✨ この記事でわかること
- 量子コンピューター関連株は9月下旬に反発したものの、10月9日までに主要4銘柄が再び下落。クオンティニュアムは19.6%安となりました。
- 米政府は量子関連3社にそれぞれ最大1億ドルの研究開発支援を決定。エヌビディアとイオンキューの提携など、事業面では前進が続いています。
- 量子株の本格的な上昇には、技術開発の進展だけでなく、商業契約や売上高の拡大を裏付ける具体的な成果が重要になります。
期待が高まった量子コンピューター株に再び売り
次世代の成長産業として期待される量子コンピューター関連株が、再び厳しい局面を迎えています。
9月22日、マーケットウォッチは「Quantum stocks are getting hot again after a brutal summer. Can the rally last?(厳しい夏を経て量子株が再び熱くなっている。この上昇は続くのか)」という記事を掲載しました。
同記事では、夏場の下落で投資家の期待が大きく調整された量子株について、業界イベントや技術開発の進展が反発のきっかけになる可能性を紹介していました。
実際、9月下旬には一部の量子関連株が上昇しました。しかし、その後の株価は期待とは異なる展開を見せています。
10月9日の終値を9月22日と比較すると、主要4銘柄はすべて下落しました。
| 企業名 | 9月22日終値 | 10月9日終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| イオンキュー | 40.74ドル | 39.89ドル | -2.1% |
| D-ウェーブ・クオンタム | 17.56ドル | 14.57ドル | -17.0% |
| リゲッティ・コンピューティング | 16.52ドル | 14.03ドル | -15.1% |
| クオンティニュアム | 51.39ドル | 41.30ドル | -19.6% |
※2026年9月22日と10月9日の米国市場終値から計算。小数点第2位を四捨五入しています。
特に注目されるのは、イオンキューの下落率が2.1%にとどまる一方、ほかの3社は15%以上下落していることです。
量子コンピューターという同じ成長テーマに属していても、株価の動きには明確な違いが生まれています。
*関連記事:量子コンピューター株の本命はどれか イオンキュー、IBM、リゲッティなど6銘柄を徹底比較
イオンキューはエヌビディアとの提携で存在感
イオンキュー(IONQ)は、今回比較した4銘柄の中で最も下落率が小さくなっています。
同社は9月23日、エヌビディア(NVDA)の量子研究施設「NVIDIA Accelerated Quantum Research Center」に量子コンピューターを導入すると発表しました。
導入予定の「Superion 256」は、256量子ビットを搭載する次世代システムです。
エヌビディアのAIインフラと直接接続することで、従来型コンピューターと量子コンピューターを組み合わせる技術の開発を進めます。
設置は2027年を予定しています。
*関連記事:イオンキューとエヌビディアが量子で提携 GPUとQPUの融合が本格化
さらにイオンキューは、2026年の売上高見通しを4億5,000万〜4億6,000万ドルに引き上げました。
ただし、この見通しには7月31日に買収したスカイウォーター・テクノロジーの売上高も含まれています。そのため、量子コンピューター事業そのものの成長率とは区別して評価する必要があります。
*関連記事:量子コンピューターを「作る会社」へ イオンキュー、18億ドル買収で製造まで囲い込む
エヌビディアとの提携は、量子コンピューターの実用化に向けた重要な前進です。
一方、10月9日の株価39.89ドルは、9月25日の45.48ドルから12.3%下落しています。
技術面での期待が高まっても、それだけでは株価の上昇を持続させることが難しい状況がうかがえます。
D-ウェーブは政府支援と技術開発が進展
D-ウェーブ・クオンタム(QBTS)も事業面では重要な進展を見せています。
9月8日、米商務省は同社に最大1億ドルの研究開発資金を提供する最終合意を発表しました。
資金は量子アニーリング方式とゲート方式の両方における技術開発に使われます。
さらに10月1日、同社はゲート方式量子コンピューター向けシミュレーターのベータプログラムを開始しました。
スペインの金融大手BBVAやドイツのユーリッヒ・スーパーコンピューティングセンターなどが参加しています。
同社の強みは、特定の最適化問題を解く量子アニーリング方式で商業利用を進めながら、汎用性の高いゲート方式にも開発領域を広げていることです。
しかし、株価は9月22日の17.56ドルから10月9日には14.57ドルへ17.0%下落しました。
政府支援や技術開発の発表が、直ちに株価上昇につながるわけではないことを示しています。
D-ウェーブについては、8月の決算でも受注高の急増と株価下落という対照的な動きが見られました。
*関連記事:D-ウェーブ株が決算後7%安 受注1,120%増でも市場が警戒した理由
リゲッティとクオンティニュアムにも政府資金
リゲッティ・コンピューティング(RGTI)とクオンティニュアム(QNT)にも、9月8日に米政府からそれぞれ最大1億ドルの研究開発支援が決定しています。
リゲッティは超伝導方式、クオンティニュアムはイオントラップ方式の量子コンピューターを開発しています。
支援対象となる技術は異なりますが、どちらも量子コンピューターの大規模化に必要な基盤技術の開発が中心です。
政府の支援は資金面での後押しとなります。しかし、研究開発資金が増えることと、商業売上高が増えることは同じではありません。
10月9日までの株価下落率は、リゲッティが15.1%、クオンティニュアムが19.6%でした。
量子コンピューターの将来性に対する期待と、現在の企業価値をどのように評価するかという問題が浮き彫りになっています。
リゲッティについては、8月の決算で売上高が前年同期の約3倍に拡大した一方、研究開発費の増加や次世代システムの開発遅延などが株価の重荷となりました。
*関連記事:量子株のリゲッティはなぜ下落?売上約3倍でも投資家が警戒した3つの理由
一方、クオンティニュアムも8月の決算で売上高が約4倍に拡大するなど、商業化に向けた進展を見せています。
*関連記事:クオンティニュアム売上4倍 量子コンピューターが「研究」から「受注」の時代へ
量子株の反発が続かなかった理由
今回の株価推移から、量子コンピューター関連株には2つの異なる動きが存在していると考えられます。
ひとつは、技術開発と政府支援の拡大です。
9月に開催された「Quantum World Congress」には、量子コンピューターの開発企業だけでなく、IBM、マイクロソフト、エヌビディアなども参加しました。
米政府も量子コンピューターを戦略的に重要な技術として位置付け、研究開発や製造基盤への支援を進めています。
こうした政策面の変化については、9月7日の記事でも取り上げています。
*関連記事:米国が量子技術を国家戦略へ!IBM・マイクロソフト・イオンキューに広がる投資機会
もうひとつは、株式市場が企業の成長性を厳しく評価し始めていることです。
量子コンピューターには大きな市場機会が期待されていますが、実用化には技術的な課題が残されています。
また、多くの量子専業企業では、研究開発に必要な資金が大きい一方、現在の売上規模は限定的です。
将来の成長期待によって高い企業価値が付けられている場合、投資家の期待が変化するだけでも株価は大きく下落します。
今回の下落を特定の要因だけで説明することはできませんが、量子関連企業に対して、期待だけでなく具体的な成果を求める姿勢が強まっていると考えられます。
今後の量子株で注目すべき3つのポイント
今後、量子コンピューター関連株が持続的な上昇に転じるかを判断するうえで、重要なポイントが3つあります。
最初は、商業契約と売上高の拡大です。
量子コンピューターの技術的な性能が向上しても、顧客企業が継続的に利用し、売上につながらなければ企業価値の拡大には限界があります。
次に、技術開発の進捗です。
特に、量子ビット数の増加だけでなく、計算精度やエラー訂正技術の改善が重要になります。
イオンキューのSuperion 256やクオンティニュアムの次世代システムが、計画どおりに開発されるかが注目されます。
最後は、研究開発資金と財務基盤です。
量子コンピューターの商業化には長期間の投資が必要です。政府支援を受ける企業でも、資金調達に伴う株式の希薄化や研究開発費の増加には注意が必要です。
まとめ:量子コンピューターの成長と量子株の上昇は別問題
9月下旬に高まった量子コンピューター関連株への期待は、10月9日時点では持続的な株価上昇につながっていません。
今回比較した4銘柄では、イオンキューが比較的底堅い動きを見せた一方、D-ウェーブ、リゲッティ、クオンティニュアムは大幅に下落しました。
ただし、株価の下落だけで量子コンピューター産業の将来性が失われたと判断することはできません。
エヌビディアとの提携、米政府の研究開発支援、商業利用に向けた取り組みなど、産業の発展を示す材料は着実に増えています。
投資家にとって重要なのは、技術的な期待が実際の事業成長につながっている企業を見極めることです。
量子コンピューターが次世代の巨大産業へ成長する可能性はあります。しかし、その恩恵を受ける企業と、株主に十分な利益をもたらす企業が必ずしも一致するとは限りません。
量子株の次の上昇局面を見極めるには、株価の短期的な反発だけでなく、商業化の進捗と売上高の成長を継続的に確認することが重要になります。
情報ソース:
- マーケットウォッチ(2026年9月22日):Quantum stocks are getting hot again after a brutal summer. Can the rally last?
- イオンキュー(2026年9月23日):IonQ to Advance Quantum Supercomputing by Bringing First QPU to NVIDIA Accelerated Quantum Research Center
- 米国国立標準技術研究所(2026年9月8日):CHIPS関連の量子コンピューター研究開発支援発表
- D-ウェーブ(2026年10月1日):D-Wave Launches Gate-Model Simulator Beta Program
- 株価データ:Yahoo!ファイナンス、StockAnalysis(2026年10月9日終値)
※本記事は投資情報の提供を目的とするものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。