1日して時価総額の半分以上が吹き飛んだアップスタート(UPST)について、暴落の原因となった二つの懸念について「アップスタート 大暴落を引き起こした2つの懸念」に書きました。
ここでは、今回の決算報告で明らかになったポジティブな側面について書いてみたいと思います。
金利上昇により無担保ローンの需要が減退する可能性はあるものの、自動車ローン市場への参入により、同社の融資額は今後も大幅に増加するものと思われます。アップスタートのプラットフォームは、2022年第1四半期だけで1万1000件以上のオートリファイローンを促し、2021年通年の約2倍の水準となりました。
さらに、アップスタートは中小企業(SMB)向けのローン市場にも参入する準備を整えています。多くの銀行にとって、企業向け融資は消費者向け融資よりも重要性が高く、より多くの金融機関がアップスタートと契約することになると思われます。
また同社は、ほとんどの銀行がオンライン融資申し込みのオプションを提供していないというFDICの調査結果を引用してここに参入の余地があることをアピールしています。アップスタートのプラットフォームは、ほとんどの決定を瞬時に行うため、このオプションを容易に提供することができます。
アップスタートは依然として急成長モードにあります。第1四半期の売上高は3億1000万ドルで、前年同期比156%増となりました。純利益も前年同期比217%の3200万ドルに上昇し、営業費用の162%急増を上回る水準となりました。
また、アップスタートはプラットフォーム上で約46万6000件の融資を促進し、174%増となりました。ただ、コンバージョン率(同社は「ある期間に取引されたローンの数÷(アップスタートが)正当と推定したレート問い合わせの数」と定義)は、前年同期の22%から21%に低下しています。
第2四半期の売上は2億9500万ドルから3億500万ドルで、中間値で55%の成長率になると見込んでいます。第2四半期の純利益は-400万ドルから0ドルと予想されましたが、2022年の純利益予測は発表されませんでした。
アップスタートについて以前から指摘されている懸念についても改善が見られました。それは、同社があまりにも少数の銀行に依存していることです。四半期ごとのSECへの提出書類によると、ニュージャージー州に拠点を置くフィンテック志向の銀行であるクロスリバー・バンク(CRB)がアップスタートの活動のほとんどを占めています。
確かに融資残高に占めるCRBのシェアは52%と不安を抱かせるほど高いものです。しかし、前期のこの数字は56%であり4%シェアが低下しています。また現在、同社のプラットフォームを利用している銀行と信用組合は57であり、前期の42から増加しています。
下方修正しましたが、アップスタートは2022年に12億5000万ドルの売上を計上する見込みで、47%の増となり、急速な成長ペースを維持することになります。さらに、株価が大きく下がったことで、株価収益率(P/S)は3倍強となり、株価が現在の10倍以上であった昨年10月のピーク時のP/Sレシオ56に比べれば、倍率は大きく下がりました。
不況下ではアップスタートは厳しい状況に置かれる可能性が高いということは以前から指摘されていましたが、これほど早いタイミングでその脆さが白日の下に晒されると予想した向きが少なかったことが今回の大暴落を招いたようです。
とは言え、同社のビジネスの将来性や強さを示す上記のようなポジティブな側面があることもまた事実。これほどボラティリティの高い銘柄はリスク許容度の限界を超えていると、今回の暴落で見放す投資家も多いと予想されますが、個人的には、5年先、10年先を見据えてここはじっと我慢のホールドで今後の動向を見守りたいと考えています。
*過去記事はこちら アップスタート UPST