米国で第3位の規模を誇る公的年金であるニューヨーク州共通退職年金基金は、第3四半期に主要ハイテク株のポートフォリオに大きな変更を加えました。本記事では、同基金が行った投資変更とその影響について詳しく解説します。
ニューヨーク州共通退職年金基金の投資変更
ニューヨーク州共通退職年金基金(NYSTRS)は、ニューヨーク州の公務員を対象とする退職年金制度で、2,677億ドルの資産を管理しています。Pensions & Investments誌によれば、NYSTRSは米国で3番目に大きな公的年金であり、トーマス・P・ディナポリ監査官が唯一の受託者として指揮を執っています。同氏の事務所は今回の投資変更に関するコメントを控えました。
第3四半期、NYSTRSは主要なハイテク株であるパランティア・テクノロジーズ(PLTR)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)の株式を一部売却し、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)を買い増しました。この投資変更により、ハイテク分野での資産配分が変化しています。
パランティアの売却
パランティアはデータ分析に特化した企業で、9月にS&P 500指数に組み込まれたことにより株価が上昇しました。今年最初の9か月間で株価は116%も上昇し、S&P 500の21%の上昇を大きく上回っています。しかし、第4四半期に入ってからはS&P 500が0.5%下落する中、パランティアは13%上昇しました。
NYSTRSは第3四半期にパランティア株を231,600株売却し、保有株数を110万株に減少させました。なお、共同創業者のピーター・ティール氏も9月と10月に計10億ドル以上の株式を売却しています。
アップルの一部売却
アップルは、2024年の9か月間で株価が21%上昇しましたが、第4四半期に入ってからは4.3%下落しています。NYSTRSは第3四半期にアップル株を150万株売却し、保有株数を1,960万株に削減しました。
アップルのCEOであるティム・クック氏も一部株式を売却しており、最近導入されたAI技術「Apple Intelligence」が注目されています。消費者がこの技術の利点を享受するためには新しいiPhoneの購入が必要であり、売上への影響が予想されます。
エヌビディアの売却
エヌビディアはAI技術のリーダー企業として、2024年の最初の9か月間で株価が145%上昇し、第4四半期でも11%の上昇を見せました。同社は8月末に好調な第2四半期業績を発表し、CEOのジェンスン・フアン氏も一部株式を売却しました。
NYSTRSは第3四半期にエヌビディア株を310万株売却し、保有株数を3,050万株に減少させました。AI分野の需要が高まる中、エヌビディアの株価上昇は今後も注目されます。
AMDの追加購入
NYSTRSは第3四半期にAMD株を102,505株追加購入し、保有株数を240万株に増加させました。AMDの株価は2024年の最初の9か月間で11%上昇しましたが、第4四半期に入ってからは13%下落しています。先週、AMDは市場予測に届かない業績見通しを発表し、期待外れの結果となりました。
AMDはAI分野でエヌビディアの競争相手とされていますが、現状では競争力に欠けるとの見方もあります。しかし、AIチップ市場での成長が期待されており、NYSTRSの買い増しはその潜在的な成長を見込んでのものと思われます。
まとめ
今回のNYSTRSの投資変更は、ハイテク企業の株価変動に対応しながらポートフォリオを再調整するものでした。特にパランティア、エヌビディア、アップルの株式を一部売却し、AMDを買い増すという選択は、AIおよびデータ分析技術の急成長を踏まえた戦略と考えられます。この投資変更は、ハイテク株に対する年金基金の評価を示すものであり、投資家にとっても興味深い動きです。