2011年12月、IBM(IBM)は一時的にマイクロソフト(MSFT)を時価総額で上回りました。当時、両社の時価総額は2,100億ドル強で、モバイルとクラウド技術への激変に苦しんでいました。20年以上を経た現在、両社の時価総額はIBM1713億ドル、マイクロソフト3兆002億ドルと大きく開いてしまいました。この記事では、IBMが行った挑戦と、CEOアービンド・クリシュナ氏の下で取り組んでいる抜本的な改革について掘り下げます。
IBMの挑戦とクリシュナ氏の改革
IBMはオンプレミスのソフトウェア、ハードウェア、ITサービスに苦戦し、企業顧客がクラウドベースのサービスへと移行する中で、弱体化した事業部門の整理により年間売上が減少しました。これに対し、マイクロソフトはAzureクラウドインフラストラクチャプラットフォームの拡大や、デスクトップソフトウェアをクラウドベースのサービスやモバイルアプリに転換することで、これらの挑戦に対応しました。
アービンド・クリシュナCEOは、IBMの再建に向けた数多くの改革を行い、特に2021年11月には低成長インフラサービス部門をキンドリルとして売却しました。この戦略は、IBMにとってハイブリッドクラウドと人工知能(AI)サービスの拡大に焦点を当てる機会を提供しました。
IBMの戦略: ハイブリッドクラウドとAI
IBMの現在の戦略は、2019年に340億ドルで買収したレッドハットを通じて、ハイブリッドクラウドとAIサービスを提供することです。レッドハットは、幅広いプライベートおよびパブリック・クラウドコンピューティング・プラットフォームと汎用的に互換性のあるオープンソースソフトウェアを開発しています。その柔軟なミックス・アンド・マッチ・アプローチによって、IBMは独自のニッチな市場を切り開き、アマゾン、マイクロソフト、グーグルと直接競合することなく、クラウドとAI市場の恒常的な拡大から利益を得ることができます。
クリシュナCEOは、IBMをソフトウェア、コンサルティング、インフラストラクチャーの3つのセグメントに再編し、2022年から2024年にかけて「一桁台半ば」の売上成長を実現するという目標を設定し、同社の支出を合理化し、今後数年間で数千人の人間の従業員を独自のAIツールに置き換える計画を立てました。
IBMの将来性:売上の増加と高配当を維持
IBMの売上高は2022年に6%、2023年に2%増加し、アナリストは2024年に3%の成長を見込んでいます。調整後EPSは2022年に15%、2023年に5%増加し、2024年には5%増加すると予想されています。
これらの成長率は、IBMの再建戦略が功を奏し、再び信頼できる優良ハイテク株に変貌しつつあることを示しています。また、2023年にはフリー・キャッシュ・フロー(FCF)の54%しか配当に回していないため、3.6%という現在の配当利回りも容易に継続することができると予想されます。こうした魅力的な資質が、IBM株に強気派を呼び戻しました。IBM株は過去1年で30%以上上昇しましたが、それでも将来利益の18倍と割安に思えます。
結論: IBMの長期投資価値
IBMがすぐにマイクロソフトやアマゾンといった企業に追いつくことはないかもしれませんが、それでも堅実な長期投資としての価値はあります。IBMの戦略と改革が続けば、株価は今後10年間で大きく上昇する可能性があります。これにより、IBMが再び信頼できるハイテク株としての地位を確立し、投資家にとって魅力的な選択肢となる可能性は高いと予想されます。
*過去記事はこちら IBM