9月2日の米国市場終了後、ブロードコム(AVGO)が最新の四半期決算を発表しました。売上高、利益ともに市場予想を上回り、AI関連事業についても驚異的な成長見通しが示されています。
一方、これほど強い決算を発表したにもかかわらず、株価は時間外取引で下落しました。好業績と株価の反応が一致しない状況は、現在のAI半導体市場において投資家が企業に求めるハードルが極めて高くなっていることを示しています。
本記事では、まずブロードコムの最新決算を確認し、そのうえでAI事業の成長性、カスタムチップ戦略、そして株価と企業業績の「乖離」が意味するものについて考えます。
9月2日発表の四半期決算は市場予想を上回る
ブロードコムが発表した2026年7月期の決算は、市場予想を上回る力強い内容となりました。
総売上高は296億ドルとなり、前年同期比86%増加しました。アナリスト予想の292億ドルも上回っています。
調整後1株当たり利益(EPS)は3.32ドルとなり、市場予想の3.22ドルを上回りました。
特に注目されるのが半導体ソリューション部門です。同部門の売上高は208億ドルと前年同期比70%増加し、市場予想の203億ドルも上回りました。
AIインフラ投資の拡大が続くなか、ブロードコムが単なる通信半導体企業からAI半導体の主要プレーヤーへと変化していることが数字にも表れています。
次の四半期もAIチップが急成長
2026年10月期について、ブロードコムは総売上高の中央値を348億ドルと見込んでいます。市場予想の347億ドルをわずかに上回る水準です。
さらに注目したいのがAIチップです。
同四半期のAIチップ売上高は前年同期比236%増の217億ドルに達する見通しです。AI関連需要が一時的なブームではなく、ブロードコムの売上高全体を動かす規模にまで拡大していることが分かります。
同社は設備投資として14億ドルを予定しています。急増するAI需要に対応するため、生産能力や関連インフラへの投資を積極化する姿勢が鮮明になっています。
AI売上高は2028年度に2,300億ドルへ
より重要なのは、中長期的なAI事業の成長見通しです。
経営陣は2027会計年度のAI売上高を1,150億ドル、2028会計年度には2,300億ドルへ拡大させる計画を示しました。
わずか1年間でAI売上高を倍増させるという非常に強気な見通しです。
さらに、2028年度のEPSは30ドルを超える見込みとされています。
この計画が実現すれば、ブロードコムは現在とは大きく異なる利益規模を持つ企業へ成長する可能性があります。AIインフラ市場の拡大が続く限り、同社の成長余地は依然として大きいと考えられます。
アンソロピックが最大のカスタムチップ顧客へ
ブロードコムのAI戦略を考えるうえで重要なのが、カスタムAIチップです。
AI半導体市場ではエヌビディアがGPUを中心に圧倒的な存在感を持っています。しかし、巨大テクノロジー企業やAI企業では、自社のAIモデルやサービスに最適化した専用半導体を開発する動きが加速しています。
汎用GPUとは異なり、特定用途向けに設計されたカスタムチップは、性能や消費電力、運用コストを最適化できる可能性があります。
ブロードコムは顧客企業と共同でこうした専用AIチップを開発しており、これが同社の大きな競争力になっています。
特に注目されるのがアンソロピックです。同社は2027年および2028年にブロードコム最大のカスタムチップ顧客になる見通しです。
生成AI市場の成長を牽引する企業を大型顧客として確保できれば、ブロードコムにとって長期的かつ安定的な収益基盤につながります。
好決算なのに株価が下落した理由
これだけの好材料が並んだにもかかわらず、決算発表後のブロードコム株は時間外取引で約1%下落しました。
さらに年初来の株価上昇率は約6%にとどまり、約60%上昇しているフィラデルフィア半導体株指数(SOX)を大きく下回っています。
この「業績と株価の乖離」は非常に興味深いポイントです。
最大の理由として考えられるのは、投資家の期待値がすでに極めて高いことです。
次の四半期の売上高見通し348億ドルは市場予想の347億ドルを上回りました。しかし、予想を大幅に上回るほどのサプライズではありませんでした。
AI関連企業については、単に「予想を上回る」だけでは株価上昇につながりにくくなっています。市場が事前に急成長を織り込んでいるため、予想を大きく超える成長やガイダンスが求められているためです。
株価よりも注目したい「稼ぐ力」の変化
短期的な株価だけを見ると、今回の決算に対する市場の評価は物足りなく映ります。
しかし、企業のファンダメンタルズを見ると状況は異なります。
売上高は前年同期比86%増、半導体ソリューション部門は70%増、次の四半期のAIチップ売上高は236%増が見込まれています。さらに2028年度にはAI売上高2,300億ドル、EPS30ドル超という長期目標が掲げられています。
重要なのは、ブロードコムがAIブームの恩恵を受けているだけの企業ではなく、AIインフラ市場の構造変化そのものに深く組み込まれつつある点です。
エヌビディアが汎用GPUという巨大市場を支配する一方、ブロードコムはカスタムAIチップという別の成長市場で強固なポジションを築こうとしています。
両社は競合する部分を持ちながらも、異なる領域からAIデータセンター市場の拡大を取り込む構図になっています。
ブロードコムの将来を左右するのはAI成長の持続性
今回の決算から見えてくるのは、「株価が上昇したか」よりも「ブロードコムという企業の収益構造が急速に変化している」という事実です。
2028年度までのAI売上高計画が実現すれば、現在のブロードコムと数年後のブロードコムでは企業の姿そのものが大きく変わる可能性があります。
もちろん、AI設備投資の減速、カスタムチップ顧客への依存、巨額投資に対する収益性などは今後も確認する必要があります。
それでも、目先の株価が半導体株全体に出遅れている一方で、AI事業の成長スピードはむしろ加速しています。
現在の「業績と株価の乖離」が将来的に解消されるのか。それとも高い市場期待が株価の重しになり続けるのか。
ブロードコムを見るうえでは、四半期ごとの株価反応だけではなく、AI売上高、カスタムチップ顧客の拡大、そして利益成長が2027年から2028年にかけて計画通り進むかを継続的に確認することが重要です。
情報ソース: MarketWatch: “ Broadcom’s stock falls despite upbeat earnings, extending a frustrating stretch for investors” (By Britney Nguyen, Sept. 2, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら ブロードコム AVGO
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