AI技術が急速に進化する中、ブロードコム（AVGO）は特にAIチップ分野で注目を集める企業の一つです。同社はアプリケーション特化型集積回路（ASIC）と呼ばれるカスタムAIチップの製造に特化しており、エヌビディア（NVDA）に次ぐAIチップ企業としての地位を確立しています。この分野での特筆すべき点は、ブロードコムが主要なテクノロジー企業と強固なパートナーシップを築き、カスタムAIチップ市場で大きなシェアを獲得していることです。
この記事では、ブロードコムの最新業績、AIチップ市場でのポジション、そして将来的な売上成長の可能性について詳しく掘り下げます。
ブロードコムの最新業績：AIチップ売上が前年比3.5倍に
ブロードコムの成長は数字が物語っています。2024年度第3四半期（8月4日終了）では、カスタムAIチップの売上高が前年同期比で3.5倍という成長を記録しました。この成長は、AI技術の需要拡大や、企業が特定用途に最適化されたカスタムチップを求める動きが強まったことによるものです。
特に生成AIや機械学習の分野での応用が広がる中、ブロードコムのカスタムチップの需要が急増しています。この急成長は、AI技術の需要増加とカスタムチップ市場でのブロードコムの支配的な地位によるものです。特に、AI技術の応用が広がる中で、多くの企業がカスタムソリューションを求めていることが、この成長の要因として挙げられます。
JPモルガンの調査によれば、ブロードコムはカスタムAIチップ市場で55%〜60%のシェアを占めており、この優位性は今後も続く見込みです。この調査結果に基づき、ブロードコムは引き続き競争優位を維持し、さらなる市場拡大を目指しています。
ブロードコムのカスタムAIチップ市場での収益機会
投資銀行の予測では、カスタムAIチップ市場におけるブロードコムの売上の機会は200億ドル〜300億ドルに達するとされています。さらに、この市場は今後年間20%のペースで成長すると見られています。
主要顧客には、メタ・プラットフォームズ（META）やアルファベット（GOOGL）といった大手企業が名を連ねています。メタは、AIインフラ強化のためにブロードコムのカスタムチップを導入し、AIモデルのトレーニングに活用しています。また、アルファベットはデータセンター内のAI処理能力を高めるためにブロードコムのASICを採用しています。これらの企業は、ブロードコムのカスタムAIチップを利用して高度なAI機能を実現しています。
また、ロイターによると、OpenAIでさえもブロードコムの協力を得て社内チップの構築を検討しているとのことです。このような顧客基盤が、ブロードコムの将来的な売上成長を後押ししています。
ネットワーク事業がAIデータセンター需要拡大で急成長
ブロードコムの成長を支えているのは、カスタムチップだけではありません。AI技術の進化に伴い、高速接続が求められるAIデータセンターの展開が加速しており、ブロードコムのネットワーク事業も大きな恩恵を受けています。ブロードコムのネットワーク技術は、高いパフォーマンスと低遅延を実現することで、AIワークロードに適したインフラを提供しています。
第3四半期のネットワーク事業売上は、主にハイパースケールクラウドサービスプロバイダーによるAIクラスターの導入拡大により、前年同期比43%増という成果を挙げました。この分野の需要がさらに拡大することで、ブロードコムの成長は加速すると見込まれています。特に、AIデータセンターの拡大に伴い、ネットワーク事業は今後も持続的な成長が期待されています。
ブロードコムの売上成長予測：年間20%のペースで拡大
専門家の分析によると、ブロードコムの売上は今後5年間で年間20%のペースで成長すると予測されています。現在、ブロードコムの時価総額は7700億ドルに達しており、同社はすでに世界第11位の企業となっています。この規模は、競合企業であるインテル（INTC）やクアルコム（QCOM）と比較しても非常に高く、ブロードコムの市場における強固な地位を示しています。
ブロードコムへの投資が注目される理由
ブロードコムの成功を支える要因は以下の通りです：
- AI技術の需要拡大：AI市場全体が急成長している中、カスタムAIチップやネットワーク機器への需要が急増しています。例えば、2023年にはAI関連機器の世界市場が前年比40%成長したと報告されています。
- 市場シェアの支配的地位：カスタムチップ市場での圧倒的なシェアを背景に、ブロードコムは持続的な成長が期待されています。このシェアの高さは、競合他社との差別化ポイントとなっています。
- 主要顧客との強固な関係：メタ・プラットフォームズ、アルファベット、OpenAIといったテックジャイアントが同社の安定的な収益源となっています。これらの企業との長期的なパートナーシップは、ブロードコムの売上の安定性を支えています。
- データセンター需要の拡大：AIデータセンターの急速な展開がネットワーク事業をさらに成長させています。AIモデルのトレーニングと実行には大規模なデータセンターインフラが必要であり、これがブロードコムのネットワーク機器の需要を押し上げています。
まとめ：ブロードコムは未来の投資先として有望
ブロードコムは、AIチップ市場とネットワーク事業の両面で堅調な成長を見せています。その売上成長率や市場シェアの高さを考えると、長期的な成長を見据えたポートフォリオに加える価値がある企業といえます。AI市場の拡大に伴うブロードコムの売上増加は確実視されており、AI時代の成長を取り込むための有力な選択肢として多くの投資家から注目されています。
ただし、AI技術の進化の不確実性、競合企業による技術革新、そして市場需要の変動によるリスクも存在するため、投資判断の際にはこれらのリスクも考慮することが重要です。
＊過去記事 ブロードコム AVGO