アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、2026年8月4日の米国株式市場終了後、2026年第2四半期決算を発表しました。
第2四半期の売上高は、前年同期比50%増の115億ドルとなり、市場予想の113億ドルを上回りました。調整後1株当たり利益(EPS)は1.66ドルで、市場予想の1.62ドルを上回り、前年同期の0.48ドルから大幅に増加しています。
前年同期の利益には、米国の輸出管理政策の変更によって中国向け製品の販売を中止したことに伴い、8億ドルの在庫関連費用が計上されていました。この反動もありますが、今回の決算は売上高と利益の両面で、AMDの成長力が大きく回復していることを示しています。
調整後営業利益は31億ドル、調整後営業利益率は27%となりました。
データセンター部門の売上高は107%増
今回の決算で最も注目されたのが、データセンター部門の急成長です。
データセンター部門の売上高は前年同期比107%増の67億ドルとなり、市場予想の63億ドルを上回りました。営業利益率も31%に達しており、同部門がAMDの成長と利益を支える中心事業に変化していることが分かります。
一方、PCおよびゲームチップ部門の売上高は前年同期比6%増にとどまりました。営業利益率も前年同期の21%から15%へ低下しています。
部門別の結果を見ると、AMDの稼ぎ頭が、従来のPCやゲーム向け半導体から、AIサーバーやデータセンター向け製品へと明確に移行している状況が浮かび上がります。
第3四半期見通しは市場予想を小幅に上回る
AMDが示した2026年第3四半期の業績見通しは、売上高が130億ドル、調整後EPSが1.93ドルとなりました。
いずれも市場予想をわずかに上回る水準ですが、AI関連需要の急拡大を背景に、より大幅な上振れを期待していた投資家にとっては、やや物足りない内容と受け止められた可能性があります。
決算発表当日の通常取引ではAMD株が7%上昇していましたが、決算発表後の時間外取引では株価が急落しました。
決算自体は堅調だったものの、今後の成長見通しや株式の希薄化に対する懸念が、短期的な売りにつながったと考えられます。
新AIサーバー「Helios」が成長の鍵
AMDは、GPU、CPU、ネットワーキングチップを組み合わせた新しいAIサーバー「Helios」を発表しました。
Heliosは、AMDが個別の半導体を販売するだけではなく、AIデータセンターに必要なシステム全体を提供する企業へ進化するための重要な製品です。
同製品は、2026年第3四半期末までにメタ・プラットフォームズ(META)とオープンAIへの出荷が開始される予定です。
さらに、その後はマイクロソフト(MSFT)、オラクル(ORCL)、アンソロピックとも購入合意に至っています。
世界を代表するAI企業やクラウド企業がHeliosを採用することは、AMDがAIインフラ市場で本格的な存在感を確立するための重要な実績となります。
最大16%のワラント発行が株価下落要因に
一方、市場が警戒したのが、メタ・プラットフォームズとオープンAIに対する株式ワラントの発行です。
AMDは両社に対し、すべての権利が確定した場合、希薄化後発行済株式数の約16%に相当する1億6,000万株分の株式ワラントを発行しました。
ワラントが行使されれば既存株主の持ち分が希薄化するため、市場が警戒するのは自然な反応です。今回の時間外取引における株価下落にも、この希薄化リスクが影響したとみられます。
ただし、今回のワラント発行は、単なる値引きや譲歩ではなく、AI市場で主導権を獲得するための戦略的な顧客獲得コストと捉えることもできます。
ワラントはAI市場参入の戦略的コスト
AI半導体市場では、すでにエヌビディアが強固なエコシステムを構築しています。後発のAMDが市場シェアを拡大するためには、性能の高い製品を開発するだけでは十分ではありません。
大手AI企業に実際に製品を採用してもらい、ソフトウエアやデータセンターをAMDのシステムに最適化してもらう必要があります。
メタ・プラットフォームズとオープンAIにワラントを付与したのは、両社をHeliosの初期顧客として取り込み、強力な採用実績を作るための戦略だったと考えられます。
実際、その後に契約したマイクロソフト、オラクル、アンソロピックには、ワラントが発行されていません。
初期顧客への優遇条件によってHeliosの採用実績を作り、その実績を活用して後続顧客を通常の条件で獲得したのであれば、ワラント発行は将来の売上拡大に向けた先行投資として一定の合理性があります。
データセンター中心の企業へ事業構造が変化
今回の決算は、AMDがPC向け半導体メーカーから、AIデータセンターを中心とする企業へ変化していることを示しています。
PCおよびゲームチップ部門の利益率が15%へ低下する一方、データセンター部門の売上高は前年同期比107%増となりました。
これは、成熟したPC市場で短期的な利益率を追うよりも、成長余地の大きいエンタープライズAI市場へ経営資源を集中している結果と考えられます。
データセンター部門が売上高と利益の両面で成長を続ければ、AMDの企業価値を評価する際の基準も、従来のPC需要からAIインフラ需要へと変化していく可能性があります。
サーバーCPUの強さがAI戦略を支える
AMDの強みは、AI向けGPUだけではありません。
同社のサーバーCPUにおける市場シェアは、すでに40%に達しています。さらに、2030年までにCPUサーバー市場全体が2,200億ドル規模へ拡大すると見込まれています。
サーバーCPUで築いた顧客基盤に、AI向けGPUやネットワーキング製品、Heliosのような統合型AIサーバーを組み合わせることができれば、AMDはデータセンター全体から収益を獲得できる企業へ成長できます。
アナリストは、Heliosの本格出荷が始まる2026年第4四半期に売上高の変曲点を迎えると予想しています。
さらに、翌年の売上高は59%増の800億ドル、EPSは80%以上増加して13.87ドルに達するとの見方も示されています。
まとめ
AMDの2026年第2四半期決算は、売上高、EPS、データセンター部門の売上高がいずれも市場予想を上回る堅調な内容でした。
一方、時間外取引では、株式ワラントによる希薄化リスクや、第3四半期見通しが市場の高い期待を大幅には上回らなかったことから、株価が下落しました。
ただし、中長期的な視点では、メタ・プラットフォームズやオープンAIをHeliosの初期顧客として獲得した意味は小さくありません。その後、マイクロソフト、オラクル、アンソロピックとの契約をワラントなしで獲得した点も、AMDの顧客獲得戦略が一定の成果を上げていることを示しています。
現在のAMDは、一時的な株式の希薄化や利益率の変動を受け入れながら、AIデータセンター市場で将来の収益基盤を構築している段階です。
今後は、Heliosの出荷状況、AI向け製品の売上高、データセンター部門の利益率、ワラント行使による希薄化の影響を継続的に確認する必要があります。
短期的な株価変動だけでなく、AMDがAIインフラ市場でエヌビディアに対抗できるエコシステムを構築できるかが、中長期的な企業価値を左右する重要なポイントとなります。
情報ソース: Barron’s: “AMD Stock Slides After Solid Earnings Report” (By Adam Levine, Aug. 4, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら AMD
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