人工知能(AI)スタートアップのアンソロピックが、グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)のテンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)の利用を大幅に拡大すると発表しました。この契約により、アンソロピックは最大100万個のTPUチップと追加のグーグル・クラウド・サービスを活用することになります。契約規模は数百億ドルに上り、2026年には1ギガワット超のコンピューティング能力が稼働する予定です。
この発表はグーグルとその主要パートナーであるブロードコム(AVGO)にとって朗報となりました。ブロードコムはグーグルのTPU開発における主要な設計パートナーであり、グーグルのAIコンピュートプログラムがブロードコムのAI関連売上の80%以上を占めているとみられています。
アンソロピックとクラウド業界の構図変化
今回の提携はグーグル・クラウドにとって重要な追い風ですが、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のクラウド事業であるAWSの成長ペースに対する懸念も生じています。アマゾンはこれまでアンソロピックに最大80億ドルを投資しており、一方でグーグルも約30億ドルを出資しています。
アンソロピックは声明の中で「アマゾンは当社の主要なトレーニングパートナーであり、主要なクラウドプロバイダーである」と述べており、引き続きアマゾンの「プロジェクト・レイニア」(Project Rainier)にも関与しています。これはAWSが「世界で最も強力なAIトレーニング用コンピュータ」と説明するプロジェクトです。
勝者はブロードコム、懸念されるマーベル・テクノロジー
ブロードコムがグーグルと共にTPU開発をリードすることで、AIハードウェア市場での存在感を一層強めています。一方で、アマゾンのチップ開発パートナーであるマーベル・テクノロジー(MRVL)は懸念を抱えています。同社はアマゾンの次世代AIチップ「トレニウム(Trainium)」の設計を手がけていますが、今回のアンソロピックの動きにより市場シェアの一部を失う可能性が意識されています。
エヌビディアのGPUも引き続き活用
アンソロピックは引き続きエヌビディア(NVDA)のGPUも使用し、計算能力への投資を継続するとしています。2025年9月には新たに130億ドルの資金調達を行い、企業評価額は1,830億ドルに達しました。
今回のグーグルとの提携拡大は、AIインフラ市場における主導権争いの激化を示すものであり、クラウドと半導体の両業界において大きな影響を与えることになりそうです。
*過去記事「ブロードコムに大型AI契約の噂 アンソロピックが100億ドル規模の発注か?」
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