ブロードコムのAI戦略に死角なし──アナリストが続々と目標株価引き上げ

2025年6月6日、ブロードコム(AVGO)の株価は、好調なAI関連売上にもかかわらず3%以上下落しました。しかし、その背景には単なる利益確定売り以上のものが見えてきます。本記事では、直近決算の詳細と今後のAI戦略を分析し、ブロードコムがなぜ今後も注目され続けるのかを探ります。

時価総額1.2兆ドルに到達、AI供給の三強に浮上

5年前には1,250億ドルに過ぎなかったブロードコムの時価総額は、2025年現在で1.2兆ドルを突破しました。これは、AI半導体分野においてエヌビディア(NVDA)に次ぐ地位を確立していることを意味します。さらに、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と比較しても約7倍の規模にまで成長しています。

成長の原動力は、ブロードコム独自のASIC(特定用途向け集積回路)チップです。これらはアップル(AAPL)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)といったハイパースケーラー企業が構築する巨大なAIネットワークの中核を担っています。中国のバイトダンス(TikTok運営元)も顧客に含まれています。

第2四半期のAI関連売上は44億ドル、前年比46%増

2025年第2四半期のAI関連売上は44億ドルに達し、前年同期比で約46%の成長を記録しました。これは全体の売上成長率(+20%)を大きく上回る数字であり、AI分野におけるブロードコムの競争力を裏付けるものです。

CEOホック・タン氏は、「AIネットワーク構築から、より高度な推論処理への移行が始まっている」と強調しました。これは、ブロードコムのカスタムチップが単なる訓練フェーズを超え、収益化のための推論処理にも広く使われていることを意味します。

サービス可能市場(SAM)は最大900億ドルへ

同社は、AIプロセッサおよびネットワーキングチップのサービス可能市場(SAM)が、2027年には600億〜900億ドル規模に成長すると予測しています。この見通しにより、アナリストたちは一斉に目標株価を引き上げました。

  • モルガン・スタンレー:270ドル(+10ドル)
  • バンク・オブ・アメリカ:300ドル(+60ドル)
  • ベンチマーク:315ドル(+60ドル)

アナリストは推論需要の加速に注目

ベンチマークのアナリスト、コーディ・アクリー氏は、「ブロードコムは、AI推論アプリケーションの加速的な成長から最も恩恵を受ける企業の一つだ」と評価しました。同氏によれば、XPU(カスタム処理ユニット)の重要性が増す中で、同社の地位は他に代替の効かないものになりつつあるとしています。

株価の調整は一時的か

過去1年で株価は85%上昇し、年初来でも12%のプラス。今回の下落は、決算内容が市場予想と「ほぼ一致」したことによる期待剥落や利益確定の側面が強く、企業のファンダメンタルズに対する信頼が揺らいだわけではありません。

今後も成長継続、特に推論需要が鍵に

ブロードコムは、AIネットワークの構築から推論フェーズへの移行というAI産業の次の波に備えて、万全の体制を築いています。目先の株価調整を過度に恐れるのではなく、中長期的な視点での成長性に注目する姿勢が重要です。

*関連記事「AI好調でも株価下落?ブロードコム決算に見る成長と調整の真実

最新情報をチェックしよう!