新しい半導体でサーバー市場への復帰を目指すクアルコム

クアルコム(QCOM)がサーバー・プロセッサー市場に再挑戦していることが、同社の計画に詳しい関係者の話で分かったとブルームバーグが報じています。

この関係者によれば、アマゾン・ドットコム(AMZN)のAWS事業がクアルコムの製品を検討することに同意しているとのことです。

クアルコムはブロードコム(AVGO)による敵対的買収をかわした後、コスト削減と投資家への配慮に努めていたため4年前にサーバー市場への進出を断念していました。

その後CEOに就任したクリスティアーノ・アモン氏は、クアルコムをスマートフォン用チップのトップメーカーだけでなく、より幅広い半導体のプロバイダーへと変貌させようとしており、今回の計画もその一環と思われます。

現在のクアルコムが4年前と異なるのは、2021年に約14億ドルで半導体スタートアップのヌビアを買収していることです。アモンCEOはヌビアの製品が、クアルコムのスマートフォンやパソコン向けのハイエンド製品を活性化するのに役立つと述べていますが、同社はサーバー業界向けの技術を提供する企業として設立された経緯があり、サーバー市場進出で活用できるとみられます。

サーバー・プロセッサーの業界はここ数年で劇的に変化しています。アマゾンはサーバー用の自社製プロセッサを開発しましたが、他のベンダーからチップを購入することをやめてはいません。また、Ampere Computing LLCのような新興企業も、マイクロソフト(MSFT)などの顧客との契約を獲得して進出してきています。

競争は激しくなっていますが、そんななかでも進出に成功することができれば大きな果実をクアルコムにもたらすことになります。同社の携帯電話用チップは通常、数十ドルの価格で販売されていますが、最高級のサーバー用プロセッサは、1チップあたり1万ドル以上の価格です。

調査会社IDCによると、クラウド・コンピューティング・インフラへの支出は2021年は合計で739億ドルとなり、2020年から8.8%増加しています。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マンディープ・シン氏によると、データセンター・プロセッサーだけでも年間280億ドルの売上があるそうで「クアルコムがアーム・サーバー市場に再参入することで、半導体の明るい話題の1つに手を広げることになる」と同氏は8月18日付けのメモで述べています。

巨大なクラウドデータセンターの所有者は、そのサーバーにインテル(INTC)の半導体技術を長年利用してきました。しかし、クアルコムの携帯電話用チップの主要パートナーであるアームの設計を採用したプロセッサーを採用する傾向が最近強まっています。

アームの設計は携帯電話ではすでに主流となっており、電池の消耗が少ないことが評価されています。サーバーファームが普及し、膨大な量の電力を消費するようになって、現在においてはデータセンターの世界でも電力消費はより差し迫った問題となっており、企業はより効率的なチップを求めています。

アマゾンは、アームの設計をベースにした独自のチップを製造することでこのニーズに応えていますが、現在もインテル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、エヌビディア(NVDA)のチップも使用しており、クアルコムはこれらのサプライヤーの中に食い込もうとしています。

クアルコムは2017年、「Centriq 2400」と呼ばれるアーム・ベースのサーバーチップの販売を開始していました。製造はサムスン電子に任せたこの製品は、エネルギー効率とコストでインテルのXeonプロセッサーを上回るとアピールし、同年11月に行われたサーバーチップの公開発表会では、マイクロソフトなどの潜在顧客が参加し、この製品に興味を示していました。その後1年も経たないうちに上記のような理由でこのプロジェクトは中止となっています。

クアルコムの現在の販売構成は携帯電話向けが50%、ライセンス供与が19%、IoTが15%、ラジオ・チップが13%となっており、単価の高いサーバー向けが加わることで、携帯電話に頼りがちな構成を変えることができます。

*過去記事「クアルコムを割安なトップ銘柄としてJPモルガンが推奨

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