クアルコムの株価に陰り:アップルの独自モデム開発とPC需要の低迷が重荷に

  • 2024年10月9日
  • 2024年10月9日
  • BS余話

クアルコム(QCOM)の株価は、アップル(AAPL)が独自のモデムを開発するのではないかという懸念から、下落しています。この動きは、キーバンクのアナリスト、ジョン・ヴィン氏によるクアルコム株の格下げを受けたものです。ヴィン氏はクアルコムの格付けを「オーバーウェイト」から「セクターウェイト」に引き下げ、目標株価の設定を見送りました。

アップルのモデム開発がクアルコムに与える影響

クアルコムは、スマートフォンやPC向けにワイヤレス技術を提供する大手企業です。現在、アップル向けにiPhoneで使用されるモデムチップを供給しており、2024年から2026年に発売されるiPhoneにも同社のモデムを提供する契約を結んでいます。しかし、アップルが独自にモデムを開発するという報道が浮上しており、これがクアルコムにとってリスクとなっています。

ヴィン氏は、「アップルが今後数年で自社製モデムの生産を段階的に拡大する見込みがある」と述べ、これがクアルコムの業績に打撃を与える可能性が高いと警鐘を鳴らしています。実際、クアルコムの売上の一部はアップルやサムスンからのものであり、これら2社は同社の連結売上の10%以上を占めています。

クアルコムのEPSに与える影響

ヴィン氏は、アップルが独自モデムを本格導入した場合、クアルコムの一株当たり利益(EPS)に1.55ドル〜1.65ドルの逆風が吹くと予想しています。この見通しは、同社が他市場での成長を目指している中で、携帯電話市場でのシェア低下が直面する主要な課題であることを示唆しています。

他のアナリストも同様の懸念を表明しています。ウルフリサーのアナリスト、クリス・カソ氏は、2025年に発売予定のiPhone 17でクアルコムのアップルからの売上が35%減少し、さらに2026年のiPhone 18で35%減少するとの見通しを発表しました。

PC市場の停滞とクアルコムの挑戦

クアルコムは、携帯電話以外にもPCや自動車向けの技術開発に注力していますが、現在のところPC市場の需要回復は見込まれていません。AIを搭載した次世代PCの需要が期待されているものの、インフレや高金利が消費者の購買意欲を押し下げ、需要回復の兆しは見えていないのが現状です。

ヴィン氏は、クアルコムのAI技術が市場で評価されるのはもう少し時間がかかるとしつつも、現段階ではその恩恵を受けるにはまだ不十分であると指摘しています。

クアルコム株のパフォーマンスとS&P500との比較

クアルコムの株価は2024年に15%上昇していますが、S&P 500種指数の20%上昇と比べると伸び悩んでいます。10月8日の取引ではクアルコム株は0.36%下落しました。

今後の展望

クアルコムは引き続き、アップルやPC市場に依存している部分が大きく、アップルの独自モデム開発が現実のものとなれば、クアルコムの業績に大きな影響を与えることは避けられません。一方で、PC市場の需要回復やAI技術の普及がどの程度進むかによっても、同社の今後の成長が左右されそうです。

*過去記事「クアルコム、インテル買収に向けた動きに対する懐疑的な見解

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