ASMLが通期見通しを大幅上方修正 AI半導体需要で売上高450億ユーロへ

  • 2026年7月15日
  • 2026年7月15日
  • BS余話

欧州を代表する半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング(ASML)が7月15日に第2四半期決算を発表しました。

売上高と純利益はいずれも市場予想を上回り、2026年通期の売上高見通しも大幅に上方修正されました。生成AI向け半導体への投資拡大を背景に、同社が手掛けるEUV露光装置への需要が一段と強まっていることが確認できます。

一方、株価は好業績への期待を織り込み、バリュエーションは過去のピークに近い水準まで上昇しています。本記事では、今回の決算内容を整理したうえで、ASMLの成長力と今後注意すべきリスクを分析します。

市場予想を上回った第2四半期決算

ASMLの第2四半期売上高は93億3000万ユーロ、純利益は29億2000万ユーロとなりました。

市場では売上高89億ユーロ、純利益26億5000万ユーロが予想されていたため、いずれも事前予想を大きく上回ったことになります。上半期の受注高も好調に推移しており、世界の半導体メーカーによる設備投資意欲が依然として強いことを示す結果となりました。

特に注目されたのが、2026年の売上高見通しです。

同社は従来、2026年の売上高を360億〜400億ユーロと予測していましたが、今回の決算発表で430億〜450億ユーロへ引き上げました。ドル換算では約491億〜514億ドルに相当する規模です。

クリストフ・フーケCEOは、AI関連投資の継続と半導体技術の進歩が装置需要を押し上げていると説明しています。

EUV露光装置の生産能力を段階的に拡大

ASMLは、今後の需要拡大に対応するため、生産能力を引き上げる方針も明らかにしました。

低開口数(Low-NA)のEUV露光装置について、今年は約65台の生産を予定しています。来年にはそこから約30%増産し、さらに2028年にも生産能力を約30%拡大する計画です。

EUV露光装置は、最先端半導体の微細な回路を形成するうえで欠かせない装置です。生産には高度な技術と複雑なサプライチェーンが必要となるため、需要が増えたからといって短期間で供給量を大幅に増やせる製品ではありません。

今回示された段階的な増産計画は、ASMLが数年先まで続く需要の拡大に確信を持っていることを示しています。

好決算を受けて株価は上昇

決算と通期見通しの引き上げを受け、ASMLの株価は上昇しました。

アムステルダム市場では、7月15日の序盤取引で5.5%高の1642ユーロを記録しました。米国市場で取引されているADRも、時間外取引で3.6%上昇しています。

直近の14日の終値時点で、ADRは年初来66%上昇していました。今回の好決算によって、AI半導体投資の拡大を象徴する銘柄として、さらに注目が集まる可能性があります。

AI半導体投資が生み出す構造的な需要

今回の業績上方修正は、一時的な受注増加だけによるものではありません。その背景には、生成AIの普及に伴う構造的な半導体需要の拡大があります。

TSMC(TSM)をはじめ、マイクロン・テクノロジー(MU)やSKハイニックス(SKHY)などの主要半導体メーカーは、AI向け半導体の生産能力を拡大するため、巨額の設備投資を進めています。

高性能なAIチップを製造するには、半導体回路のさらなる微細化が必要です。その中心的な役割を担うのが、ASMLのEUV露光装置です。

同社は最先端EUV露光装置市場を事実上独占しているため、半導体メーカーの設備投資が拡大するほど、ASMLの受注機会も増加します。

AI半導体市場の成長が続く限り、同社はその恩恵を受けやすい立場にあるといえます。

代替困難な技術が支える価格決定力

ASMLの最大の強みは、他社では代替することが難しい技術を保有している点です。

同社の最先端露光装置には、1台あたりの価格が4億ドルを超えるものもあります。それでも顧客である半導体メーカーは、次世代チップを生産するために装置を導入する必要があります。

価格が高くても購入せざるを得ない製品を持つことは、企業に強力な価格決定力をもたらします。

さらに、生産台数が増えれば、研究開発費や製造設備への投資をより多くの製品に分散できます。生産規模の拡大によってスケールメリットが高まり、収益性がさらに改善する可能性もあります。

最大のリスクは中国規制と地政学

高い成長力を持つ一方、ASMLには地政学的なリスクがあります。

米国やオランダ政府による輸出規制により、同社は最先端装置を中国へ自由に販売することができません。ASMLは、2026年の中国向け売上高が全体の約20%になると予測しています。

しかし、過去には中国向け売上高を抑制的に予測しながら、実際には売上高全体の約3分の1を中国市場が占めたこともありました。

米中対立が激化し、半導体製造装置への規制対象がさらに拡大した場合、中国向け売上高が急減する可能性があります。中国企業による前倒し購入が一巡すれば、受注の反動減が発生する点にも注意が必要です。

PER38倍が織り込む完璧な成長

株価評価の高さも、今後の投資判断では重要なポイントです。

ASMLの株価は、2027年の市場予想利益に対してPER約38倍で取引されています。これは同社の過去の評価と比較しても、ピークに近い水準です。

ジェフリーズやUBSなどのアナリストは目標株価を引き上げていますが、現在の株価にはAI需要の継続、EUV装置の増産、利益率の改善といった好材料が相当程度織り込まれていると考えられます。

決算や受注が市場予想をわずかに下回っただけでも、高い期待の反動から株価が大きく調整する可能性があります。

ASMLの将来性

ASMLは、生成AI時代の半導体産業において最も重要な企業のひとつです。

最先端半導体の製造に欠かせないEUV露光装置をほぼ独占し、主要な半導体メーカーによる設備投資の拡大を売上高の成長につなげられる立場にあります。

第2四半期の好決算と2026年売上高見通しの上方修正は、その成長シナリオが現実の業績として表れ始めていることを示しています。

一方、中国への輸出規制や米中対立、高いバリュエーションといったリスクは無視できません。企業としての競争力が高くても、株価が常に割安とは限らないためです。

今後はAI半導体需要の強さだけでなく、受注高の推移、EUV装置の生産台数、中国向け売上高の変化を継続的に確認する必要があります。

情報ソース: Barron’s: “ASML Beats Earnings and Upgraded Forecasts. How High the Stock Can Go.” (By Adam Clark, July 15, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「ASMLに迫る中国リスク MATCH Actで変わる半導体製造装置市場

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