米メディアの報道によると、エヌビディア(NVDA)とアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、中国向けAIチップの輸出ライセンス取得に伴い、中国での売上の15%を米政府に支払うことで合意しました。このニュースを受け、この取り決めに対するアナリストの評価と具体的な収益影響の試算が報じられています。
バーンスタインは「危険な前例」と指摘
バーンスタインのアナリストは、今回の合意が「ペイ・トゥ・プレイ(参入料を払う)方式」の前例となりかねないと懸念しています。特に、今回の対象が特定の管理製品に限られたとしても、他の企業にも波及する可能性を警戒しています。
戦略的な意義が乏しく、単に政府歳入を増やすだけの措置であるとの見方も示されました。
企業収益への具体的影響試算
アナリストの試算によると、中国で約200億ドルのH20チップ需要がある場合、エヌビディアは約30億ドルを米政府に支払うことになります。AMDの場合は数億ドル規模の負担となります。
この負担は1株当たり利益(EPS)を約0.25ドルから0.20ドル程度に押し下げる可能性があり、粗利益率にも5〜15ポイントの影響を与えると見込まれています。なお、エヌビディアは強い需要を背景に、このコストを価格に転嫁できる可能性が高いとしています。
在庫と供給見通し
エヌビディアはH20チップを60万〜70万個在庫しており、TSMC(TSM)に30万個を追加発注したと報じられています。中国での需要は180万個と見積もられていますが、米政府が承認する数量には上限があるとの見方も出ています。
また、新しいブラックウェル・アーキテクチャをベースにした輸出規制適合製品は、この15%負担の対象外となる可能性があるとされ、今後の供給体制の立ち上げが注目されます。
AMDの現状と見通し
AMDは9月期見通しに中国出荷分の売上を含めていません。直近四半期には輸出禁止による在庫関連費用として約8億ドルを計上し、調整後粗利益率は43%に低下しました(この費用を除くと54%)。ライセンス取得後の売上回復が業績改善の鍵となります。
*過去記事「エヌビディアとAMD、中国向けチップ売上15%支払いの波紋」
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