セールスフォース株が13%急騰!好決算と「Claudeforce」が示すAI成長戦略

  • 2026年8月27日
  • 2026年8月27日
  • BS余話

セールスフォース(CRM)が2026年8月26日の米国市場終了後に発表した第2四半期決算は、売上高が市場予想を上回っただけでなく、利益面で大幅な改善を示す内容となりました。さらにAI開発企業アンソロピックとの提携を拡大し、新たなコラボレーション「Claudeforce(クロードフォース)」を発表しています。

SaaS市場では生成AIの普及によって既存ソフトウェア企業の成長鈍化が警戒されていますが、今回の決算を見る限り、セールスフォースは単なるCRM企業から、企業データとAIエージェントを結び付けるプラットフォーム企業へ変化しようとしていることが分かります。

第2四半期決算は売上高・利益とも市場予想を上回る

2026年第2四半期の売上高は前年同期比11%増の113億5,000万ドルとなり、市場予想の113億3,000万ドルを上回りました。

特に目立ったのが利益面です。調整後1株当たり利益(EPS)は5.90ドルとなり、前年同期の2.91ドルから2倍以上に増加しました。市場予想の3.27ドルも大幅に上回っています。

一方、粗利益率は77%となり、前四半期と同水準だったものの、前年同期の78%からは1ポイント低下しました。AI関連サービスでは推論処理などのコストが発生するため、今後は売上高の拡大と利益率をどのように両立するかが重要になります。

セールスフォースの売上高成長率は、2022年以前には20%を超えることもありましたが、ここ数年は10%前後へ低下しています。しかし今回の決算は、成長率が以前ほど高くなくても、利益を大幅に増やせる企業へ変化していることを示しました。

通期ガイダンス上方修正が示す利益重視経営

セールスフォースは2027会計年度の業績見通しも引き上げました。

通期売上高予想は従来見通しから2億ドル引き上げ、461億ドル〜464億ドルとしています。

さらに注目されるのが調整後EPSです。従来の14.06ドル〜14.12ドルから、16.67ドル〜16.71ドルへ大幅に上方修正しました。

これは同社の経営方針が、売上高成長を最優先する段階から、利益率やキャッシュフローを重視する段階へ移行していることを示しています。

セールスフォースは長年、買収や人員拡大によって成長してきました。しかし近年はコスト管理や組織効率化を進めています。売上高成長率が約10%に落ち着いているにもかかわらずEPSが急増していることは、こうした改革が業績に反映され始めた結果と考えられます。

決算発表前まで株価は年初来22%下落していましたが、決算発表後の時間外取引では13%急騰し、232.5ドルまで上昇しました。市場がセールスフォースの利益成長を高く評価したことが分かります。

アンソロピックとの「Claudeforce」が重要な理由

今回の決算と同時に発表された重要なニュースが、アンソロピックとの提携拡大です。両社はこの協業を「Claudeforce」と名付けました。

今回の提携によって、アンソロピックの生成AI「Claude」からセールスフォースのCRMデータや機能へアクセスできるようになります。人間だけでなくAIエージェントも、プラグインを通じて顧客情報を検索したり、業務処理を実行したりすることが可能になります。

さらにアンソロピックのAIモデルは、企業が独自のAIエージェントを構築できるセールスフォースの「Agentforce」にも利用されます。

生成AIが普及すれば、企業ソフトウェアの操作方法そのものが変わる可能性があります。従来は担当者がCRM画面を開き、顧客情報を検索したりデータを入力したりしていました。しかし将来的には、AIに指示するだけで必要な情報の抽出や営業活動、顧客対応などが実行される可能性があります。

重要なのは、ユーザーインターフェースがClaudeなどのAIへ移ったとしても、その裏側で利用される企業データをセールスフォースが握り続けられるかどうかです。

Claudeforceは、セールスフォースがAI企業と競争するだけでなく、AI企業のサービスに自社のCRM基盤を組み込む戦略を選択したことを意味します。

AI・データ製品ARR40億ドルが新たな成長エンジンへ

セールスフォースによると、AIおよびデータ関連製品の年間経常収益(ARR)は約40億ドルに達しています。

売上高全体と比較すればまだ一部ですが、AI関連事業がすでに数十億ドル規模へ成長していることは重要です。

Agentforceが普及すれば、企業が利用するAIエージェント数や処理回数が増え、セールスフォースのAI関連売上高が拡大する可能性があります。

一方で、従来のSaaS企業が採用してきた「ユーザー1人当たり月額料金」というビジネスモデルは、AI時代には限界を迎える可能性があります。AIエージェントが人間の代わりに業務を行えば、ソフトウェアを利用する従業員数と実際のシステム利用量が一致しなくなるためです。

従量課金への移行がセールスフォースの将来を左右する

この環境変化に対応するため、セールスフォースはAIサービスで従量課金型の料金体系を導入しています。

従来のSaaSモデルでは、利用者数が増えれば売上高も増えるため、収益を予測しやすいという特徴がありました。一方、AIエージェントの場合は利用回数や処理量によって収益が変動します。

従量課金への移行は短期的には収益予測を難しくし、AI処理コストの増加によって利益率を圧迫する可能性もあります。

しかし利用量が急速に増えれば、従来のユーザー数ベースの料金体系より大きな売上高を生み出す可能性があります。

AI・データ製品のARRがすでに約40億ドルに達していることを考えると、セールスフォースはこの新しい収益モデルへの移行を着実に進めていると評価できます。

セールスフォースは「CRM企業」から「AI業務基盤」へ

今回の決算から見えてくるセールスフォースの最大の変化は、企業としての役割そのものです。

これまで同社は、営業担当者などが顧客データを管理するCRMソフトウェアを提供する企業でした。しかし今後は、AIエージェントが企業データへアクセスし、実際の業務を自律的に処理するための基盤へ進化しようとしています。

アンソロピックとのClaudeforceは、その戦略を象徴する取り組みです。

アンソロピックやオープンAIなどが企業向けAI市場へ進出する中で、AI企業と正面から競争するのではなく、自社が保有する顧客データや業務システムをAIモデルと接続することで、エコシステムの中心に残ろうとしています。

売上高成長率はかつてほど高くありません。しかし利益率改善とAI関連事業の拡大を同時に進められれば、セールスフォースは成熟したSaaS企業から、AI時代の企業向けインフラ企業へ再成長する可能性があります。

今後の焦点は、約40億ドルに達したAI・データ製品のARRがどこまで拡大するのか、Agentforceの利用量が増加するのか、そして従量課金モデルが高い利益率を維持できるのかという3点です。

今回の決算は、セールスフォースがAIによって既存事業を脅かされる側ではなく、AIを利用して自らのビジネスモデルを再構築する側へ移ろうとしていることを示す内容だったと言えます。

情報ソース: Barron’s: “Salesforce Stock Surges on Solid Earnings, Expanded Anthropic Partnership” (By Adam Levine and Nate Wolf, Aug 26, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「AIでソフトウェア株は終わるのか 割安になったサービスナウとセールスフォースの復活シナリオ

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