ブロードコム決算はなぜ評価されなかったのか AIチップ急成長でも株価が急落した理由

ブロードコム(AVGO)が2026年6月3日の米国市場取引終了後に発表した4月期、つまり第2四半期決算は、数字だけを見れば非常に力強い内容でした。売上高、利益、AIチップの成長率、そして次期見通しのいずれも市場予想を上回っており、同社がAIインフラ投資の中心的な受益企業であることを改めて示す結果となりました。

しかし、決算発表後の時間外取引では、ブロードコム株は大きく下落しました。好決算にもかかわらず株価が下がるという一見矛盾した動きは、現在のAI関連株に対する市場の期待値がどれほど高くなっているかを象徴しています。

今回の記事では、ブロードコムの第2四半期決算の事実情報をもとに、同社のAI半導体事業の実力、ソフトウェア事業による安定性、そして株価下落の背景について考察します。

第2四半期決算は市場予想を上回る内容

ブロードコムの4月期第2四半期決算では、総売上高が前年同期比48%増の221億9,000万ドルとなりました。市場予想は221億3,000万ドルだったため、わずかではあるものの予想を上回る着地です。

調整後1株当たり利益(EPS)は2.44ドルとなり、こちらも市場予想の2.40ドルを上回りました。売上高だけでなく利益面でも市場の期待を超えたことから、事業全体の収益力は引き続き堅調であるといえます。

特に注目すべきは、AIチップ関連の売上です。AIチップの売上高は前年同期比143%増の108億ドルに達しました。すでに100億ドルを超える規模に成長しているにもかかわらず、なお高い成長率を維持している点は、ブロードコムのAI関連事業が単なる期待先行ではなく、実際の売上として急拡大していることを示しています。

AIチップ事業が成長の中心に

ブロードコムの決算で最も重要なポイントは、AIチップ事業が同社の成長エンジンとして明確に存在感を強めていることです。

次期となる7月期について、会社側は総売上高見通しを前年同期比84%増の294億ドルとしました。市場予想は283億ドルだったため、こちらも予想を上回る強いガイダンスです。

さらに、AIチップの売上見通しについては、前年比200%以上の成長となる160億ドルに達する見込みであると発表されました。今回の第2四半期で108億ドルだったAIチップ売上が、次期には160億ドルまで拡大する見通しであることは、AIインフラ需要が依然として非常に強いことを示しています。

生成AIの普及により、データセンターでは大量の演算処理能力が求められています。その中で、エヌビディア(NVDA)のGPUだけでなく、特定用途向けのカスタムAIチップに対する需要も拡大しています。ブロードコムはこの分野で重要なポジションを築いており、ハイパースケーラーによるAIインフラ投資の恩恵を直接受けている企業の一つです。

半導体とソフトウェアの両輪が強み

ブロードコムの強さは、AIチップだけに依存していない点にもあります。

今回の決算では、非AIチップやネットワーキングを含む半導体ソリューション事業の売上高が150億ドルとなりました。一方、VMウェアなどを含むインフラストラクチャ・ソフトウェア部門の売上高は72億ドルでした。

この構成を見ると、ブロードコムは半導体企業でありながら、ソフトウェア企業としての性格も強めていることがわかります。AIチップのような高成長分野で売上を伸ばしながら、ソフトウェア部門によって収益の安定性を高めている点は、同社の大きな特徴です。

AI関連株は成長期待が高い一方で、需要の波や投資サイクルの変動に左右されやすい面があります。しかし、ブロードコムの場合、インフラストラクチャ・ソフトウェア事業が一定の安定収益を生み出しているため、単純な半導体サイクルだけで評価する企業ではなくなっています。

この点は、長期投資家にとって重要です。AIチップの成長力とソフトウェアの安定性を併せ持つ企業は限られており、ブロードコムはその代表的な存在になりつつあります。

グーグルとの関係が将来性を支える

ブロードコムのAIチップ事業を考えるうえで、アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルとの関係も見逃せません。

グーグルはAIインフラ投資を支えるために大規模な株式公募を発表しており、同社がAI分野への投資をさらに加速させていることが示されています。また、グーグルは年内に外部向けカスタムチップからの収益を見込んでいることにも言及されています。

ブロードコムは長年、グーグルのTPU(Tensor Processing Unit)に関わっており、グーグルのAIインフラ拡大はブロードコムにとって大きな追い風になります。

さらに重要なのは、グーグルのカスタムAIチップが社内利用だけでなく、外部顧客向けにも広がる可能性がある点です。仮に外部向けの需要が拡大すれば、ブロードコムのAIチップ関連売上はさらに大きな市場を取り込むことになります。

これは、ブロードコムが単に一社の設備投資に依存しているのではなく、クラウド事業者のAIエコシステム拡大とともに成長する可能性を持っていることを意味します。

好決算でも株価が急落した理由

一方で、今回最も投資家の関心を集めたのは、好決算にもかかわらず株価が急落した点です。

ブロードコム株は、通常取引の終値約479ドルから、時間外取引で約418ドルまで下落しました。下落率は12%から13%以上に達しており、決算内容とは対照的な厳しい反応となりました。

この背景には、株価が決算前に大きく上昇していたことがあります。過去3カ月でブロードコム株はすでに50%以上上昇しており、市場はかなり高い期待を織り込んでいました。

つまり、今回の決算は素晴らしい内容だったものの、投資家の期待値はそれ以上に高くなっていた可能性があります。AI関連銘柄では、好決算であっても「予想を大きく超える驚き」がなければ利益確定売りが出やすい局面に入っています。

これは、企業のファンダメンタルズが悪化したというよりも、市場心理とバリュエーションの問題と見るべきです。決算そのものは堅調であり、AIチップの成長見通しも強力です。しかし、株価が短期間で大きく上昇していたため、決算発表が利益確定のきっかけになったと考えられます。

AI半導体相場の期待値はさらに高まっている

今回のブロードコム株の動きは、AI半導体相場全体にとっても重要な示唆を与えています。

AI関連企業は、もはや単に成長しているだけでは市場から十分に評価されにくくなっています。投資家は、売上成長、利益成長、ガイダンス、受注見通し、顧客基盤の拡大など、あらゆる面で非常に高い水準を求めています。

ブロードコムの決算は、AIチップ売上が急成長し、次期見通しも市場予想を上回る内容でした。それでも株価が下落したという事実は、AI関連株のバリュエーションがすでに相当高い期待を反映していることを示しています。

ただし、長期的に見れば、今回の決算はブロードコムの事業基盤の強さを確認する内容でした。AIチップ事業は急成長し、ソフトウェア事業は安定収益を支え、グーグルとの関係も将来の成長余地を広げています。

短期的な株価下落だけを見て悲観するよりも、今回の決算で示された成長の質を冷静に評価する必要があります。

総括

ブロードコムの第2四半期決算は、売上高、EPS、AIチップ売上、次期ガイダンスのいずれも強い内容でした。特にAIチップ売上が前年同期比143%増の108億ドルに達し、次期には160億ドルまで拡大する見通しであることは、同社がAIインフラ投資の主要な受益企業であることを明確に示しています。

一方で、株価は時間外取引で大きく下落しました。これは、決算内容が悪かったからではなく、株価が事前に大きく上昇し、市場の期待値が極めて高くなっていたためです。

ブロードコムは、AI半導体の高成長とインフラストラクチャ・ソフトウェアの安定収益を併せ持つ企業です。短期的にはバリュエーション調整が続く可能性がありますが、長期的にはAIインフラ拡大の中心企業として、引き続き注目すべき存在といえます。

情報ソース: MarketWatch: “ Broadcom’s stock falls despite accelerating AI-chip growth” (By Britney Nguyen, June 3, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら ブロードコム AVGO

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