スリーエム株が急騰!好決算とアマゾンの60億ドル契約が示すAI関連株としての新たな可能性

  • 2026年10月21日
  • 2026年10月21日
  • BS余話

✨ この記事でわかること

  • スリーエムの2026年第3四半期決算は調整後EPSが市場予想を上回り、通期利益見通しも引き上げられました。
  • アマゾンとの提携拡大で60億ドルの取引規模が注目され、スリーエムがAIデータセンター関連企業として再評価されています。
  • 今後の株価を左右するのは、既存事業の利益率改善と、光通信関連製品の売上拡大を実現できるかどうかです。

工業製品大手のスリーエム(MMM)が、AI(人工知能)関連銘柄として新たな注目を集めています。

同社が10月20日に発表した2026年第3四半期決算は、利益が市場予想を上回る堅調な内容でした。さらに、前日に明らかになったアマゾン(AMZN)との戦略的提携拡大が株価上昇を後押ししています。

スリーエムといえば、ポスト・イットや工業用接着剤などで知られる老舗メーカーです。しかし今回の発表では、AIデータセンターに不可欠な光通信技術の供給企業という、これまでとは異なる成長の可能性が浮かび上がりました。

第3四半期決算は利益が市場予想を上回る

スリーエムが10月20日に発表した7〜9月期の主要業績は以下のとおりです。

項目2026年第3四半期前年同期比
GAAP売上高約66億ドル+1.0%
GAAP純利益約13.7億ドル+約64%
GAAP EPS2.63ドル+約70%
調整後EPS2.50ドル+12%
GAAP営業利益率23.7%+1.5ポイント
調整後営業利益率26.2%+1.1ポイント
調整後売上高成長率—+4.2%
調整後既存事業売上成長率—+3.3%

調整後EPSは市場予想の2.38ドルを約5%上回りました。一方、GAAP売上高は市場予想の約66.1億ドルをわずかに下回っています。

ここで重要なのは、GAAPベースと調整後(Non-GAAP)ベースでは売上高の成長率が異なることです。

GAAPベースの売上高増加率は1.0%で、既存事業売上高の成長率は0.2%でした。一方、製造PFAS製品を除外した調整後売上高は前年同期比4.2%増、調整後既存事業売上高は3.3%増となっています。

PFASとは、一部の工業製品などに使用されてきた有機フッ素化合物の総称です。スリーエムはPFAS製造事業からの撤退を進めており、その影響を除いた調整後数値によって、継続する事業の成長を把握できます。

また、調整後営業利益率は前年同期の25.1%から26.2%へ上昇しました。生産性向上やコスト構造の改善が収益に貢献していることを示しています。

なお、調整後業績には無形資産償却費を調整項目として除外する会計上の変更が反映されています。前年同期の数値も同じ基準に組み替えられているため、前年比較ではこの点を考慮する必要があります。

アマゾンとの提携拡大が最大の注目材料に

今回の決算以上に市場の関心を集めたのが、10月19日に発表されたアマゾンとの提携拡大です。

スリーエムが米証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、同社はアマゾン傘下企業に対して、最大316万2,015株を購入できる新株予約権を付与しました。

主な条件は以下のとおりです。

項目内容
対象製品光通信接続製品などのデータセンター関連製品
取引条件の基準額累計60億ドル
新株予約権最大316万2,015株
権利行使価格1株164.89ドル
権利行使可能期間7年間

新株予約権の85%は、アマゾンによる対象製品への累計支払額に応じて権利が確定し、60億ドルに達すると、この部分の権利がすべて確定します。残り15%には別の達成条件が設けられています。

ここで注意したいのは、60億ドルが確定した受注残高ではないことです。

これは新株予約権の権利確定に関係する支払額の基準であり、将来の売上高が60億ドル保証されたわけではありません。

それでも、世界最大級のクラウド事業者との取引拡大は、スリーエムの光通信技術がAIインフラ市場で重要な役割を担う可能性を示しています。

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AIデータセンターで光通信技術の重要性が高まる

AIデータセンターでは、膨大な数の半導体を高速ネットワークで接続する必要があります。

GPUの処理能力が向上しても、サーバー間でデータを十分な速度で伝送できなければ、システム全体の性能は制約を受けます。

スリーエムが注力するのは、こうした課題に対応する光接続技術です。

同社は台湾の光学技術企業Genius Electronic Opticalとも提携し、Expanded Beam Optics(EBO)と呼ばれる光接続技術の開発・製造を進めています。

さらに、スリーエムは同社の株式約4.7%を取得するための投資を進めています。

これらの動きは、スリーエムが素材技術の提供にとどまらず、AIデータセンター向け光通信部品の供給体制を強化しようとしていることを示しています。

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通期利益見通しを引き上げ、収益改善にも自信

スリーエムは今回の決算で、2026年通期の調整後EPS見通しを9.10〜9.15ドルに引き上げました。

従来の見通しは8.80〜8.95ドルでしたが、今回の引き上げには会計上の変更と実際の業績改善という2つの要素が含まれています。

従来予想を無形資産償却費の除外という新しい調整後会計基準に組み替えると、比較基準となるEPS見通しは8.95〜9.10ドルになります。

そこから、足元の業績などを反映して9.10〜9.15ドルへ引き上げられたため、今回の見通し改善を評価する際には、会計基準変更による押し上げ分と実態面の改善を区別することが重要です。

また、会社側は以下の見通しを示しています。

  • 調整後売上高成長率:4.5%超
  • 調整後既存事業売上成長率:3.5%超
  • 調整後営業キャッシュフロー:約59億ドル
  • 調整後フリーキャッシュフロー:約48億ドル

調整後売上高成長率4.5%超という見通しは、第3四半期の調整後売上高成長率4.2%と同じ考え方に基づくものです。

ウィリアム・ブラウンCEOは、事業構造改革による生産性向上と差別化された技術の開発が、長期的な成長と利益率改善を支えているとの認識を示しました。

今回の決算では、既存事業の収益性改善と新しい成長分野への進出が同時に進んでいることが確認できます。

株価は約5.8%上昇、投資家はAI関連事業を評価

スリーエム株は10月20日の通常取引で大きく上昇しました。

この記事の執筆時点である10月20日、米東部時間午後1時18分29秒時点(通常取引中)では、スリーエムの株価は171.43ドルとなり、前日終値162.01ドルから9.42ドル(5.81%)上昇しています。

市場が評価しているのは、決算の堅調さだけではありません。

バロンズの記事では、アマゾンとのデータセンター関連契約が、売上成長率に対する一部の懸念を打ち消す材料になったと分析しています。

バーンスタインのアナリスト、ヴァルン・ゴビンダラジ氏も、売上成長率が自身の想定をやや下回った一方で、アマゾンとの発表がその弱さを相殺する可能性を指摘しています。

つまり、今回の株価上昇には、従来の産業用素材メーカーからAIインフラの成長を取り込む企業への評価の変化が反映されていると考えられます。

今後の注目点はAI関連売上の実現と利益率の維持

今後、スリーエムへの投資を検討するうえでは、3つの点が重要になります。

まず、アマゾンとの取引がどの程度の速度で実際の売上高に反映されるかです。60億ドルという基準額は大きいものの、売上計上の時期や利益率は現時点で明らかになっていません。

次に、光通信事業の拡大に必要な生産能力と収益性です。需要が拡大しても、設備投資や製造コストが増えれば、利益率が圧迫される可能性があります。

最後に、既存事業の収益性改善が続くかどうかです。

今回の調整後営業利益率26.2%という水準は、事業改革の成果を示す重要な指標です。今後も利益率を維持・改善できれば、AI関連事業が本格的に成長する前から収益基盤を強化できます。

まとめ:スリーエムはAIインフラ投資の新たな受益企業になるか

今回のスリーエム決算で注目すべきなのは、調整後EPSが市場予想を上回ったことに加え、アマゾンとの提携拡大によって新しい成長分野が具体化した点です。

AI市場では、半導体やクラウド企業だけでなく、光通信部品や素材を供給する企業にも成長機会が広がっています。

一方で、アマゾンとの60億ドルという取引条件は確定売上ではなく、今後の実績による検証が必要です。

また、調整後売上高の成長率4.2%とGAAP売上高の成長率1.0%には差があり、継続事業の成長と全社業績を分けて評価することも欠かせません。

スリーエムが従来の産業用素材メーカーという評価を超え、AIインフラ関連企業として継続的に評価されるには、光通信関連製品の売上拡大と利益成長を数字で示すことが重要になります。

今回の発表は、その可能性を投資家に印象づける重要な一歩になったと考えられます。

情報ソース

企業公式資料・一次情報

報道・市場情報

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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