✨ この記事でわかること
- マイクロン・テクノロジー(MU)の株価が10月13日に3.62%下落し、953.19ドルで終了。中国の長鑫存儲技術(688825、以下CXMT)の新技術開発に加え、イーロン・マスク氏の発言が警戒感を強めています。
- マスク氏は中国企業の生産拡大能力を警戒する一方、AI向け高帯域幅メモリー(HBM)では既存メーカーの優位性が続く可能性を指摘しています。
- マイクロンの売上高の約75%を占めるDRAM市場で、中国企業の台頭が将来の価格競争や収益性に影響する可能性があります。
マイクロン株が2日連続で大幅下落
AI関連半導体の代表的な銘柄の一つであるマイクロンの株価が、再び大きく下落しています。
米投資情報専門誌バロンズは10月13日付の記事で、中国のメモリーメーカーによる技術開発に加え、テスラ(TSLA)とスペースX(SPCX)を率いるイーロン・マスク氏の発言が、メモリー関連株に対する投資家の警戒感を強めていると報じました。
マイクロンの株価は10月12日に3.88%下落した後、13日も3.62%下落し、終値は953.19ドルとなりました。2営業日で約7.36%下落したことになります。
韓国のメモリー大手にも売りが広がりました。
SKハイニックス(000660、米国ADR:SKHY)の米国預託証券(ADR)は10月13日に3.19%下落し、157.06ドルで取引を終えました。
韓国市場では、SKハイニックスが10.09%下落して144万3,000ウォン、サムスン電子(005930)が7.39%下落して23万2,000ウォンとなりました。The Wall Street Journal
今回の下落の背景には、中国のCXMTが進める新しいメモリー技術への警戒感があります。
CXMTの技術開発については、10月13日に公開した以下の記事でも紹介しました。
関連記事:マイクロン株3.88%下落!中国CXMTの新技術がAIメモリー市場を揺るがす
今回のバロンズの記事では、さらにマスク氏の発言を通じて、中国企業の製造能力が世界のメモリー市場に及ぼす影響に焦点を当てています。
マスク氏が警戒する中国の圧倒的な生産拡大能力
バロンズによると、マスク氏はSNSのXで、中国企業の製造能力について自身の見解を示しました。
マスク氏が強調したのは、中国企業が新しい製品の製造方法を確立した後、生産規模を急速に拡大する能力です。
中国が製品の製造技術を習得すると、その生産拡大能力は世界の他の地域を合計した規模を上回ることもある、という趣旨の発言をしています。
メモリー半導体については、同じ展開になるかどうかは不明としながらも、わずか3年ほど前まで利益率の低い汎用品だったことに言及しました。
この発言が投資家にとって重要なのは、メモリー半導体の市場が過去に何度も供給過剰と価格下落を経験してきたためです。
現在はAI向けデータセンターの建設拡大によってメモリー需要が急増しています。しかし、中国企業が技術的な遅れを縮め、生産能力を急速に拡大すれば、将来的に需給バランスが変化する可能性があります。
マスク氏の発言は、CXMTが直ちに世界の主要メーカーを追い抜くと断定したものではありません。
むしろ、中国企業の技術進歩だけでなく、その後に起こり得る大量生産と価格競争を警戒する内容と受け止められます。
なお、マスク氏自身も半導体の生産能力を重視しており、テスラやスペースXを通じた大規模な半導体製造構想を進めています。その戦略については、以下の記事で紹介しています。
関連記事:テスラが半導体を自前化へ テラファブ計画が変えるAI競争の行方
CXMTの新技術は商業化できるのか
CXMTが開発を進めているのは、「4F²」と呼ばれる新しいDRAMセル構造です。
この技術は、メモリーの記憶密度を高め、一定の面積により多くのデータを保存できるようにすることを目指しています。
実用化が進めば、サーバー向けメモリー市場におけるCXMTの競争力が高まる可能性があります。
ただし、技術開発の発表と、実際に大量生産して市場シェアを獲得することは別の問題です。
バロンズは、ジェフリーズの株式営業担当スペシャリスト、ウィリアム・ビービントン氏の見解を紹介しています。
同氏によると、この技術が商業生産に利用できる段階に達しているかどうかは、現時点では明確になっていません。
また、サムスン電子やSKハイニックスも同様の技術に取り組んできたため、CXMTだけが独占的な優位性を獲得したと判断することはできません。
CXMTが今後、どの程度の品質と生産量を実現できるのかが重要になります。
さらに、米国企業が中国製メモリーを購入する際には、政府による規制や承認の問題もあります。CXMTが中国国内の顧客を優先していることも、世界市場への影響を考えるうえで無視できない要素です。
中国メーカーの台頭は、すでに世界のDRAM市場のシェアにも変化をもたらしています。
9月4日の記事では、CXMTの市場シェア拡大と、マイクロン、SKハイニックスの競争状況を分析しました。
関連記事:中国メモリ勢が急拡大、マイクロンはなぜ強い?SKハイニックスのシェア低下の真相
AI向けHBMでは既存メーカーの優位性が続く可能性
一方、マスク氏は中国メーカーの競争力について、すべてのメモリー分野で同じように評価しているわけではありません。
バロンズによると、マスク氏は高帯域幅メモリー(HBM)について、CXMTが主要メーカーに追いつくことは容易ではないとの見方も示しています。
HBMはAI向け半導体で使用される高性能メモリーで、大量のデータを高速に転送する能力が求められます。
一般的なDRAMと比べて製造技術の難易度が高く、単純に生産設備を増やせば競争力を獲得できる製品ではありません。
そのため、中国企業が通常のDRAM市場で存在感を高めたとしても、AI向けHBM市場ですぐに同じ競争が起こるとは限りません。
マイクロンにとっては、この違いが重要です。
同社の売上高の約75%はDRAM関連事業が占めていますが、その中には用途や付加価値の異なる製品が含まれています。
仮に汎用DRAMで価格競争が激化しても、高性能HBMで技術的な優位性を維持できれば、事業全体への影響をある程度抑えられる可能性があります。
ただし、HBMの競争力だけでDRAM市場全体の価格下落を完全に相殺できるとは限りません。
一方、SKハイニックスは、AI向けメモリーの供給不足が2030年まで続く可能性を示しています。
中国企業の供給拡大と、AI向け高性能メモリーの長期的な需要増加という2つの動きをどう評価すべきかについては、以下の記事で詳しく取り上げています。
関連記事:メモリ半導体はまだピークではない?SKハイニックス「2030年まで不足」予測とマイクロンの将来性
株価が大幅上昇したマイクロンに広がる利益確定売り
今回の下落を理解するうえで、もう一つ重要なのがマイクロンの株価水準です。
バロンズによると、マイクロンの株価は過去12カ月間で5倍以上に上昇していました。
AI向けメモリー需要の急増によって業績拡大への期待が高まり、投資家から高い評価を受けてきたことが背景にあります。
しかし、株価が大幅に上昇した銘柄は、将来の成長に対する期待が高い分、競争環境の変化や利益率低下の懸念に敏感になる傾向があります。
今回のCXMTの技術開発も、マイクロンの業績にすぐ悪影響を及ぼすことが確認されたわけではありません。
それでも、将来的な供給増加によってメモリー価格が下落する可能性を投資家が意識すれば、株価の調整につながります。
ジェフリーズのビービントン氏も、CXMTが技術開発と生産能力の拡大を急速に進めているように見えることから、AI投資全般への懸念と重なり、DRAM関連株に対する市場心理が弱い状態にとどまる可能性を指摘しています。
マイクロンの株価を巡っては、好調な業績と将来の利益率に対する懸念が同時に存在しています。
10月2日の記事では、同社の粗利益率が87%という高い水準に達しながらも、投資家が将来の収益性に慎重な姿勢を示している背景を分析しました。
関連記事:マイクロン粗利益率87%でも株価低迷 市場が警戒する本当の理由
投資家が注目すべきなのは中国企業の実際の供給能力
今回のバロンズの記事から浮かび上がるのは、中国メーカーの技術進歩そのものよりも、それが将来のメモリー市場の供給構造を変える可能性です。
現時点では、CXMTの新技術がどこまで商業化できるのか、どの程度の品質と生産能力を実現できるのかは明らかになっていません。
一方、メモリー市場では新規参入企業による供給増加が価格競争につながる可能性があるため、投資家が早い段階から警戒することにも理由があります。
今後のマイクロンを評価する際には、CXMTの量産状況だけでなく、汎用DRAMの価格動向と、高付加価値のHBMにおける競争力を分けて確認する必要があります。
特に重要なのは、中国企業の生産能力拡大が、マイクロンの販売価格や利益率に実際に影響し始めるかどうかです。
今回の株価下落は、中国企業の台頭によってマイクロンの成長が終わることを意味するものではありません。
ただし、AI需要の拡大だけを見ていればよかった局面から、競争激化による収益性の変化にも目を向ける局面へと、投資家の関心が広がっていることを示しています。
また、マイクロンについては、中国企業との競争以外にも、AIシステムの技術進歩によってメモリー需要の構造が変化する可能性が指摘されています。
10月4日の記事では、エヌビディア(NVDA)の次世代GPU「ルービン・ウルトラ」とメモリー接続技術「CXL」が、マイクロンの将来の需要に与える影響を分析しました。
関連記事:マイクロン株に新たな警戒材料 ルービン・ウルトラとCXLがメモリー需要を左右
マイクロンの今後の株価を左右するのは、AI向けメモリー市場の成長が続くなかで、中国メーカーによる供給拡大の影響をどこまで抑えられるかという点になりそうです。
情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Is Falling. Elon Musk’s Comments on Chinese Chips Aren’t Helping.” (By Adam Clark, Updated Oct. 13, 2026)
株価データ:The Wall Street Journal、Investing.com、Stock Analysis(2026年10月13日終値)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。