IBM株が歴史的暴落 第2四半期暫定決算が示した将来性と深刻な課題

  • 2026年7月15日
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2026年7月14日の米国市場で、IBM(IBM)の株価が歴史的な急落を記録しました。取引開始前に発表された2026年第2四半期の暫定決算が市場予想を下回り、株価は一時25%安となりました。

この急落によって失われた時価総額は約665億ドルに達し、IBMにとって1日当たりでは過去最大の消失額となりました。売りはIBMだけにとどまらず、ITサービス株やソフトウェア株にも波及しています。

今回の決算は、単なる一時的な業績悪化なのか、それともIBMが抱える構造的な問題の表れなのでしょうか。発表された事実を整理しながら、同社の将来性と課題を考察します。

売上高と利益が市場予想を下回る

IBMの第2四半期売上高は172億ドルとなり、アナリスト予想の179億ドルを下回りました。調整後1株当たり利益(EPS)も2.93ドルにとどまり、市場予想の3.01ドルに届いていません。

部門別では、インフラストラクチャー部門の売上高が前年同期比で7%減少しました。一方、ソフトウェア部門は5%増加し、なかでもレッドハットプラットフォーム関連の売上高は前期比11%増と堅調でした。コンサルティング部門の売上高は横ばいとなっています。

アービンド・クリシュナCEOは株主宛ての書簡で、業績未達の主な要因としてインフラストラクチャー事業の不振を挙げました。

供給制約による価格上昇が予想されるなか、顧客が6月末に予算をサーバーやストレージ、メモリ製品へ急速に振り向けたことに加え、複数の大型契約の完了時期が遅れたと説明しています。

インフラ事業の不振とソフトウェア成長の二極化

今回の決算で注目すべき点は、インフラストラクチャー部門とソフトウェア部門の業績が大きく分かれたことです。

IBMは長年にわたり、メインフレームを中心とするハードウェア企業から、ハイブリッドクラウドとソフトウェアを中心とする企業への転換を進めてきました。

しかし現在も、インフラ事業の業績変動が会社全体の売上高を左右しています。今回の結果は、事業構造の転換がまだ完了しておらず、IBMが最も苦しい過渡期にあることを示しています。

一方で、レッドハットを中心とするソフトウェア部門が成長を続けている点は前向きな材料です。一般的にソフトウェアはハードウェアよりも利益率が高く、継続課金による安定収益も期待できます。

短期的にはインフラ部門の不振が重荷となりますが、ソフトウェアの売上比率を高められれば、中長期的にはIBMの収益性が改善する可能性があります。

生成AIがメインフレームの競争力を脅かす

IBMが抱えるもう一つの課題が、生成AIによるレガシーシステムの置き換えです。

2026年2月、AI企業のアンソロピックは、IBMのメインフレームで利用されてきた古いプログラミング言語であるCOBOLのモダナイゼーションツールを発表しました。

従来、COBOLで構築されたシステムの移行には、多額の費用と専門人材が必要でした。しかし、生成AIが既存コードの解析や変換を支援できるようになれば、企業がメインフレームから新しいクラウド環境へ移行するハードルが下がります。

これは、IBMが長年築いてきたメインフレーム事業の強固な顧客基盤を弱体化させる可能性があります。

IBMも手をこまねいているわけではありません。クラウドインフラ管理を手がけるハシコープ(HCP)や、データストリーミング基盤を提供するコンフルエント(CFLT)の買収を進めています。

これらの買収は、既存顧客が競合他社へ移る前に、IBM自身のクラウドやソフトウェア製品へ移行させるための戦略と考えられます。

量子コンピューティングは将来の成長エンジンとなるか

厳しい決算のなかでも、IBMは2029年までにフォールトトレラント、つまり障害耐性を備えた量子コンピューターを提供する計画を維持しました。

量子コンピューターは、従来型のコンピューターでは膨大な時間を要する計算を高速処理できる可能性があります。創薬、金融、物流、素材開発、暗号技術など、幅広い分野での活用が期待されています。

IBMは量子コンピューティング分野における主要企業の一つであり、技術開発だけでなく、クラウドを通じた量子計算環境の提供にも取り組んできました。

ただし、2029年の目標は将来の話であり、現時点で大規模な利益を生み出しているわけではありません。技術的な課題も多く、競合企業との開発競争も激しくなっています。

量子コンピューティングはIBMの大きな成長材料となる可能性がありますが、短期的な業績悪化を補う事業として評価するのは時期尚早です。

IBM株の暴落は一時的な混乱か構造的な警告か

今回の株価急落には、顧客の予算配分の変化や大型契約の遅延といった、一時的な要因が含まれています。そのため、次の四半期以降に売上高が回復する可能性はあります。

一方で、インフラ事業への依存、コンサルティング事業の停滞、生成AIによるメインフレーム市場への脅威など、構造的な課題も無視できません。

IBMの将来を左右するのは、レッドハットを中心とするソフトウェア事業をどこまで伸ばせるか、買収した企業を成長につなげられるか、そして量子コンピューティングを商業化できるかという点です。

今回の歴史的暴落は、IBMがレガシーハードウェア企業からソフトウェアと次世代技術を中心とする企業へ変わる過程で、投資家が想定していた以上の痛みが表面化した出来事と言えます。

IBMは現在、古い事業構造から脱却するための大きな転換点にあります。今回の株価下落を割安な投資機会と見るためには、今後の決算でソフトウェア成長と収益性の改善を確認する必要があります。

情報ソース: Barron’s: “The Detail in IBM’s Earnings Pre-Announcement That Has The Stock Headed for Its Worst Day Ever” (By Mackenzie Tatananni, July 14, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら IBM

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