アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が発表した2026年第1四半期決算は、AI半導体市場における同社の存在感が一段と高まっていることを示す内容となりました。
5月5日の市場終了後に発表された決算では、売上高が前年同期比38%増の103億ドルとなり、市場予想の99億ドルを上回りました。調整後1株当たり利益(EPS)も1.37ドルとなり、前年同期の96セントから大きく改善し、市場予想の1.29ドルを上回っています。
特に注目されたのは、データセンター部門です。同部門の売上高は前年同期比57%増と力強い伸びを示しました。AI向け半導体需要が引き続き業績を押し上げていることが確認された形です。一方で、営業利益率は28%にとどまり、市場予想を下回りました。売上成長は鮮明ですが、利益率の面ではまだ課題が残っていると言えます。
PC、ゲーム、自動車、産業向けなどを含む非データセンター部門も堅調でした。売上高は19%増の45億ドルとなっており、AMDの成長がAI分野だけに依存していない点は重要です。AIブームに乗るだけでなく、既存事業でも一定の成長を維持していることが、同社の強みになっています。
第2四半期ガイダンスが市場の期待を押し上げる
今回の決算で市場が強く反応した理由の一つは、第2四半期の見通しです。AMDは売上高と調整後粗利益について、市場予想を大きく上回るガイダンスを示しました。これは、AIデータセンター向け需要が一時的なブームではなく、今後も継続する可能性を市場に印象づける内容です。
一方で、経費の見通しはアナリスト予想をやや上回りました。これは、研究開発や顧客獲得、製品供給体制の強化に向けた投資が続いていることを示しています。短期的には利益率を圧迫する要因になりますが、AI半導体市場で本格的にシェアを取りに行くためには避けられない支出とも考えられます。
リサ・スーCEOは決算説明の中で、2027年にデータセンターAI関連の年間売上高で数百億ドル規模を目指す考えを示しました。また、今後数年間で80%超という長期成長目標を上回る可能性にも言及しています。さらに、AIデータセンターにおけるCPUのアクセス可能な市場規模(TAM)が年率35%で成長し、2030年までに1200億ドルに達するとの見通しも示しました。
メタとオープンAIとの大型契約が持つ意味
AMDの成長期待をさらに高めているのが、メタ・プラットフォームズ(META)およびオープンAIとの大型契約です。同社はこれらの契約に関連して、合計最大3億2000万株の新株予約権(ワラント)を付与しています。
このワラントは、納品やパフォーマンス基準の達成に応じて権利行使される仕組みです。出荷は今年下半期に始まる予定であり、ここからAMDのAI半導体ビジネスが本格的な収益貢献フェーズに入るかが注目されます。
この契約が重要なのは、単なる受注拡大にとどまらない点です。メタやオープンAIのような巨大テック企業にとって、AIインフラの供給をエヌビディア(NVDA)だけに依存することはリスクになります。AMDを第2の有力な選択肢として育てることは、調達面でも価格交渉面でも大きな意味があります。
つまり、AMDは単なる「エヌビディアの代替候補」ではなく、AIインフラ競争における戦略的パートナーとして位置づけられ始めていると考えられます。
エヌビディアとの差は大きいが、勝負の土俵は広がっている
もちろん、エヌビディアとの差は依然として大きいです。エヌビディアはAIコンピューティングで長い先行期間を持ち、データセンター部門の売上高を年間150億ドル規模から昨年には1940億ドルまで拡大させました。GPU、ソフトウェア、ネットワークを含めたエコシステムの強さは圧倒的です。
ただし、AIデータセンターの拡大に伴い、競争の焦点はGPUだけではなくなっています。AIモデルの高度化やAIエージェントの普及が進めば、データ処理、制御、オーケストレーションを担うCPUの重要性も増していきます。
AMDはCPUとGPUの両方に強みを持つ企業です。GPU単体の性能競争だけでなく、CPUとGPUを組み合わせた総合的なAIインフラ提案が求められる局面になれば、同社の戦略的価値はさらに高まる可能性があります。
課題は利益率と期待値の高さ
一方で、投資家が注意すべき点もあります。データセンター部門の営業利益率が28%にとどまり、市場予想を下回ったことは見逃せません。AI向け売上が伸びても、価格競争や研究開発費の増加によって利益率が十分に改善しなければ、株価評価には限界が出てきます。
また、AMDの株価は今年に入ってすでに60%上昇しており、決算発表後の時間外取引でも17%近く上昇しました。市場はすでにかなり強気の成長シナリオを織り込んでいます。今後は、メタやオープンAI向けの出荷が予定通り進むか、データセンターAI売上が本当に数百億ドル規模へ拡大するかが重要な確認ポイントになります。
AMDは、AI半導体市場でエヌビディアを追う挑戦者から、独自のCPU技術と幅広い事業基盤を武器にAIインフラの中核を狙う企業へと変化しつつあります。2026年後半の出荷開始と2027年に向けた成長目標は、同社の評価を大きく左右する転換点になりそうです。
情報ソース: Barron’s: “AMD Stock Soars on Strong Earnings and Growing Confidence About AI” (By Adam Levine, May 05, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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