メタのAIハードウェア戦略が加速 スマートグラスとAIペンダントが示す次の成長シナリオ

メタ・プラットフォームズ(META)が、AI時代の次世代ハードウェア市場で攻勢を強めようとしています。米テックメディアのジ・インフォメーションは、同社の社内メモをもとに、メタがスマートグラスやAIペンダントを含む大規模なハードウェア計画を進めていると報じました。

このメモは、ウェアラブル担当副社長であるアレックス・ヒメル氏が作成したものとされ、メタのAIおよびハードウェア戦略の具体的なロードマップが記されています。報道によると、メタはAIペンダントの社内テストを来春に開始する予定です。また、スマートグラスについても「モデル」「ルナ」「モヒートVIP」など複数の新モデルを順次投入する計画です。

さらに注目されるのは、2026年下半期にウェアラブルデバイス1000万台の販売を目標としている点です。加えて、法人向けサービス「ウェアラブル・フォー・ワーク」の展開や、サブスクリプションを通じた収益化も計画されています。

リアリティ・ラボの巨額赤字は次世代AIデバイスへの投資

メタのハードウェア戦略を語るうえで避けて通れないのが、リアリティ・ラボの巨額赤字です。同部門は直近四半期で40億ドル超の営業損失を計上しました。一方、売上は4億202万ドルにとどまっており、投資家からは長年、株価の重荷として見られてきました。

しかし今回の報道から見えてくるのは、リアリティ・ラボの役割が単なるメタバース投資から、AIウェアラブル時代に向けた先行投資へと変化している可能性です。メタは、仮想空間だけでなく、現実世界で日常的に使えるAIデバイスへ軸足を移しつつあります。

特にスマートグラスは、その中心的な存在です。2025年には、提携先であるエシロールルックスオティカが700万台以上のスマートグラスを販売し、デイリーユーザー数も前年比で3倍に増加したとされています。これは、消費者がスマートグラスを単なる実験的なガジェットではなく、日常生活で使うツールとして受け入れ始めていることを示しています。

メタが複数の新モデルを投入しようとしている背景には、市場が本格的に立ち上がる前にシェアを押さえたいという狙いがあります。スマートフォンの次に来るインターフェースとして、AIグラスが有力候補になるなら、早期にユーザー基盤を獲得することは極めて重要です。

売り切りモデルから継続課金モデルへ

投資家目線で重要なのは、メタがハードウェアを単に販売するだけでなく、その上でAIサービスを展開し、継続的な売上につなげようとしている点です。

消費者向けには、新たなAIエージェント「ハッチ」の開発や、最新AIモデル「ミューズ・スパーク」の搭載が進められていると報じられています。フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップなどで利用されるAIチャットボットのサブスクリプションを、AIグラスにも広げることで、ハードウェアとAIサービスを一体化した収益モデルを構築しようとしていると考えられます。

この戦略が成功すれば、メタは広告収入に依存する企業から、AIサービス収入も持つ企業へと変化する可能性があります。これまで同社の収益の大部分は広告に依存してきました。しかし、AIグラスやAIペンダントが普及し、その上で有料AI機能が使われるようになれば、収益構造の多角化が進みます。

法人向けの「ウェアラブル・フォー・ワーク」も重要です。企業が現場業務、研修、遠隔支援、作業記録などにスマートグラスを導入すれば、メタにとってB2Bの新たな成長分野になります。サブスクリプション型の法人向けサービスとして拡大できれば、安定した継続収入につながる可能性があります。

AIデバイス市場で激化するプラットフォーム争い

メタが狙っているのは、単なるスマートグラス市場ではありません。AI時代の次世代インターフェースを押さえることです。

スマートフォンの時代には、アップル(AAPL)とグーグル(GOOGL)がOSとアプリストアを通じて巨大なプラットフォームを築きました。AI時代には、音声、視覚、カメラ、センサーを通じて、常にユーザーの近くにあるデバイスが新たなプラットフォームになる可能性があります。その代表候補がスマートグラスやAIペンダントです。

メタは、昨年買収したリミットレスの技術を活用し、AIペンダントという新領域にも進出しようとしています。これは、常時身につけるデバイスを通じて、AIがユーザーの行動や会話、予定などを補助する未来を見据えた動きと考えられます。

一方で、競争はすでに激しくなっています。オープンAIは、元アップルのデザイナーが設立した企業を65億ドルで買収し、AIデバイスの開発を進めています。グーグルもサムスンと提携し、スマートグラスの発売を計画しています。AIモデルの開発競争ではアンソロピックなども存在感を高めていますが、消費者向けハードウェアの領域では、AIをどのデバイスで使わせるかという新たな覇権争いが始まっています。

メタの成長シナリオと投資家が見るべきポイント

メタのハードウェア戦略には、大きな可能性と同時にリスクもあります。リアリティ・ラボの赤字は依然として巨額であり、スマートグラスやAIペンダントが十分に普及しなければ、投資負担が株価の重荷になる可能性があります。

一方で、スマートグラスの販売台数や利用者数が伸び、AIサブスクリプションへの転換が進めば、メタの評価は大きく変わります。特に、ウェアラブルデバイス1000万台という販売目標が達成されるかどうかは、今後の重要な注目点です。

また、法人向けサービスがどの程度導入されるかも重要です。消費者向けデバイスは流行に左右されやすい一方、企業向けサービスは一度導入されると継続利用につながりやすい特徴があります。メタがB2B市場で実績を積めるかどうかは、ハードウェア事業の収益性を左右する要素になります。

リアリティ・ラボの40億ドル超の赤字は、短期的には大きな負担です。しかし、それがAIハードウェア時代の基盤づくりにつながるなら、将来の成長投資として評価される可能性もあります。今後は、新製品の投入時期、販売台数、デイリーユーザー数、AIサブスクリプションへの転換率、法人向けサービスの導入状況が重要なKPIになります。

メタは、SNSと広告の巨人から、AI時代のハードウェア・プラットフォーム企業へ進化しようとしています。その挑戦が成功するかどうかは、次世代インターフェースの主導権を握れるかにかかっています。

情報ソース: The Information: “Meta Memo Outlines Ambitious Hardware Plans, Including New AI Pendant” (By Jyoti Mann, May 29, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら メタ・プラットフォームズ

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