な判断材料になります。

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まとめ:高配当の魅力と通信業界の構造変化

AT&Tの2026年第3四半期決算は、売上高、調整後利益、インターネット契約者数のいずれも堅調でした。

年間配当の維持と自社株買いの加速は、株主還元を重視する投資家にとって安心材料です。

しかし、21日の株価下落が示したのは、投資家の関心が現在の利益水準だけでなく、数年先の競争環境や財務健全性へ移りつつあるという点です。

スターリンクが既存の携帯通信事業者にどの程度の脅威となるかは、現時点では確定していません。

AT&Tには光ファイバーと5G通信網、既存顧客との強い関係という事業基盤があります。一方で、衛星通信の技術革新によって業界の競争構造が変わる可能性も無視できません。

さらに、エコスターからの周波数帯取得に伴う負債の増加は、成長投資と財務健全性の両立という新たな課題を浮き彫りにしています。

高い配当利回りだけで判断するのではなく、契約者数、利益率、フリーキャッシュフロー、負債倍率、そしてスターリンクの事業展開を継続的に確認することが重要です。

情報ソース

企業公式資料・一次情報

報道・市場情報

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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