AIがSaaSを破壊するは本当か?オラクルとセールスフォースに見る反撃シナリオ

  • 2026年3月12日
  • 2026年3月12日
  • BS余話

2026年に入り、米国のソフトウェア株には強い逆風が吹いています。生成AIの進化が加速するなかで、市場では「AIが従来のソフトウェア機能を置き換えてしまうのではないか」という懸念が急速に広がりました。実際、その不安は株価にも表れています。iShares Expanded Tech-Software ETFは、2025年9月につけた高値から大きく下落し、2026年に入ってからも厳しい推移が続いています。

こうした値動きだけを見ると、ソフトウェア業界全体の将来性に疑問を抱く投資家が増えるのも無理はありません。しかし、個別企業の戦略や足元の業績を丁寧に見ていくと、状況はそこまで単純ではありません。むしろ今回の下落は、AI時代に適応できる企業と、そうでない企業を見極める局面に入ったことを示しているように見えます。

特に注目したいのは、AI時代を勝ち抜く企業に共通する2つの方向性です。ひとつは「インフラとSaaSを組み合わせるハイブリッド戦略」、もうひとつは「AIエージェント機能に特化して新たな価値を作る戦略」です。

インフラとSaaSを両立する企業が強い理由

この流れの中で、代表例として挙げられるのがオラクル(ORCL)です。市場では一時、「AIの普及によって従来型SaaSの価値が薄れる」との見方が強まりました。しかし、オラクルはその悲観論に対して明確に反論し、実際に決算発表後の株価上昇がその評価を裏付ける形となりました。
*関連記事「オラクル株はまだ上がる?AI需要で15年ぶりの高成長、OCIとマルチクラウド戦略が示す本当の実力

オラクルの強みは、単なる業務ソフト提供企業ではないことです。同社は企業向けのSaaSを展開する一方で、AIを動かすために不可欠なクラウド基盤や計算資源も提供しています。つまり、AI時代に必要とされるアプリケーション側とインフラ側の両方を押さえているのです。

この構造は、マイクロソフト(MSFT)やSAP(SAP)にも共通しています。企業向けソフトの分野で確固たる顧客基盤を持ちながら、その裏側ではクラウドやデータ基盤、AI関連サービスを提供できる企業は、AIの普及そのものを成長機会に変えやすい立場にあります。

なかでもオラクルが示した巨額の設備投資計画は象徴的です。これは既存事業を守るための消極策ではなく、AIインフラ需要を自社の成長エンジンとして取り込むための攻めの投資と見ることができます。仮に将来、AIが一部のSaaS機能を代替するような局面が来たとしても、そのAIを稼働させるためのサーバーやストレージ、クラウド基盤の需要まで消えるわけではありません。

むしろAI活用が広がれば広がるほど、裏側のインフラ需要は膨らみます。つまり、オラクルのような企業は、自社ソフトにAI機能を組み込んで価値を高めながら、同時にAI時代の基盤需要まで取り込める構造を持っているのです。これは非常に強いビジネスモデルです。

純粋なSaaS企業はAIエージェントで生き残る

一方で、すべてのソフトウェア企業がインフラ事業を持てるわけではありません。では、純粋なSaaS企業はAI時代にどう戦うのでしょうか。その答えとして注目されるのが、セールスフォース(CRM)の戦略です。

セールスフォースは、顧客管理ソフトの会社という印象が強いかもしれませんが、いまはAIエージェント機能を組み込んだ新たなプラットフォーム戦略を打ち出しています。特に注目されているのがAgentforceです。これは単なるチャット機能の追加ではなく、業務の流れの中でAIが自律的にタスクを支援、あるいは一部代行する方向性を示しています。

ここで重要なのは、AIエージェント関連の売上規模がまだ全体から見れば限定的であっても、成長率が極めて高いことです。この点は、企業がAIを単体の技術として導入したいのではなく、すでに日常業務に組み込まれた形で使いたいと考えていることを示しています。

多くの企業にとって、ゼロから独自AIを開発するのはコストも時間もかかります。そのため、既存の業務ソフトの中にAIが自然に組み込まれている方が導入しやすく、費用対効果も見えやすいのです。セールスフォースが狙っているのは、まさにこの需要です。

つまり、純粋なSaaS企業であっても、自社のサービスを単なる記録・管理ツールから、実際に仕事を進めてくれるAIプラットフォームへ進化させることができれば、十分に競争力を維持できます。AIの登場は脅威である一方で、使い方次第では新たな成長機会にもなります。

ソフトウェア業界は終焉ではなく選別の時代へ

現在のソフトウェア株の下落を見て、「ソフトウェア業界はもう成長できない」と考えるのは早計です。起きているのは業界全体の終焉ではなく、AI時代に適応できる企業と、変化に乗り遅れる企業の選別です。

オラクルのようにインフラとSaaSを両立し、AI需要そのものを取り込める企業は、今後も優位性を保ちやすいと考えられます。また、セールスフォースのようにAIエージェントを武器に既存プラットフォームの価値を高める企業も、新たな成長余地を持っています。

投資家にとって重要なのは、「AIがソフトウェアを破壊するかどうか」という単純な見方ではなく、それぞれの企業がAIエコシステムのどのレイヤーで勝負しているのかを見極めることです。市場全体が悲観に傾いている局面ほど、その違いが株価に十分反映されていない可能性があります。

ソフトウェア・アポカリプスという言葉は刺激的ですが、現実には終わりではなく再編の始まりです。今後の主役は、AIを恐れる企業ではなく、AIを自社の成長戦略に組み込める企業になっていくはずです。

情報ソース: Barron’s: “Oracle Insists It’s Safe From the AI Threat. Why It’s Time to Rethink Software Stocks.” (By Angela Palumbo, March 11, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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