ここ数年、データセンターにおける人工知能(AI)モデルやアプリケーションのトレーニング、展開に必要なチップの需要が急激に増加しています。その中でもエヌビディア(NVDA)は、AI半導体分野で圧倒的な市場シェアを誇り、この成長市場で大きな恩恵を受けています。
2025年度第3四半期(10月27日に終了)のデータセンター向けチップの売上は308億ドルと、前年同期比で112%の大幅な成長を記録しました。同社の最も近いライバルであるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、2024年のデータセンター向けGPU売上を50億ドルと予測しており、その差は明らかです。
しかし、クラウドサービスプロバイダーが使用するAIチップはGPUに限りません。ここでは、ブロードコム(AVGO)のカスタムAIプロセッサに関する急速な需要拡大について詳しく見ていきます。
ブロードコムのAIチップ事業の成長と市場の変化
ブロードコムは、カスタムAIアクセラレータ(XPUs)とAIデータセンター用ネットワークチップの売上により、2024年度の売上が122億ドルに達しました。この数値はエヌビディアのデータセンターチップ売上には及びませんが、ブロードコムの急成長を示しています。
主要クラウド企業がエヌビディアのGPUの高コストや供給の待ち時間を考慮し、社内でカスタムチップを開発する傾向が強まる中、ブロードコムのASIC(特定タスク専用チップ)は、グーグル、メタ・プラットフォームズ、バイトダンス、オープンAIなどの企業によって採用されています。こうした動きは、AIアクセラレータ市場の多様化を示しており、今後も続くと見られます。
AI専用ASIC市場は今後も急速に成長すると予測されており、Lucintelのレポートによれば2030年まで年平均32%の成長が見込まれています。さらに、ブロードコムのCEOであるホック・タン氏は、2027年度にはAI対応可能なXPUsおよびネットワーク市場が600億ドル〜900億ドルに達すると見込んでいます。
エヌビディアの成長鈍化と長期的な見通し
エヌビディアのAIデータセンター事業は2024年の最初の9か月間で796億ドルの売上を達成しましたが、その成長ペースは鈍化しています。これは、同社がすでに非常に大きな売上基盤を築いているため、自然な現象といえます。加えて、同社は次世代Blackwellアーキテクチャを採用した新しいAIデータセンターチップへの移行期にあります。
一方で、AIアクセラレータ市場全体の成長予測は引き続き明るく、2028年には市場規模が5000億ドルに達するとされています。このうち、GPUの市場規模は約34%を占め、2000億ドルを超えると見られています。したがって、AI特化型GPUの需要は今後も高水準を維持する可能性があります。
さらに、エヌビディアはAI市場だけでなく、アクセラレーテッド・コンピューティングへの移行による成長も期待されています。この分野は今後数年にわたり同社の売上基盤を支える重要な要素になると予想されます。
長期的な投資先としてのエヌビディア
ブロードコムのAI事業が成長を続けている一方で、エヌビディアの長期的な競争力は依然として堅固です。同社はAIアクセラレータ市場全体の中でも圧倒的な存在感を維持しており、将来的な成長の余地が大きいことが予想されます。特に、AI専用GPU市場の拡大とアクセラレーテッド・コンピューティング分野の成長が同社の主要な原動力になると思われます。
エヌビディアの投資家にとって、ブロードコムの成長は注目に値しますが、現時点で大きな懸念材料と考える必要はなさそうです。むしろ、エヌビディアの強固な市場ポジションと長期的な売上拡大の可能性に着目し、引き続き同社を長期的な成長株と捉えることが重要です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA