エヌビディア(NVDA)の成長を考えるうえで、これまではAIデータセンターへの巨額投資が最大のテーマでした。しかし、ジェンスン・フアンCEOが「サイバーセキュリティはAIの次の主要なユースケースになる可能性が高い」と発言したことで、新たな成長市場が意識され始めています。
重要なのは、サイバーセキュリティ市場が単純に拡大するという話ではありません。AIの普及によって新たな脅威が生まれ、その防御にもAIが必要になるという構造です。
エヌビディアにとっては、AI向け計算能力の需要がデータセンター建設だけでなく、企業のセキュリティ対策にも広がる可能性があります。
AI普及が新たなセキュリティ需要を生む
フアンCEOは9月10日、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)のテクノロジー・カンファレンスで、AIモデルによるプログラミングの自動化がサイバーセキュリティ業界に大きな変化をもたらしていると説明しました。
AIを使えばソフトウェア開発を高速化できますが、その能力は攻撃者側にも利用される可能性があります。脆弱性を探し、攻撃コードを作成する速度が高まれば、防御する企業も同じ速度で対応する必要があります。
つまり、AIによる開発の高速化が攻撃の高速化を生み、それに対抗するために企業がさらにAIを導入するという流れです。
この構造が広がれば、AI向けGPUの需要はAIモデルを開発する企業だけに限定されません。金融、製造、通信、小売など幅広い業界がサイバー防御のためにAIを導入する可能性があります。
サイバーセキュリティは削減しにくいAI投資
生成AIへの投資は、企業の判断によって延期できる場合があります。新しいAIサービスの導入を1年遅らせても、すぐに事業が止まるとは限りません。
一方、サイバーセキュリティは事情が異なります。
AIによって攻撃が高度化すれば、防御側だけが従来型のシステムを使い続けることは難しくなります。セキュリティ向けAIは「成長のための投資」ではなく、「事業を維持するための投資」になる可能性があります。
この点はエヌビディアにとって重要です。
景気が悪化すれば企業は新規IT投資を削減できますが、重要システムを守るための支出は簡単には止められません。AIによるサイバー防御が標準化すれば、AI向け計算需要に比較的安定した新市場が加わる可能性があります。
GPU企業からAIインフラ企業へ
エヌビディアの成長を考える際には、同社の事業範囲が半導体だけではなくなっている点にも注目できます。
同社は先週、AI企業ハギングフェイスを約130億ドルで買収すると発表しました。
これまでエヌビディアの競争力は、AIモデルの学習や推論に使われるGPUが中心でした。しかし今後は、半導体、AIインフラ、AI開発環境、AIモデル関連サービスなど、AI産業のより広い領域への関与を深める可能性があります。
そこにサイバーセキュリティが加われば、エヌビディアが恩恵を受ける市場はさらに広がります。
投資家にとって重要なのは、同社を単なる半導体メーカーとして見るのか、それともAI産業全体の基盤を提供する企業として評価するのかという点です。
エヌビディアが持つ需要情報の優位性
情報源のブルームバーグの記事では、フアンCEOが投資方針について語った点も注目されます。
同氏は、投資する際には「sure thing」、つまり確実性の高い案件であることが必要だと述べ、その条件として投資先にすでに顧客が並んでいることを挙げました。
この発言から見えてくるのは、エヌビディアがAI市場の供給者であると同時に、需要を把握しやすい立場にもいるということです。
自社のGPUやAIインフラを通じて、どの企業やサービスに計算需要が集まっているのかを把握できれば、成長市場を早期に発見できる可能性があります。
フアンCEOが自身を「informed investor」と表現した背景には、こうした立場があると考えられます。
「AIがAI需要を作る」成長シナリオ
これまでのAIブームは、人間や企業がAIを使いたいという需要によって成長してきました。しかしサイバーセキュリティでは、AIそのものが新たなAI需要を生み出す可能性があります。
AIによって攻撃能力が高まり、その攻撃に対抗するために企業がさらにAIを導入するという構造です。
この流れが本格化すれば、AI市場の成長はデータセンターへの設備投資だけでは説明できなくなります。
エヌビディアにとって最大の強みは、特定のAIサービスが成功することだけではありません。AIの利用分野が増えるたびに、その裏側で必要になる計算能力への需要が拡大する立場にいることです。
サイバーセキュリティが実際にAIの次の巨大市場になるかは、今後の企業投資を確認する必要があります。それでも今回のフアンCEOの発言は、エヌビディアの成長ストーリーが「AIデータセンター建設」から「AIが社会インフラに組み込まれる過程」へ広がっていることを示す材料になります。
情報ソース: Bloomberg: “Nvidia’s Huang Touts Cybersecurity as Next Big Market for AI” (By Ian King, Sept. 11, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
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