米防衛関連企業のエアロバイロンメント(AVAV)が、2026年9月9日の米国市場終了後に2027会計年度第1四半期決算を発表しました。
株価は2026年に大きく下落していましたが、今回の決算は売上高、1株利益ともに市場予想を上回りました。さらに受注残高も増加しており、株価の低迷とは対照的に事業面では成長が続いていることが確認されました。
まず今回の決算内容を整理し、その後、エアロバイロンメントの将来性と株価評価について考えます。
9月9日発表の決算は市場予想を上回る
エアロバイロンメントが発表した2027会計年度第1四半期の売上高は4億8,050万ドル、1株利益(EPS)は0.59ドルでした。
ウォール街の予想は売上高4億5,200万ドル、EPS0.22ドルだったため、売上高、利益ともに市場予想を上回りました。
売上高は前年同期の4億5,500万ドルから増加しました。市場予想に対しても約6%上振れています。
さらにEPSは市場予想の2倍以上となりました。
今回の決算を見る限り、ドローンや防衛関連製品への需要が急激に失速している状況ではありません。少なくとも売上高と利益の両面では、市場が想定していた以上の結果となりました。
受注残高は15億ドルへ増加
今回の決算でもう1つ注目したいのが受注残高です。
四半期末の受注残高は15億ドルとなりました。4月末時点では12億ドルだったため、約3億ドル増加しています。
防衛関連企業では、大型契約を獲得してから製品の納入や売上計上まで時間がかかる場合があります。そのため、受注残高は今後の売上を判断するうえで重要な指標になります。
会社が示している2027会計年度の通期売上高見通しは約22億ドルです。年間売上高見通しに対して15億ドルの受注残高を抱えている点は、今後の事業について一定の売上の可視性を確保していることを示しています。
通期見通しは据え置き
エアロバイロンメントは2027会計年度について、売上高約22億ドル、EBITDA約3億1,500万ドルという従来の通期見通しを据え置きました。
ウォール街の予想は売上高約22億ドル、EBITDA約3億2,200万ドルです。
売上高見通しからみると、2027会計年度は約10%の売上成長が想定されています。
今回の四半期決算は市場予想を上回りましたが、会社は通期見通しを引き上げませんでした。
ジェフリーズのアナリストは、業績見通しが引き上げられなかった背景には事業執行上の問題ではなく、防衛予算を巡る不透明感があると指摘しています。
決算後の株価は上昇
9月9日の通常取引では、決算発表を前にエアロバイロンメント株は5.4%下落しました。
しかし決算発表後、翌10日の米国市場では午後2時半現在の段階で株価が9%上昇し、153.4ドルで取引されています。
株価は2026年初めから約40%下落しており、イラン戦争開始以降でも40%以上下落していました。
それだけに、市場予想を上回った今回の決算は、業績悪化への懸念を一定程度和らげる内容だったと考えられます。
今回の決算をどう評価するか
今回の決算で重要なのは、単に市場予想を上回ったという点だけではありません。
特に注目したいのが、株価が大きく下落している一方で、受注残高が12億ドルから15億ドルへ増加していることです。
株価と事業の方向性にギャップが生まれています。
今後、この15億ドルの受注残高が予定通り売上高と利益へ転換されれば、現在の株価には再評価の余地が出てくる可能性があります。
逆に受注残高が多くても、契約の遅延や取り消しによって売上につながらなければ、株価回復は難しくなります。
その意味で、今後は受注額そのものよりも、受注をどれだけ確実に売上と利益へ変換できるかが重要になります。
PER90倍から39倍への低下は転換点か
エアロバイロンメント株は2026年の早い時期には、今後12カ月の予想利益に対して約90倍のPERで取引されていました。
現在は約39倍まで低下しています。
PER39倍でも米国株全体と比較すれば低い評価ではありません。しかし、今後数年間の利益について年平均約39%の成長が予想されていることを考えると、PER90倍だった時期よりも利益成長と株価評価のバランスは改善しています。
これまでのエアロバイロンメント株は、ドローンや無人兵器市場が急拡大するという期待を強く織り込んでいました。
現在はその期待がかなり剥落しています。
ここから株価が上昇するために、PERが再び90倍まで上昇する必要はありません。利益が実際に伸びれば、現在と同程度のPERでも株価上昇につながる余地があります。
10億ドル規模の契約取り消しは忘れてはいけない
一方で、大型契約への依存は同社の重要なリスクです。
2026年3月、米政府はBADGERフェーズドアレイ・アンテナシステムに関する10億ドル規模の契約を取り消しました。
米宇宙軍が、市販のソリューションを利用することでコストを削減できると判断したことが理由です。
この事例が示すのは、防衛市場そのものが成長しても、個別企業の受注が保証されるわけではないということです。
政府は性能だけでなく、価格や調達方法も含めて契約を判断します。
今後エアロバイロンメントを見る際には、ドローン市場の成長率だけでなく、大型契約への依存度、新規受注の継続性、受注から売上への転換率を確認していく必要があります。
「ドローン期待株」から「業績確認株」へ
9月9日の決算は、エアロバイロンメントの事業が市場の悲観ほど悪化していないことを示す内容でした。
売上高とEPSは市場予想を上回り、受注残高は15億ドルへ増加しました。通期売上高も約22億ドルが見込まれています。
一方で、株価は年初来で約40%下落し、PERも約90倍から39倍まで低下しています。
つまり現在のエアロバイロンメントは、ドローン市場への期待だけで買われる段階から、実際の売上高と利益を確認しながら評価される段階へ移行しています。
今後の最大の焦点は、15億ドルの受注残高をどこまで売上と利益に変えられるかです。
受注、売上高、利益の3つが揃って成長すれば、2026年に大きく低下した市場評価が見直される可能性があります。
今回の決算は、本格的な株価回復を確認する材料というより、エアロバイロンメントの成長ストーリーがまだ継続していることを示した最初の確認材料と捉えるのが適切だと考えます。
情報ソース: Barron’s: “AeroVironment Stock Jumps After Earnings Show Drones Aren’t Done” (By Al Root, Sept. 10, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「エアロバイロンメントの決算急反発は本物か 防衛ドローン需要と逆風から読む今後の将来性」
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