MPマテリアルズ株が急騰、米国防総省との契約が追い風に

  • 2025年7月11日
  • 2025年7月11日
  • BS余話

2025年7月10日、米国のレアアース企業であるMPマテリアルズ(MP)の株価が一時50%近く急騰しました。背景には、アメリカ国防総省との戦略的な契約が発表されたことがあります。MPマテリアルズはこの契約により、国内におけるレアアース磁石のサプライチェーン構築を加速させる見通しです。

約9億ドル規模の支援で国内供給網を整備

同社の発表によれば、今回の契約には4億ドルの株式投資、最大3億5,000万ドルの追加支援、1億5,000万ドルの融資が含まれており、新たな国内磁石製造施設の建設と既存の採掘・精製施設の拡張に充てられる予定です。

MPマテリアルズは米西部にあるマウンテンパス鉱山で、ネオジムやプラセオジムなどのレアアース酸化物を生産しています。これらの希少金属は、F-35戦闘機をはじめとする防衛機器や電気モーターなどに不可欠な素材です。

米国の自立を目指す「Mine to Magnet」構想

国防総省は2024年に発表した国家防衛産業戦略の中で、「Mine to Magnet」計画を掲げ、2027年までにレアアース分野での自給自足を実現する方針を示しています。中国への依存度が極めて高いこの分野で、アメリカは地政学的リスクを回避するためにも、国内供給網の強化が急務となっています。

中国は世界のレアアース酸化物生産の約70%を占め、精製能力では85%を支配しています。アメリカは2024年時点でわずか45,000トンしか採掘しておらず、大きなギャップが存在します。

価格下落への備えも万全

今回の契約には、ネオジムおよびプラセオジム酸化物の価格に対するフロア(最低価格)設定も含まれており、1キログラムあたり110ドルと定められました。これは過去15年間の平均価格(約60ドル)を大きく上回る水準であり、今後中国が価格操作を行っても、MPマテリアルズの事業継続を支える仕組みとなります。

エネルギー・フューエルズなど他銘柄にも波及

このニュースを受け、米国でウランおよびレアアースの採掘権を保有するエネルギー・フューエルズ(UUUU)の株価も急伸し、同日の取引中に16.3%上昇しました。同社はSNS上でこの契約を歓迎し、トランプ政権が国内の重要鉱物サプライチェーン回復に本腰を入れていることを示す好例だとコメントしました。

今後の注目点

今回の契約は、商業企業にとっても魅力的な「価格の下支え」というモデルケースとなる可能性があります。米国が地政学リスクに対応しながら、戦略物資の自給体制をどう築いていくかに注目が集まります。

このように、MPマテリアルズの急騰は単なる株価の話題にとどまらず、米国の経済安全保障や産業戦略とも密接に関係しています。今後もレアアース関連銘柄の動向には目が離せません。

*過去記事「米国発レアアース企業、USAレアアースにアナリストが強気評価

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