ブロードコム(AVGO)は2025年、米国企業の時価総額ランキングで第7位に浮上し、AI半導体分野での地位を大きく高めています。株価は過去1年間で84%上昇し、2016年からの上昇率は1,785%に達しました。エヌビディア(NVDA)に次ぐ“第2のAI半導体王者”として、投資家の注目を集めています。
ホック・タンCEOの買収戦略が導いた成長
ブロードコムの成長の立役者は、マレーシア生まれでMIT卒業のホック・タンCEOです。2005年、アバゴ・テクノロジーズ(ブロードコムの前身)にCEOとして迎えられたタン氏は、企業買収を通じて業容を拡大しました。2016年にはブロードコムを買収し、社名とティッカー(AVGO)をそのまま引き継いでいます。
その後も、CAテクノロジーズ、シマンテックのエンタープライズ事業、VMwareなどのソフトウェア企業を買収。高マージンで安定収益が見込めるソフトウェアビジネスを、半導体の景気変動リスクに対する“保険”として活用しています。
XPUとASICでAI半導体市場の本命に浮上
AI関連のデータセンターでは、画像処理や機械学習などに高い演算能力が求められます。エヌビディアのGPUが市場をリードしていますが、大手ハイパースケール企業はコスト削減や供給の多様化の観点から、自社設計のXPU(汎用ではなく特化型の処理装置)導入を進めています。
XPUの多くはASIC(特定用途向け集積回路)として設計されており、この分野でブロードコムは他社を圧倒する技術力と製造実績を誇ります。アルファベット(GOOGL)は10年以上前からAI向けASICをブロードコムに委託しており、強固なパートナーシップを築いてきました。
顧客拡大とAI収益の急増
ブロードコムのAI ASIC顧客は、1年前の3社から現在は7社へと拡大しました。代表的な顧客には、メタ・プラットフォームズ(META)、バイトダンス、オープンAIなどが含まれます。2025年第1四半期のAI関連売上は44億ドル(前年同期比+46%)で、次の四半期は51億ドルの見通しです。
また、同社は次世代ネットワークスイッチ製品も展開しており、AIチップ同士を高速に接続するクラスタリング性能を高め、より大規模なAI処理を可能にしています。
2027年に向けた巨大市場の見通し
メリウス・リサーチのアナリストによると、ブロードコムのAI関連売上は2027年に360億ドルに達し、その後も新規顧客のスケールアップが進めば700億ドル規模に拡大する可能性があります。ホック・タンCEOも、既存の主要3社だけで2027年までに100万チップの導入が見込まれると述べています。AI専用チップ市場全体で600億~900億ドルの規模が期待されています。
投資家心理がカギとなる今後の展開
現在のブロードコム株は、予想フリーキャッシュフローの32倍という高いバリュエーションで取引されています。2016年当時は10倍台前半で“割安株”として評価されていましたが、今後は投資家の期待とセンチメントが株価に与える影響が大きくなります。
時価総額でメタやアマゾン(AMZN)などを追い抜くには、売上と利益の急成長だけでなく、マーケットからの評価も高水準で維持する必要があります。
まとめ:第2のエヌビディアとしての存在感を強めるブロードコム
ブロードコムは、AIインフラ需要の拡大を背景に、ASIC設計とソフトウェア収益という両輪で高成長を遂げています。ホック・タンCEOの先見性と大胆な戦略が市場で評価され、エヌビディアに続く“AI半導体第2の覇者”として確固たる地位を築きつつあります。
今後もAI市場の拡大とともに、ブロードコムがどこまで成長するかに注目が集まります。
*過去記事はこちら ブロードコム AVGO