半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が、小売業者や流通業者におけるチップの過剰在庫に直面する可能性があると、投資会社バーンスタインが警告しました。
CPUの出荷台数がPC出荷台数を上回る
アナリストのステイシー・ラグソン氏は、国際データ企業IDCやマーキュリー・リサーチのデータを引用し、2024年12月期におけるCPU出荷台数がPC出荷台数を13%上回ったと指摘しました。歴史的に見ると、このような状況は在庫過多の兆候と考えられています。
過去にも、新型コロナウイルスの影響でコンピュータ販売が急増した際、業界全体で店舗や販売店に過剰な在庫を供給し、その後の売上減少につながったケースがありました。ラグソン氏は、「再びCPUの供給が過剰になりつつある」と述べており、AMDにとって慎重な対応が求められるとしています。
株価の動向と市場評価
ラグソン氏は、AMD株の「マーケット・パフォーム」の格付けを維持し、目標株価を125ドルと設定しました。2月13日の同社の終値は111.81ドルとなっています。
一方で、過去1年のパフォーマンスを見ると、iシェアーズ・セミコンダクター上場投信(ETF)が8%上昇したのに対し、AMD株は約37%下落しています。この株価の低迷は、過剰在庫の懸念や競争の激化が影響している可能性があります。
インテルからのシェア獲得だけでは不十分か
業界全体のデータから見ると、AMDは競争相手であるインテルから一定のシェアを獲得している可能性があります。しかし、ラグソン氏は、シェア拡大だけで現在の市場の動向を説明するのは難しいと指摘しています。
「AMDのシェア拡大が事実であるとしても、現在の格差がすべて製品の競争力によるものとは考えにくい」と述べており、競争環境の変化や市場の需要動向を総合的に判断する必要があるとしています。
AMDの公式見解とCEOの発言
この市場の懸念に対し、AMDの広報担当者は、リサ・スー最高経営責任者(CEO)が決算説明会で述べた発言を指摘しています。同氏は、「AMDが重視しているのはCPUの出荷台数ではなく、総売上だ」と述べており、チップの販売台数の増減だけでは同社の業績を判断できないとしています。
また、スー氏は2024年第4四半期の電話会議で、「AMDは記録的なCPU売上を達成し、世界中の小売店で同社のCPUがベストセラーランキングを独占した」と述べました。この発言から、AMDは市場の需要を維持しながら、長期的な成長戦略を進めていることがうかがえます。
今後の展望
AMDの株価はここ1年で大きく下落していますが、市場シェアの拡大や製品ラインアップの強化により、再び成長軌道に乗る可能性があります。しかし、CPUの過剰在庫が現実となった場合、短期的には売上の伸び悩みや価格競争の激化が懸念されます。
今後の展開として、PC市場全体の需要回復や、データセンター向けチップの売上動向がAMDの業績を左右する要因となりそうです。投資家にとっては、引き続き同社の決算発表や市場動向を注視することが重要です。
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