✨ この記事でわかること
- マイクロン株の予想PERが3.8倍まで低下し、好業績でも株価が売られている背景
- 2030年までの長期契約と約320億ドルの現金預託金が、収益の安定性に持つ意味
- 最大1,000億ドル規模の自社株買いの可能性と、2028年のメモリー価格下落リスク
マイクロン・テクノロジー(MU)の株価が、異例の割安水準にあります。
2026年6月の高値から約50%下落し、今後12カ月の予想利益に基づくPERはわずか3.8倍となりました。
11月6日付のマーケットウォッチは、この割安評価を巡って投資家の意見が大きく分かれていると報じています。
一方、同日付のバロンズは、マイクロンの長期契約と巨額の自社株買い余地に注目しています。特に重要なのが、2030年までの予想売上高の35%超をカバーする契約と、約320億ドルの現金預託金です。
現在の株価は将来の大幅な利益減少を警戒しているようにも見えます。しかし、長期契約によって従来のメモリー業界の景気循環が緩和されるなら、市場の評価が変わる可能性があります。
予想PER3.8倍は本当に割安なのか
マイクロン株は11月5日の通常取引で約17%下落しました。翌6日には5.12%反発しましたが、前日の急落を取り戻すには至りませんでした。
バロンズによると、10月初旬には2027年度予想利益に対するPERが6.4倍でしたが、11月5日の終値では3.7倍まで低下しました。
これは、今後12カ月の予想利益を基準とするPER3.8倍とは計算期間が異なります。ただし、いずれも市場がマイクロンの将来利益を非常に低く評価していることを示しています。
通常、利益が急拡大している企業には高い株価評価が与えられます。しかし、メモリー企業では事情が異なります。
DRAMやNAND型フラッシュメモリーは、供給不足になると販売価格と利益率が急上昇します。一方、設備投資が増えて供給過剰になると、利益が急減することがあります。
そのため、利益がピークに近い時期には、PERが極端に低くなる傾向があります。
市場が警戒しているのは、現在の好業績そのものではなく、その利益水準がどれだけ続くかという問題です。
売上高542億ドル、過去最高益を記録
マイクロンが9月30日に発表した2026年度第4四半期決算は、非常に力強い内容でした。
| 指標 | 2026年度第4四半期 |
|---|---|
| 売上高 | 542.29億ドル |
| 前年同期売上高 | 113.15億ドル |
| 調整後EPS | 33.42ドル |
| 調整後粗利益率 | 87.0% |
| 営業キャッシュフロー | 439.7億ドル |
| 調整後フリーキャッシュフロー | 332.0億ドル |
売上高は前年同期の約4.8倍に拡大しました。
調整後粗利益率は前年同期の45.7%から87.0%へ上昇しています。メモリー価格の上昇と高付加価値製品の販売拡大が、収益性を大きく押し上げました。
また、クラウドメモリー事業と中核データセンター事業の売上高は合計342.85億ドルとなり、全社売上高の約63%を占めています。
AIデータセンター需要がマイクロンの収益を支える中心的な事業になっていることがわかります。
2030年までの長期契約が最大の強気材料に
今回のバロンズの記事で特に注目したいのが、長期契約の存在です。
バロンズによると、マイクロンは2030年までの予想売上高の35%超に相当する長期のテイク・オア・ペイ契約を締結しています。
テイク・オア・ペイ契約とは、顧客が契約数量を引き取らない場合でも、一定の支払い義務を負う仕組みです。
通常、メモリーメーカーは市況悪化によって販売価格や出荷量が大幅に変動するリスクを抱えています。
しかし、長期契約によって一定の販売数量や収入が確保されれば、需要減速時の業績変動を抑えられる可能性があります。
さらに、バロンズは契約に関連する現金預託金が約320億ドルに達すると報じています。
これは顧客側に契約を履行する経済的な動機が存在することを示す材料です。
ただし、320億ドルがすべてマイクロンの自由に使える現金という意味ではありません。また、契約による支払い義務があっても、将来の売上高や利益率が完全に保証されるわけではありません。
それでも、こうした契約の存在は、従来のメモリー業界とは異なる収益構造を形成する可能性があります。
長期契約でもAI需要急減のリスクは消えない
長期契約については、弱気派から慎重な見方も出ています。
バロンズは、過去の半導体不足時に締結された類似契約が、その後の市況悪化によって再交渉された事例に言及しています。
契約上の支払い義務が存在していても、企業が大口顧客との長期的な関係を維持するため、条件変更に応じる場合があります。
現在のAIデータセンター投資についても、政治環境の変化が新たな不確実性となっています。
米中間選挙後、データセンター建設に対する規制強化への警戒感が広がりました。建設許認可や電力供給の制約によって計画が遅れれば、AIサーバー向けメモリー需要にも影響する可能性があります。
関連記事:マイクロン11%急落、サンディスク15%安!AI半導体株が一斉売り、データセンター投資に何が起きたのか
重要なのは、現在の需要が急減したことが確認されたわけではない点です。
市場は、将来の設備投資減速が予想より早く発生するリスクを株価に織り込もうとしていると考えられます。
最大1,000億ドルの自社株買いが株価を支える可能性
バロンズが取り上げたもう一つの注目材料が、自社株買いです。
同誌によると、マイクロンは12月9日以降、大規模な自社株買いを開始できるようになります。
バロンズは以前の分析で、2027年度中に最大1,000億ドル規模の株式を買い戻せる可能性を試算しています。
この金額は、同誌が参照した時点の時価総額の10%超に相当します。
自社株買いは発行済み株式数を減少させるため、利益が変わらなくても1株当たり利益を押し上げる効果があります。また、大規模な買い付けが実施されれば、株式需給を改善する可能性もあります。
ただし、1,000億ドルはバロンズによる試算であり、マイクロンが正式に発表した買い戻し予定額ではありません。
実際の買い戻し規模は、取締役会の承認、資金需要、設備投資計画、株価などによって変わります。
投資家は12月9日以降の動きに加え、会社が正式に発表する自社株買いの枠と実施状況を確認する必要があります。
UBSは2028年のメモリー価格下落が織り込み済みと分析
メモリー株の割安評価については、韓国の競合企業も重要な比較対象になります。
バロンズによると、UBSのアナリスト、ニコラ・ゴドワ氏は、SKハイニックスとサムスン電子の株価評価には、2028年のメモリー価格下落がすでに織り込まれているとの見方を示しています。
同氏は両社の株価について、今後12カ月の上昇余地が160%、下落リスクが30%という強気のリスク・リターン評価を提示しています。
これはUBSの分析であり、将来の株価を保証するものではありません。また、160%という上昇余地はマイクロン株に対する直接の予想ではありません。
それでも、競合するメモリー大手の評価が低いことは、マイクロンのPERを考えるうえでも参考になります。
市場がすでに将来のメモリー価格下落を十分に織り込んでいるなら、実際の業績が想定ほど悪化しなかった場合、株価評価が修正される可能性があります。
逆に、想定を超える供給過剰が発生すれば、現在の低PERでも下落余地が残ることになります。
2027年度第1四半期の業績が重要な判断材料に
マイクロンは2027年度第1四半期について、引き続き強い業績を予想しています。
| 指標 | 会社予想 |
|---|---|
| 売上高 | 615億ドル±15億ドル |
| 調整後粗利益率 | 約86.25% |
| 調整後EPS | 38.15ドル±1.00ドル |
売上高の中心値は前四半期から約13.4%増加する見通しです。
調整後EPSも前四半期の33.42ドルから約14.2%増加する計算になります。
これは9月30日時点の会社予想であり、実績ではありません。
今後の投資家にとって重要なのは、こうした好業績が維持されるかに加え、長期契約の実効性が確認できるかどうかです。
特に、DRAMやNANDの販売価格、HBMの需要動向、設備投資の増加ペース、フリーキャッシュフローの推移が注目されます。
また、2028年に向けてメモリー価格が下落し始める兆候があるかも、株価評価に大きく影響します。
まとめ:割安評価を変える鍵は長期契約の実効性
マイクロン株の予想PER3.8倍という水準は、現在の業績だけを見ると極めて低い評価です。
2026年度の過去最高益、AIデータセンター需要の拡大、2030年までの長期契約、巨額の自社株買い余地は、株価の見直しにつながる可能性がある材料です。
一方、AI設備投資が急減した場合には、長期契約が再交渉され、メモリー価格と利益率が想定以上に下落するリスクがあります。
このため、単純にPERが低いという理由だけで割安と判断するのは適切ではありません。
今回の株価下落で最も重要なのは、マイクロンが従来の景気循環型メモリーメーカーから、長期契約とAI需要を背景に安定した高収益を生み出す企業へ変化しているかという点です。
今後の決算で高い利益率が維持され、長期契約の実効性が確認されれば、現在の株価評価を見直す材料になります。
情報ソース
企業公式資料・一次情報
報道・市場情報
- MarketWatch:Micron’s stock is dirt cheap — and that’s igniting a fierce online debate
- Barron’s:Why Micron’s Stock Valuation Now Looks Ridiculous(2026年11月6日)
- Barron’s:Micron Technology Stock Buybacks
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。