アップスタート・ホールディングス(UPST)は6月30日をもって終了した第2四半期決算を8月8日に発表しました。その内容ついてはこちらでお伝えしたとおりですが、改めて振り返ってみましょう。
厳しい環境での業績
第2四半期の売上は1億3600万ドルで、前年同期比で40%減少しました。これは2023年第1四半期の67%の減少よりは良いものの、投資家にとっては期待外れでした。事業は2800万ドルの純損失を計上し、市場はこの結果に非常に失望して、8月9日の市場の終値は34.24%安の34.03ドルでした。
業績の低迷は続くと見られています。現在の四半期の売上は1億4000万ドルと予測されており、2022年第3四半期から11%の減少が予想されています。
企業の貸出パートナーは、第2四半期中に10万9000件あまりのローンを発行し、その総額は12億ドルでした。しかし、この金額は前年同期比で64%も減少しています。ただし、金利が急速に上昇しているため、借り手からのローンの需要が大きなプレッシャーを受けているのは当然のことと言えるでしょう。
最近、インフレが沈静化した兆候が見えることは楽観的に捉える材料かもしれません。これにより、FRBが近い将来に金利を引き下げる可能性があり、これが経済やクレジット市場を活性化する要因となるかもしれません。
厳しさを増す財務状況
アップスタートの潜在能力を否定するのは難しいことです。。同社のビジネスは人工知能を基盤として構築されており、テクノロジーの現実的なユースケースとなっています。アップスタートは、同社のモデルがより多くのローンを承認し、デフォルトリスクをより適切に管理できると主張しています。
経営陣は、個人ローン、自動車ローン、住宅ローン、中小企業ローンといった同社が獲得をめざす市場規模が非常に大きいことを強調しており、投資家がその構想に賛同して期待するのは理解できることです。
しかし、アップスタートの現在の財務状況はテクノロジー・ビジネスというよりは、伝統的な金融サービス・プロバイダーに近いことが証明されています。今年に入り、売上の伸びは消えて、損失も膨らんでおり、この事業が非常に循環的なものであることを示しています。
また、信用市場が干上がったことで、アップスタートはより多くのローンを自社のバランスシートに残すことを余儀なくされ、本来なら第三者の投資家に転嫁されるべき信用リスクが高まっています。
6月30日現在、アップスタートの帳簿には8億3800万ドルのローンがあります。この数字は2022年末から減少しているものの、1年前の6億2400万ドルからは増加しています。つまり、アップスタートはシステムが承認したローンを以前ほど簡単にオフロードできていない状態になっています。
まとめ
株価売上高倍率は6.8倍と、アップスタートの過去の平均バリュエーションを大幅に下回っていますが、事業の成長性よりもリスクの方が大きくなっているのが現時点の客観的な情勢です。しかし、長期的な展望や成長の可能性を考えると、投資のチャンスを狙っている投資家にとっては注目の銘柄かもしれません。
*過去記事はこちら アップスタート UPST