AIインフラへの投資が加速、関税と景気不安を超える成長ドライバーに

4月末から5月初めにかけて、米国の主要テック企業が相次いで決算を発表し、テクノロジー関税と人工知能(AI)に関する最新の動向が一気に明らかになりました。今回の決算発表を通じて、AI分野への投資が引き続き加速していることが確認されました。

マイクロソフトとメタが株価上昇

マイクロソフト(MSFT)メタ・プラットフォームズ(META)は、予想を上回る好決算を発表したことで株価が上昇しました。一方で、アップル(AAPL)アマゾン・ドット・コム(AMZN)は同様に好決算だったにもかかわらず、株価は振るいませんでした。

マイクロソフトはヨーロッパでのデータセンター容量を今後2年間で40%拡大すると発表しました。また、2025年6月期におけるAI関連データセンターへの支出目標として800億ドルを維持することも明らかにしています。同社のAzure AIサービスでは、需要が供給を大きく上回っており、GPUサーバーの供給制約が続いていると説明しています。

アップルとアマゾンは関税の影響を警戒

アップルは、6月期に約9億ドルの追加コストが関税によって発生すると発表しました。多くの物理的な製品を販売しているアップルとアマゾンは、今後の関税の影響について明確な見通しを出すことができていません。

アマゾンのCEO、アンディ・ジャシー氏は、現時点では大きな影響はないと述べつつも、今後の動向には注意が必要であることを示唆しました。

AI投資は減速どころか加速

一部では、景気後退懸念や投資回収への懸念から、企業がAIインフラへの投資を減らすのではないかという見方もありました。しかし、今回の決算発表はその懸念を一掃するものでした。

マイクロソフトに続き、メタは2025年の資本支出見通しを600億~650億ドルから、640億~720億ドルに引き上げました。同社のCFOであるスーザン・リー氏は、AIインフラを増強しても、内部プロジェクトの需要に追いつかないと説明しています。

CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、AIが広告の最適化、新しいインタラクティブコンテンツ、カスタマーサポートを担うWhatsAppの進化、音声対話とパーソナライズ、さらにAI搭載のデバイスに至るまで、5つの主要分野で大きな成長機会があると語りました。

アマゾンもAIで大規模成長を期待

アマゾンもAIによる業務改善に積極的です。物流、Eコマース、広告など広範な分野でAIを活用しており、AIビジネスは前年比で100%以上の成長を見せています。さらに、AIエージェント(シンプルな指示で複雑なタスクを遂行するプログラム)の可能性にも大きな期待を寄せています。

ジャシー氏は、AI関連の新興企業が急成長しており、予想外の需要が発生していると述べました。現時点では「野球の試合の1回表、まだ1人目の打者が2球目を受けた段階」と表現し、AIの黎明期であることを強調しました。

景気後退や貿易戦争でもAIは生き残る可能性

仮に米中貿易戦争が長期化し、景気後退が本格化すれば、消費者支出や企業のIT予算に影響が出る可能性があります。しかし、そうした中でもAI分野は成長を続ける可能性があります。

エヌビディア(NVDA)のCEO、ジェンスン・フアン氏は、景気後退時でも企業は効率向上を目指してAIに投資を振り向けると述べています。ザッカーバーグ氏も、景気悪化時にはさらにGPUインフラの拡充を進めると語っており、長期的な視点でAIを中核事業と見なす姿勢を明確にしています。

AIは、コンピューティング分野における「一世代に一度のパラダイムシフト」とも言える技術革新であり、関税や景気の波を越えて成長を続けていくことが期待されています。

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