セールスフォース(CRM)とサービスナウ(NOW)は、エンタープライズソフトウェア市場でライバル関係にあると言えます。しかし、キーバンクのアナリストは、この2社に対して異なる評価を行っています。
セールスフォースの株価が上昇、AI技術に注目
キーバンクはセールスフォースの投資判断を「セクターウェイト」から「オーバーウェイト」に引き上げ、目標株価を440ドルとしました。
同社が高評価を得た要因の一つは、人工知能(AI)を活用した「Agentforce」の存在です。このAIスイートは、プロセスの自動化を実現し、人間の介入を最小限に抑えることが特徴です。従来のコパイロット型AIとは異なり、エージェント型AIとして業務効率化に大きく寄与すると考えられています。
キーバンクのアナリストによると、Agentforceに対する顧客やパートナーの反応は非常に好意的であり、この技術が業界に与える影響は計り知れないと評価されています。また、同社はAgentforceの普及がまだ具体的な売上増加には直結しない状況であるものの、将来的な成長の基盤になると考えられています。
さらに、セールスフォースの成長可能性はヘルスケア分野でも注目されています。同社の「Life Science Cloud」は、製薬やバイオテクノロジー企業向けにカスタマイズされたツールを多数提供しており、この市場での急成長が期待されています。
*過去記事「ソフトウェア業界を牽引するAI需要:セールスフォースの最新決算解説」
サービスナウへの評価に下方修正
一方、サービスナウについては、キーバンクは投資判断を「オーバーウェイト」から「セクターウェイト」に引き下げました。この格下げの理由として、評価額の割高さや市場環境の不確実性が挙げられています。
サービスナウはこれまでワークフローの自動化分野で高い成功を収めてきましたが、エージェント型AIの台頭によって、その差別化が難しくなる可能性があると指摘されています。特に、エージェント型AIが業界標準になるにつれ、同社の初期のリーダーシップが薄れるリスクが懸念されています。
さらに、米連邦政府レベルでのサービスナウ製品の使用は同社の強みとされていますが、予算削減の影響により不透明な状況が続く可能性もあります。また、競合他社と比較した際の評価額の高さも懸念材料です。現在、サービスナウの評価額は過去10年間で最も高い水準にあり、期待に応えられない場合のリスクが指摘されています。
*過去記事「AIとDXが加速!サービスナウ、驚異の第3四半期決算で株価急騰へ」
エンタープライズソフトウェア市場の今後
セールスフォースは、AI技術や新興市場での拡大による成長が期待されており、投資家からの注目を集めています。一方、サービスナウは評価額の高さや市場の不確実性といった課題に直面しており、競争環境の中での戦略が鍵となります。
両社はエンタープライズソフトウェア市場で重要な役割を果たしていますが、それぞれの強みや課題を踏まえた投資判断が必要です。AI技術や市場環境の変化を注視しながら、今後の動向に要注目です。