メタがレイバン親会社に出資、スマートグラスでAIとメタバース融合へ

2025年7月9日、メタ・プラットフォームズ(META)が世界最大のアイウェア企業であるエシロールルックスオティカ(EL)の株式3%弱を取得したと複数の報道機関が伝えました。投資額は約35億ドルに上り、同社のスマートグラス戦略に対する本気度がうかがえます。

この報道を受けて、エシロールルックスオティカの株価は9日のパリ市場で6%上昇し、時価総額は1,106億ユーロ(約1,295億ドル)に達しました。メタ・プラットフォームズの株価も同日午前の米国市場で2.2%上昇しています。

AIとメタバース、ザッカーバーグ氏の一貫したビジョン

人工知能(AI)ブームの影で、投資家の間ではメタバースの存在が忘れられつつありますが、マーク・ザッカーバーグCEOは仮想現実(VR)ハードウェアの将来性を依然として信じているようです。

今回の出資は、メタとエシロールルックスオティカが共同開発する「レイバン・メタ」シリーズの強化につながるもので、2023年の発売以降、累計販売台数は200万台を超えました。6月には、アスリート向けに特化した「オークリー・メタ」シリーズも発表されています。

両社は現在、製品を「AIグラス」としてブランディングしており、AIブームの追い風を活かした巧みなマーケティング戦略を展開しています。ザッカーバーグ氏は昨年、「この10年の終わりまでには、多くの人がスマートグラスを使って日常的にAIと会話するようになる」と語っており、AIとメタバースを一体の戦略として位置づけていることがわかります。

スマートグラス市場の可能性と現実

2024年には、全ブランドのスマートグラスの販売台数が初めて200万台を突破したとカウンターポイント・リサーチは報告しています。これはスマートフォンの12億台以上と比べるとまだごく一部ですが、同社は今後も年率60%以上の成長が続くと予測しており、スマートフォン市場が停滞する中で注目されています。

スマートグラスは、メタが開発を進めるバルキーなVRヘッドセットと比較しても、より現実的かつ市場に受け入れられた製品といえます。一方で、メタ・プラットフォームズのリアリティ・ラボ部門は2024年に177億ドルの赤字を計上しており、2025年には最大200億ドルの損失に達する可能性があるとギミ・クレジットのアナリストは見ています。

それに加えて、同社はAIソフトウェア開発のために「スーパーインテリジェンス・ラボ」部門を立ち上げ、数億ドル規模の追加投資も進めています。

独立系アナリストは長期視点を提案

テクノロジーアナリストのリチャード・ウィンザー氏は、「メタバースがスマートフォンを置き換えるには長い時間が必要になるが、スマートグラスこそがその第一歩になるかもしれない」と述べています。スマートフォンが市場を席巻するまでに15年かかったことを踏まえると、メタバースの普及にも同様かそれ以上の時間が必要とされるかもしれません。

他社もスマートグラス市場へ参入

この分野では、他の大手テクノロジー企業も存在感を高めています。アルファベット(GOOGL)のグーグルは、ファッションブランドのケリングおよびアイウェア企業のウォービー・パーカー(WRBY)と提携し、自社開発のAIグラスを進めています。

また、中国のシャオミもスマートグラス市場に本格参入を表明しており、競争はますます激化しています。

出資による影響と今後の展望

投資銀行ジェフリーズは、今回の出資を「第一歩」と捉えており、将来的にメタがエシロールルックスオティカへの出資比率を5%まで引き上げる可能性があると分析しています。グローバルな製造知見と流通ネットワークの獲得により、メタはスマートグラスを大衆向け製品へと進化させる道筋を描いているといえます。

AIとメタバースという2つの柱を軸に、メタ・プラットフォームズの戦略は新たなステージに入りつつあります。

*過去記事 メタ・プラットフォームズ

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