✨ この記事でわかること
- メリウス・リサーチがマイクロソフトの目標株価を465ドルから665ドルへ引き上げた理由
- AIの安全性やセキュリティへの懸念が、マイクロソフトにとって追い風になる背景
- Azure、Microsoft 365、Copilot、企業データ基盤がAIエージェント時代の強みになる理由
AI競争が激しくなるなか、マイクロソフト(MSFT)に対するウォール街の評価が再び高まっています。
10月5日付のマーケットウォッチとバロンズによると、メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏はマイクロソフトの投資判断を「ホールド」から「買い」へ引き上げ、目標株価を465ドルから665ドルへ大幅に引き上げました。
今回注目したいのは、単純に「AI需要が拡大するからマイクロソフトが成長する」という強気論ではない点です。AIの性能が高まるほど、安全性やセキュリティ、企業データの管理が重要になり、長年企業向けITを支えてきたマイクロソフトの価値が高まるという見方です。
目標株価を665ドルへ大幅引き上げ
今回の強気判断で注目されるのは、マイクロソフト株がすでに大きく上昇した後でも、さらに上値余地があるとみている点です。
10月5日のマイクロソフト株は約1.5%上昇し、525.18ドルで取引を終えました。665ドルという目標株価は、この水準から約27%の上昇余地を示しています。
マーケットウォッチによると、マイクロソフト株は6月の安値からすでに約49%上昇しています。それでもメリウス・リサーチは、株価上昇はまだ終わっていないと判断しています。
バロンズは、同社の時価総額が再び4兆ドルに接近している点にも注目しています。
マイクロソフト株は9月にも2026年の最高値を更新しており、その際も特定のAIモデルに依存せず、複数のAIを企業が利用するための基盤を提供できることが評価されていました。
関連記事:マイクロソフト株が2026年最高値 AI戦略が再評価される理由
AI関連株では成長率や新しいAIモデルに関心が集まりがちですが、今回の評価では「安定性」や「信頼性」も重要な投資材料として意識されています。
AIへの不安が追い風になる理由
AI業界では、技術の急速な進歩と同時に安全性への懸念も強まっています。
アンソロピックのCEOであるダリオ・アモディ氏をはじめ、最先端AIを開発する企業の経営者からは、高度なAIが社会に与えるリスクを警告する発言が相次いでいます。
こうした状況になると、企業はAIモデルの性能だけではなく、「AIを誰が管理するのか」「社内情報を安全に扱えるのか」「AIエージェントにどこまで権限を与えるのか」といった問題を重視します。
そこで強みを発揮するのがマイクロソフトです。
同社はAzure、Microsoft 365、Teams、SharePoint、OneDrive、セキュリティ製品などを幅広く企業へ提供しています。AIだけを販売する企業とは異なり、企業の業務システムやデータ管理そのものに深く入り込んでいる点が大きな強みです。
企業データとの接続が競争力に
AIエージェントが企業で本格利用されるには、文書、メール、会議資料などの社内情報へ安全にアクセスできることが欠かせません。
多くの企業では、こうしたデータがSharePoint、OneDrive、Teamsなどマイクロソフトのサービスに保存されています。
そのため、AIエージェントの性能を比較するだけではマイクロソフトの強みは見えてきません。既存の企業データと自然に連携できることが重要です。
CopilotやAzure AIも、単独のAIモデルとしてではなく、Microsoft 365や企業システム全体との組み合わせで価値を発揮します。
マイクロソフトは9月にCopilotの大幅な機能強化を発表しており、AIアシスタントから企業の業務基盤へ進化させようとしています。
関連記事:マイクロソフト株はなぜ上昇? Copilot大幅強化とAI収益化の可能性
AIの性能競争が続く一方で、企業への導入競争ではマイクロソフトが有利な立場にいる可能性があります。
AIエージェント時代でも守られた立場
マーケットウォッチは、アマゾン(AMZN)やアルファベット(GOOGL)が新しいAIアシスタントとの競争にさらされる一方、マイクロソフトは比較的影響を受けにくいというメリウス・リサーチの見方も紹介しています。
検索や広告、ショッピングは新しいAIエージェントによって利用方法が大きく変わる可能性があります。
当ブログでも、AIエージェントが検索やオンラインショッピングの仕組みそのものを変える可能性について取り上げています。
関連記事:AIとエージェント型商取引が塗り替える小売業界の未来
一方、企業向けソフトウェア、クラウド、セキュリティを中心とするマイクロソフトは、新しいAIサービスを自社の基盤に取り込む側に回れます。
AIモデルそのものの勝者を目指すだけでなく、複数のAIを企業が安全に利用するためのプラットフォームを提供できる点が重要です。
ウォール街もマイクロソフトに強気
マイクロソフトに強気なのはメリウス・リサーチだけではありません。
バロンズによると、ファクトセットが集計した59人のアナリストのうち98%が、同社株を「買い」相当と評価しています。
背景にはAzureの成長に加えて、Copilotを中心とするAIサービスの収益化への期待があります。
一方で、2027会計年度にはAI関連の設備投資がさらに増えると予想されています。そのため今後は、投資額の大きさだけではなく、それによってAzureやMicrosoft 365の売上高をどこまで伸ばせるかが重要になります。
当ブログでは以前から、マイクロソフトのAI投資に対する市場の評価が「投資額の大きさ」から「AIをどこまで収益化できるか」へ変化している点を取り上げています。
関連記事:マイクロソフト株6連騰の理由とは?市場が評価するAI収益化の実力
「成熟した巨大企業」がAI時代の強みに
今回のマーケットウォッチとバロンズの記事から見えてくるのは、マイクロソフトに対する評価軸の変化です。
これまではオープンAIとの関係やCopilot、Azure AIなど、AI技術でどこまで先行できるかが注目されてきました。
しかしAIが企業活動の中心へ入るにつれ、安全性、データ管理、セキュリティ、ガバナンスの重要性が増しています。
マイクロソフトとオープンAIの関係も変化しており、マイクロソフトは特定のAI企業だけに依存するのではなく、より幅広いAIモデルを自社のクラウドや企業向けサービスに取り込む方向へ進んでいます。
関連記事:マイクロソフトとオープンAIの独占終了が示すAI市場の新局面
その結果、長年企業向けITを提供してきた「成熟した巨大企業」であること自体が競争力になり始めています。
AI競争が「最も高性能なモデルを作る競争」から「企業が安心してAIを利用できる環境を作る競争」へ広がれば、マイクロソフトにとって大きな追い風になります。
今後はAzureの成長率やCopilotの収益化だけでなく、企業向けAIのセキュリティや管理基盤でどこまで存在感を高められるかにも注目です。
情報ソース: MarketWatch: “Microsoft’s blazing stock comeback isn’t even close to being over, analyst says” (By Hannah Pedone, Oct. 5, 2026)
Barron’s: “Microsoft Nears $4 Trillion as AI Safety Fears Become a Selling Point” (By Mariapaula Gonzalez, Oct. 5, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。