ウエスタンデジタル、売上高55%増でも株価急落!好決算が評価されない理由

✨ この記事でわかること

  • ウエスタンデジタルの2027年度第1四半期決算は、売上高55%増、調整後EPS161%増と市場予想を大幅に上回りました。
  • 次四半期の売上高見通しも市場予想を超えましたが、株価は通常取引で6.4%下落し、決算発表後の時間外取引でも下落しました。
  • AIデータセンター向けHDDの需要拡大が続く一方、東芝の増産計画や製造コストの上昇が今後の収益性を左右します。

米国のデータストレージ大手、ウエスタンデジタル(WDC)は2026年10月22日、2027会計年度第1四半期(2026年10月2日終了)の決算を発表しました。

売上高は前年同期比55%増加し、調整後1株利益(EPS)は161%増加しました。さらに、次四半期の業績見通しも市場予想を大きく上回る内容となりました。

しかし、株価は決算発表前の通常取引で急落し、発表後の時間外取引でも下落しました。

業績がこれほど好調にもかかわらず、投資家が株式を売却しているのはなぜでしょうか。今回の決算は、AI関連銘柄に対する市場の評価が変化していることを示す興味深い事例となっています。

売上高55%増、調整後EPS161%増の好決算

今回の決算では、売上高、利益ともに市場予想を上回りました。

項目実績前年同期比
売上高43億8,100万ドル+55%
GAAP純利益(普通株主帰属、希薄化後)17億7,900万ドル+54%
GAAP EPS4.63ドル+51%
調整後EPS4.64ドル+161%
GAAP粗利益率57.8%+14.3ポイント
調整後粗利益率58.1%+14.2ポイント
調整後営業利益率49.1%+18.7ポイント

ファクトセットによる市場予想は、売上高約41億ドル、調整後EPS4.11ドルでした。

実際の売上高は予想を約7%上回り、調整後EPSは約13%上回りました。

特に注目したいのは、調整後粗利益率が前年同期の43.9%から58.1%へ改善したことです。

さらに前四半期の54.4%からも3.7ポイント上昇しました。単に販売量が増加しているだけでなく、製品価格や販売構成の改善によって、収益力が高まっていることを示しています。

AIデータセンター向けHDDの需要が成長を牽引

ウエスタンデジタルの業績拡大を支えているのは、AIデータセンター向けの大容量ハードディスクドライブ(HDD)です。

AIモデルの学習や運用では、大量のデータを保存する必要があります。高速処理には半導体メモリーやSSDが利用される一方、大量のデータを比較的低コストで長期間保存する用途では、HDDが重要な役割を担っています。

会社側によると、今回の業績拡大は大容量ストレージ需要の増加と販売価格の改善によるものです。

最高財務責任者(CFO)のクリス・セネサエル氏は、データ保存容量を示すエクサバイトベースの需要増加と価格改善が、好業績につながったと説明しています。

AIの普及によって増えるのは、計算処理の需要だけではありません。学習用データ、生成データ、バックアップなどを保存するストレージ需要も拡大します。

こうした需要を背景に、ウエスタンデジタルは販売価格の改善と利益率の上昇という好循環を実現しています。

次四半期も強気の見通し、売上高は51億ドルへ

今回の決算では、2027会計年度第2四半期の業績見通しも注目されました。

項目会社予想
売上高50億〜52億ドル
調整後粗利益率60〜61%
調整後EPS5.60〜6.00ドル
調整後営業費用4億〜4億1,000万ドル

売上高予想の中央値は51億ドルで、市場予想の約46億ドルを約11%上回っています。

会社側は売上高が前年同期比66〜72%増加すると予想しており、成長率は今回の55%からさらに加速する見通しです。

また、調整後粗利益率の予想中央値は60.5%です。今回の58.1%から2.4ポイントの改善を見込んでいます。

販売数量の増加だけでなく、価格決定力の維持によって利益率をさらに高められるかが重要になります。

営業活動によるキャッシュフローは16億400万ドル、フリーキャッシュフローは13億7,700万ドルでした。利益だけでなく、現金を生み出す力も強まっています。

会社は四半期配当を約17%引き上げ、1株当たり0.175ドルにすると発表しました。

この配当は2026年12月4日時点の株主を対象に、12月17日に支払われる予定です。

好決算でも株価急落、時間外取引でも売りが続く

好調な決算にもかかわらず、10月22日の株価は大幅に下落しました。

10月22日の米国市場では、ウエスタンデジタルの株価は次のように推移しました。時間外取引の数値は、米東部時間午後5時40分時点の報道で確認されたものです。

取引時間帯株価・騰落率
通常取引約-6.4%
通常取引終了後約354.25ドル
時間外取引(午後5時40分時点)338.66ドル(約-4.4%)

6月18日の終値ベースの高値からは、通常取引終了時点ですでに約53%下落していました。

つまり、決算内容そのものが悪いというより、投資家の間でHDD市場の成長持続性に対する疑念が強まっていると考えられます。

また、10月22日はAI関連銘柄全体に売りが広がった日でもありました。個別企業の好業績だけでは、投資家の警戒感を払拭できなかった形です。

東芝の増産計画がHDD市場の需給を変える可能性

市場が警戒している要因の1つが、日本の東芝によるHDD生産能力の拡大です。

東芝が2027年度にAIデータセンター向けHDDの生産能力を約2倍に引き上げる計画が報じられています。この増産計画は、HDD市場の今後の需給環境を考えるうえで重要な材料となっています。

HDD市場では、これまで需要の急増と供給能力の制約によって、メーカーが販売価格を引き上げやすい環境が続いていました。

しかし、東芝の増産が実現すれば、将来的に供給不足が緩和され、価格競争が激しくなる可能性があります。

ウエスタンデジタルのアービング・タンCEOは10月22日の決算説明会で、業界や自社事業の長期的な基礎条件に変化は見られないとの認識を示しました。

また、単純な生産台数の拡大ではなく、より高性能な大容量HDDの開発・供給を重視する方針を説明しました。

これは、価格競争に巻き込まれることを避け、製品の高付加価値化によって収益性を維持する戦略と捉えられます。

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メモリーチップの供給不足も利益率のリスクに

もう1つの懸念材料は、HDDの製造コストです。

HDDには制御用のメモリーチップなどが使用されます。現在、メモリー市場では供給が逼迫しており、部品コストの上昇がストレージメーカーの採算を圧迫する可能性があります。

10月22日の決算説明会に関する報道では、ウエスタンデジタルが記憶容量1テラバイト当たりのコストを前年同期比10%削減することを目指していると伝えられています。

ただし、タンCEOは短期的にはコスト削減の進展が想定より遅れる可能性にも言及しました。

今回の調整後粗利益率58.1%という高水準を維持できるかは、今後の重要な確認事項となります。

需要が伸び続けても、部品価格の上昇や競争激化によって利益率が低下すれば、利益成長は鈍化します。

投資家が次の決算までに注目すべき3つのポイント

今後のウエスタンデジタルを評価するうえでは、次の3点が重要になります。

  1. 調整後粗利益率が会社予想の60〜61%へ改善するか。価格決定力が維持されているかを確認できます。
  2. 東芝の増産がHDDの供給環境にどの程度影響するか。供給能力の拡大が販売価格の下落につながるかが焦点です。
  3. AIデータセンター向けの大容量HDD需要が拡大を続けるか。販売容量と1テラバイト当たりの販売価格の推移が重要になります。

特に、利益率の推移には注意が必要です。

現在の業績には旺盛な需要と価格上昇の両方が寄与しています。今後も両者が維持されれば、利益成長が続く可能性があります。

一方、供給増加によって価格上昇が止まった場合には、増収が続いても利益成長率が低下するリスクがあります。

まとめ:業績の強さと株価の弱さが示すAI関連投資の変化

ウエスタンデジタルの2027会計年度第1四半期決算は、売上高、EPS、利益率、次四半期の業績見通しのいずれも非常に強い内容でした。

それでも株価が下落したことは、市場が現在の好業績よりも、その収益力が将来にわたって維持できるかを重視していることを示唆しています。

AIデータセンターの拡大によって、大容量ストレージ需要が長期的に成長する可能性は十分にあります。

しかし、HDD業界には供給増加によって価格や利益率が変動する景気循環的な特徴もあります。

今後の投資判断では、売上高成長率だけでなく、価格決定力、製造コスト、競争環境の変化を総合的に確認する必要があります。

今回の決算は、AI関連企業の業績が好調であることと、その株式が投資対象として評価されることは、必ずしも同じではないという重要な教訓を示しています。

情報ソース

企業公式資料・一次情報

報道・市場情報

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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