スペースX(SPCX)が、単なるロケット企業から総合インフラ企業へ変わろうとしています。
Bret Johnsen CFOが9月10日にゴールドマン・サックスのカンファレンスで明らかにした内容を見ると、同社の事業は「宇宙輸送」「衛星通信」「モバイル通信」「AIコンピューティング」へと広がっています。
重要なのは、これらが別々の事業ではなく、スターシップを中心に結びつき始めている点です。スペースXの将来性を考えるうえでは、この垂直統合型の事業構造が最大のポイントになります。
スターシップが宇宙インフラの基盤になる
スペースXは2026年9月中にスターシップの14回目の試験飛行を予定しており、次世代スターリンク衛星を軌道へ投入する計画です。
スターリンクのV3衛星は、現在ファルコン9で打ち上げている衛星より大型で高性能とされています。
ここで注目したいのは、スターシップが単なるロケットではなく、自社サービスを拡大するための輸送インフラになることです。
自社でロケットを開発し、自社の衛星を打ち上げ、自社の通信網を拡大できれば、外部企業への依存を抑えながら事業を成長させられます。
スターシップの輸送能力向上が、そのままスターリンクの通信能力向上につながる構造です。
スターリンクの次はモバイル通信
次の成長市場として浮上しているのがモバイル通信です。
Johnsen CFOは、高度なモバイルサービスを提供するため、追加資産の必要性を評価すると述べています。
スターリンクV3の性能が向上すれば、スペースXは従来型の携帯通信会社と競合する可能性があります。
スターリンクが固定インターネット中心のサービスからスマートフォンを含むモバイル通信へ広がれば、対象市場は大きく拡大します。
ただし、衛星だけですべての通信サービスを完結できるとは限りません。地上の基地局などが必要になる可能性もあります。
今後は、通信インフラをどこまで自社で保有するのか、既存通信会社と提携するのかが重要になります。
AIコンピューティングが新たな収益の柱に
今回の発言で最も注目したいのがAI事業です。
スペースXは非公表の顧客と、月額11億1,000万ドルのAIコンピューティング能力提供契約を締結したことを最近明らかにしています。
単純に12カ月換算すると133億2,000万ドルになります。
ウィリアム・ブレアのLouie DiPalma氏によると、同種の契約は今回が4件目です。バロンズの記事では、アンソロピックやグーグルとも同様の契約を結んでいるとされています。
ウォール街は2027年のスペースXの売上高を約1,000億ドル、そのうちAI関連を約660億ドルと予想しています。
この予想通りに成長すれば、スペースXの収益構造は大きく変わります。将来の同社を評価する際、ロケットの打ち上げ回数だけを見るのでは不十分になります。
Johnsen CFOは、2026年末までに年間経常収益換算額であるARRが1,000億ドルに達するとの見通しも示しています。
ARR1,000億ドルは、月間ベースでは約83億ドルの売上規模に相当します。
軌道上AIデータセンターという次の構想
さらに注目されるのが「スターマインド AI」です。
スペースXは早ければ2027年にも、スターシップを使ってスターマインド衛星を打ち上げることを目指しています。
Johnsen CFOは、将来的に軌道上AIデータセンターのコストが地上データセンターより低くなる可能性を示しています。
現在のAIデータセンターは、電力、冷却、水資源、用地といった制約を抱えています。
軌道上AIデータセンターには技術面やコスト面で多くの課題がありますが、スペースXには自社のロケット、衛星、通信ネットワークがあります。
「打ち上げ」「衛星」「通信」「AIコンピューティング」を自社でつなげられることが、他社にはない強みになる可能性があります。
最大の課題は巨額の資金需要
一方で、成長構想が大きいほど資金負担も増えます。
ウォール街は、スペースXがAIと通信インフラを構築するため、今後数千億ドル規模の追加資金を必要とすると推計しています。
スターシップ、スターリンクV3、モバイル通信、AIコンピューティング、スターマインドを同時に拡大すれば、設備投資は巨額になります。
売上高が増えても、それ以上に資本支出が膨らめば、企業価値の成長がそのまま株主価値の拡大につながるとは限りません。
今後は売上成長だけでなく、設備投資額、資金調達方法、キャッシュフローを確認する必要があります。
スペースXは宇宙版インフラ企業へ向かう
スペースX株は2026年9月11日に約2%上昇し、151.21ドルで取引を終えました。週間では2.2%高となり、3週連続の上昇です。
ただし、投資家にとって重要なのは短期的な株価よりも、同社がどのような企業へ変わろうとしているかです。
スターシップで大型衛星を打ち上げ、スターリンクで通信網を構築し、モバイル通信へ広げ、AIコンピューティングを販売し、さらに軌道上AIデータセンターまで展開する構想です。
これらがつながれば、スペースXは単なるロケットメーカーではなく、宇宙空間を利用した通信・AIインフラ企業へ変化していきます。
特に注目したいのは、スターシップ、スターリンク、AIという3つの事業が相互に成長を支える構造です。
一方で、それを実現するには巨額の資金が必要です。
今後のスペースXを評価する際は、成長市場の大きさだけでなく、「巨額投資を続けながら、どれだけ効率的に収益を拡大できるか」が最大の焦点になります。
情報ソース: Barron’s: “SpaceX’s New AI Deal and 4 Other Revelations From Its CFO” (By Al Root, Sept. 11, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら スペースX
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