✨ この記事でわかること
- RTXの2026年第3四半期決算は売上高11%増、調整後EPS33%増となり、市場予想を大幅に上回りました。
- 受注残高は過去最高の3,400億ドルに達し、主力の航空機エンジン事業も好調でした。ただし、利益には関税関連の回収益が含まれています。
- 通期の利益とキャッシュフロー見通しを上方修正したものの、一時的な回収益への依存や金利上昇、航空需要への懸念が株価の重荷となっています。
米国の航空宇宙・防衛大手RTX(RTX)が10月20日に発表した2026年第3四半期(7〜9月期)決算は、売上高と利益の両方で市場予想を上回る好内容となりました。
調整後1株利益(EPS)は前年同期比33%増加し、通期の業績見通しも上方修正されました。さらに、民間航空機向けと防衛向けの両事業が好調で、受注残高は過去最高を更新しています。
しかし、決算発表後の株価は一時上昇したものの、通常取引では下落に転じました。
企業の業績が改善しているのに、なぜ株価は素直に反応しないのでしょうか。 今回の決算には、RTXの成長力を評価するうえで重要な数字と、見落とせない注意点が含まれています。
売上高11%増、調整後EPS33%増の好決算
RTXの2026年第3四半期の主要な決算数値は以下のとおりです。
| 項目 | 実績 | 前年同期比・比較 |
|---|---|---|
| 売上高 | 249.65億ドル | +11% |
| GAAP純利益 | 25.83億ドル | +35% |
| GAAP EPS | 1.89ドル | +34% |
| 調整後EPS | 2.26ドル | +33% |
| 調整後EPS市場予想 | 1.78ドル | 予想を約27%上回る |
| 売上高市場予想 | 約241億ドル | 予想を約3.6%上回る |
売上高は前年同期の224.78億ドルから249.65億ドルへ増加しました。買収・売却や為替などの影響を除いたオーガニック売上成長率は12%でした。
特に調整後EPSは、市場予想の1.78ドルを0.48ドル上回っています。
ただし、調整後EPSの2.26ドルには、国際緊急経済権限法(IEEPA)に関連する関税費用の回収によって、0.25ドルの押し上げ効果が含まれています。
この効果を単純に除くと2.01ドルとなり、それでも市場予想を上回ります。一方で、利益成長のすべてが通常の事業活動によるものではない点には注意が必要です。
防衛事業が14%増収、民間航空宇宙事業も好調
今回の決算では、主要3事業すべてが前年同期比で増収となりました。
| 事業部門 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| コリンズ・エアロスペース | 83.82億ドル | +10% |
| プラット・アンド・ホイットニー | 92.31億ドル | +10% |
| レイセオン | 80.31億ドル | +14% |
最も高い成長率を記録したのは、防衛事業を担うレイセオンです。
同部門では、パトリオット防空システム、スタンダード・ミサイル、トマホーク巡航ミサイルなどの需要拡大が売上高を押し上げました。
調整後営業利益も前年同期比32%増加しています。
民間航空宇宙事業でも好調な需要が続いています。コリンズ・エアロスペースでは、民間航空機向け新造機用機器の売上高が23%増加しました。
航空機エンジンを手がけるプラット・アンド・ホイットニーでは、民間航空機向けアフターマーケット売上高が21%増加しました。
特にGTFエンジンの整備・補修需要が成長を牽引しています。
一方、同部門では顧客の破産に関連する3.63億ドルの費用が計上され、GAAPベースの営業利益は前年同期比19%減少しました。
しかし、この一時費用などを調整した営業利益は9.68億ドルとなり、前年同期比29%増加しています。 調整後営業利益率も前年同期の8.9%から10.5%へ改善しました。
これは、GAAPベースの減益だけでは同部門の事業動向を正確に捉えられないことを示しています。
ただし、調整後営業利益にもIEEPA関連の回収益約1.6億ドルが含まれています。この効果を単純に除いても約8.08億ドルとなり、前年同期の7.51億ドルを上回ります。
GTFエンジンの整備需要拡大によって本業の収益力が改善している一方、調整後利益にも一時的な回収益が寄与している点は区別して見る必要があります。
過去最高の受注残高3,400億ドルが示す成長余地
今回の決算で特に注目したいのが、受注残高の拡大です。
RTXの受注残高は過去最高の3,400億ドルに達しました。その内訳は、民間航空宇宙事業が1,760億ドル、防衛事業が1,640億ドルです。
クリス・カリオCEOは、810億ドルを超える新規の民間・防衛関連契約を獲得したことが、受注残高の拡大につながったと説明しています。
この受注残高は、今回の四半期売上高の約13.6倍に相当します。ただし、契約ごとに納入期間が異なるため、すべてが短期間で売上高に転換されるわけではありません。
重要なのは、今後の需要を裏づける大きな事業基盤を確保していることです。
特にミサイルの増産では、受注を実際の生産・納入へ転換する能力が今後の収益拡大を左右します。
関連記事:RTXに229億ドルの巨大契約 トマホーク10倍増産で浮上する「次の防衛株」
通期売上高と利益見通しを上方修正
RTXは2026年通期の業績見通しを引き上げました。
| 項目 | 従来予想 | 新予想 |
|---|---|---|
| 調整後売上高 | 950億〜960億ドル | 970億〜975億ドル |
| 調整後EPS | 7.10〜7.25ドル | 7.65〜7.75ドル |
| フリーキャッシュフロー | 85億〜87.5億ドル | 90億〜92億ドル |
新しい調整後EPS見通しの中央値は7.70ドルで、従来の7.175ドルから約7.3%引き上げられました。
ただし、この7.70ドルにはIEEPA関連の回収益による約0.25ドルの押し上げが含まれています。
フリーキャッシュフロー(FCF)の通期見通しも、中央値ベースで86.25億ドルから91億ドルへ、4.75億ドル引き上げられました。
ここでも注目すべきなのが、上方修正の要因です。
決算説明会でニール・ミッチェルCFOは、FCF見通し引き上げの主な要因が、IEEPA関連の現金回収であると説明しています。
RTXは第3四半期に約3億ドルの現金回収を受けており、第4四半期にも約5,000万ドルの回収を見込んでいます。
つまり、通期FCF見通しの改善にも、一時的な現金収入が相当程度寄与していることになります。
また、第3四半期単独のFCFは21.19億ドルで、前年同期の40.25億ドルから約47%減少しました。
ミッチェルCFOは、IEEPA関連の回収は2026年第4四半期までにおおむね終了する見通しも示しています。
そのため、2027年以降は一時的な回収益がなくなっても、営業活動から十分なキャッシュフローを生み出せるかどうかが重要になります。
好決算でも株価が下落した理由
10月20日の決算発表後、RTX株は米東部時間のプレマーケットで一時196ドル前後まで上昇しました。これは前営業日の終値192.11ドルを約2%上回る水準です。
しかし、通常取引開始後には売りが優勢となりました。この記事の執筆時点である10月20日の米東部時間午後1時58分時点では、株価は191.12ドルとなり、前営業日終値から0.99ドル(0.51%)下落しています。
この株価反応は、RTXに対する市場の慎重な見方を示しています。
バロンズの記事では、防衛関連株に対する投資家の懸念として、金利上昇、インフレ、地政学的な不透明感、政府の防衛契約制度改革の可能性を挙げています。
また、民間航空宇宙事業についても、原油価格の上昇が航空需要を圧迫するリスクが指摘されています。
さらに、新造機向け製品の販売比率が高まると、相対的に利益率の高い整備・補修事業との構成比が変化し、収益性に影響する可能性があります。
同記事によると、RTXの今後12カ月の予想利益に対するPERは約25倍で、3月の約30倍から低下しています。
つまり、業績見通しが改善しても、投資家が支払おうとする株価の倍率が縮小すれば、株価は上昇しにくくなります。
今後の注目点は利益の質と生産能力
RTXの今後を判断するうえでは、特に3つのポイントが重要になります。
まず、関税関連の回収益を除いても、利益成長を維持できるかという点です。今回の調整後EPS成長率33%には一時的な効果が含まれており、2027年以降は通常の事業活動による利益成長がより重要になります。
次に、3,400億ドルの受注残高を着実に売上高と利益へ転換できるかという点です。ミサイルや航空機エンジンの需要が強くても、部品不足や生産能力の制約が解消されなければ、業績への反映が遅れる可能性があります。
最後に、民間航空宇宙事業の利益率と現金創出力です。プラット・アンド・ホイットニーではGTFエンジンの整備需要が収益拡大を支えていますが、今後は一時的な回収益を除いた営業利益率の改善が続くかを確認する必要があります。
さらに、FCFについても2026年の一時的な押し上げ効果がなくなった後、どの程度の現金を安定的に生み出せるかが焦点になります。
関連記事:米国ミサイル生産が2.4倍へ 今注目したい防衛関連株9社を徹底比較
まとめ
RTXの2026年第3四半期決算は、民間航空宇宙と防衛の両事業における需要の強さを改めて示しました。
特に、過去最高の3,400億ドルという受注残高は、今後の業績成長を支える重要な材料です。
プラット・アンド・ホイットニーでも、顧客の破産に伴う一時費用によってGAAP営業利益は減少しましたが、調整後営業利益は29%増加しており、航空機エンジンの整備需要が収益を支えています。
一方、調整後利益とFCF見通しの双方にIEEPA関連の回収益が寄与していることは見逃せません。
投資家にとって重要なのは、今回の好決算そのものだけでなく、一時的な回収益がなくなった後も、受注拡大を継続的な利益とキャッシュフローの成長につなげられるかどうかです。
RTXの事業基盤は堅調ですが、今後の株価を考えるうえでは、利益の質と持続性、そして生産能力の拡大による収益成長を見極める必要があります。
情報ソース
企業公式資料・一次情報
- RTX — RTX Reports Q3 2026 Results(2026年10月20日)
- RTX — Q3 2026 Earnings Release(決算発表資料)
- RTX — Q3 2026 Earnings Presentation(決算説明会資料)
報道・市場情報
- Barron’s — RTX’s Business Is Strong, but These Risks Are Holding Back the Stock
- Reuters — RTX lifts 2026 forecasts as aerospace, defense demand drives record backlog
- MarketBeat — RTX Q3 2026 Earnings Results & Call Transcript
- Stock Analysis — RTX Q3 2026 Earnings Call Transcript
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。