アップスタート 第2四半期決算説明電話会議で明らかになった「貸し手」に回る意味

8月8日に行われたアップスタート・ホールディングス(UPST)の決算発表後の電話会議の議事録にざっと目を通してみました。アナリストを集めて行われたこの日の電話会議の白眉は、やはり「貸し手にならないとい」うこれまでの方針を変えることをアップスタートの共同創業者兼CEOのデイブ・ジルーアード氏が表明したことです。

要旨は「アップスタート 第2四半期決算を発表、基本方針の一時的な変更が明らかに」でお伝えしたものと重複しますが、より細かいニュアンスが伝わってきますので、会議における発言の骨子をご紹介させていただきます。

融資パートナーの現状について

アップスタートの融資パートナーである銀行や信用組合の対応がここ数ヶ月変わってきたことをデイブ・ジルーアードCEOはこんなふうに表現しています。

「貸し手と機関投資家は、私たちの予想を上回る速さで、突然の反応を示しました。当社のパートナーである銀行が、一貫して好調なクレジットパフォーマンス、つまり四半期ごとのコホートで計画以上のパフォーマンスを見せているポートフォリオがあるにもかかわらず、そのうちのいくつかは経済の先行きに対する懸念から、オリジネーションを一時停止したり縮小したりしているのです。」

サンジェイ・ダッタCFOは融資パートナーの現状について、「一部の銀行は無担保融資へのエクスポージャーを全体的に制限する方向で動いています。過去数年の穏やかなサイクルの中で大きな超過収益を得てきた投資家は、現在、経済の状況を不安視し、景気刺激策の終了によって最も影響を受けた裕福でない借り手の将来的な見通しについて懸念しています。当社の現在のアンダーライティングはかなり保守的で、歴史的な高リターンが期待できるにもかかわらず、投資家はこの争いに再び参加することを躊躇しています」と表現しています。

一貫して投資してくれるパートナーの必要性

こうした融資パートナーの豹変に直面して、ジルーアードCEOは、「一貫して投資してくれるパートナーから多額のコミットメント資本を導入する必要がある」との結論に達したそうです。

ダッタCFOはその狙いについて、「私たちは、長期的な成果を視野に入れ、将来的に予測可能な利回りへのアクセスと引き換えに、サイクルを通して投資することに抵抗のない投資家とのパートナーシップを通じて、当社のプラットフォームで展開されるフォワードコミットメントの資本の割合を大幅に増加させることを意図しています。」と説明しています。

アップスタートが貸し手になる意味

しかし、一貫して投資してくれるパートナーを見つけ出すためにはそれなりの時間と過程が必要になるため、「アップスタートが銀行になることは意味がないと引き続き考えていますが、このコミットメント資金調達への過渡的な橋渡しとして、時には自社のバランスシートを活用することも意味があると判断しました」とジルーアードCEOは述べ、暫定的に貸し手となることがあることを明らかにしました。

この点についてダッタCFOは、「デイブが言ったように、これは一夜にして実現するものではありません。この過渡期に事業を安定させ、資金調達市場にモデルに対する自信を示すために必要であると判断した場合、暫定的に、私たちはバランスシートの運用をより積極的に行う用意があります」と述べています。
ただし、「これは永続的な戦略の変更を意味するものではなく、大規模なバランスシートの運営や銀行となることは当社の長期的な利益にはならないという見解を引き続き維持していることにご留意ください」とも同氏は述べています。

あくまでもマーケットプレイス事業者

こうして「バランシートを使って」貸し手になる場合があったとしても、「私たちはマーケットプレイス事業者であり、貸し手や投資家と消費者、借り手を結びつけるという長期的な視点を持っている」ことが自分たちの本来の姿であることをジルーアードCEOは強調しています。

ただ、そうは言っても自分達の手の届かないところで貸し手や投資家が判断を下す現在のような時期では、「バランスシートを使ってはいけないというリトマス試験紙のようなものを設けても意味がない」との結論に達したと同氏は述べています。

より大きく、より強いアップスタート構築のためのステップ

ローンを貸すかどうかの判断を融資パートナーに委ねるだけでは、歴史が浅く、そのAIアルゴリズムの有効性が実証データで示されていないアップスタートの現状では、その事業構造がうまく機能しないことが今回明らかになりました。

本来であれば、現在のような不安定な経済状況でこそ、「借り手」の信用度をより精緻に正確に見極めることができるアップスタートのAIを使った融資システムがその力をより一層発揮できる場面であるはずです。

自分達のモデルが現在どのように機能しているか、また現在の経済環境にどの程度適合しているかを誰よりもよく理解しており、そして、「大きな利益を生み出すチャンスは、現在、非常に高いと信じている」が故にアップスタートにとって融資パートナーがローンを貸すことをためらう現状は歯がゆいばかりであることが今回の決算説明でも伝わってきます。

そのためにこれまでの方針を変えて、自分達が「貸し手」になって実証する。成功例を示すことで経済環境にかかわらず恒常的に「貸し手」となってくれる第三者を探し出すことができればアップスタートの今後にとっては大きな意味を持つことになります。

ジルーアードCEOは今回の基本方針の変更について「第三者の資本をコミットする場への過渡的なステップ」としながらも、「これは事業構造を改善する大きなチャンスだとも考えています」とも表現し、「これはアップスタートにとって正しいステップ」であり「より大きく、より強いアップスタートを構築するための一部となる」と述べています。

*過去記事はこちら アップスタート UPST

最新情報をチェックしよう!