ウルフ・リサーチの下方修正が示す、AMDの現実とは?

  • 2025年1月17日
  • 2025年1月17日
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半導体業界の注目銘柄であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価が、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の成長性についての懸念から下落傾向にあります。ウルフ・リサーチのアナリスト、クリス・カソ氏は1月16日、AMD株の格付けをアウトパフォームから下方修正しました。この動きは、2025年のGPU事業の売上見通しが控えめであることが理由とされています。

ウルフ・リサーチの分析と見通し

カソ氏は、AMDのデータセンター向けGPU事業が市場の期待を下回っていると指摘し、今回の格付け変更がその見解を反映していると述べました。同氏の2025年のデータセンター向けGPUの売上予測は70億ドルで、以前の予測である100億ドル以上を大きく下回っています。一方、投資家の多くは依然として100億ドル以上を期待している状況です。

また、AMDが2月初旬に予定している決算報告会で、データセンター向けGPU事業に関する通年見通しを示す可能性が低いと考えられています。カソ氏は、昨年12月にアジアを訪問した際のOEMの生産計画に基づき、第4四半期の生産ペースからは四半期ごとの成長は限定的との印象を受けたと述べています。

MI150チップへの期待

AMDの2025年の成長見通しにおいて、同年後半に発表が予定されているMI150チップが注目されています。このチップは、直後の数か月間での売上貢献が期待されています。さらに、MI150は設計が大幅に改良される見込みで、AMDのGPU事業における競争力を強化する可能性があります。

ただし、こうしたポジティブな要素が即座に株価を押し上げる要因となるかは不透明です。実際、今年に入り、AMDの株価は1%下落しており、過去1年では27%の下落を記録しています。

エヌビディアとの競争と他のアナリストの見解

AMDに対する市場の懸念の背景には、主要競合先であるエヌビディア(NVDA)の圧倒的な市場シェアがあります。HSBCのフランク・リー氏は、エヌビディアから市場シェアを奪うのは難しいとの見方を示し、AMDのAI以外の主要事業も大幅な成長が期待しづらいと述べました。また、ゴールドマン・サックスも中立的な立場に転じています。

一方、ファクトセットが追跡している56人のアナリストのうち、43人がAMDを買い評価とし、強気の姿勢を崩していません。ゲイリー・モブリー氏は、最近の株価パフォーマンスの悪さにもかかわらず、相対的な評価が低い現状は投資家にとってリスクとリターンのバランスが魅力的であると述べています。

まとめ

AMDのGPU事業を巡る見通しは市場で議論が分かれていますが、2025年の後半には新製品による成長の可能性が示唆されています。同時に、ライバルであるエヌビディアの存在やデータセンター向けGPU事業の成長性に対する懸念が、AMDの株価や投資家のセンチメントに影響を与えています。今後の決算報告会や製品発表が、同社の成長戦略にどのような影響を及ぼすか注目されるところです。

*過去記事「ゴールドマン・サックスがAMDを格下げ、推奨するAI関連株とチップ業界の展望

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