S&P500が高値圏で推移するなか、「米国株はすでに割高なのではないか」と感じている投資家も少なくありません。特に株価売上高倍率(P/S)で見ると、市場全体のバリュエーションは過去20年間でもかなり高い水準まで上昇しています。
しかし、こうした相場環境でも、過去の平均と比較して割安な水準にありながら、今後高い売上成長が期待されている企業があります。
マーケットウォッチが2026年8月25日に掲載した記事では、S&P500採用企業の中から、株価売上高倍率と売上高成長率を組み合わせてスクリーニングし、11銘柄を紹介しています。
今回は、その記事のポイントを紹介します。
S&P500のPERは低下している
まず興味深いのは、S&P500の株価が過去1年間で上昇しているにもかかわらず、予想PERは低下している点です。
マーケットウォッチがファクトセットのデータを基に紹介したところでは、S&P500の予想PERは1年前の22.58倍から19.81倍まで低下しました。
株価が上昇しているのにPERが低下した理由は、企業利益の伸びが株価上昇を上回っているためです。
S&P500の今後12カ月の予想EPSは過去1年間で約35%増加しました。株価の上昇率を大きく上回っているため、利益ベースでは以前より割高感が後退した形です。
19.81倍という予想PERは、過去5年間平均の20.23倍を下回り、過去10年間平均の19.48倍に近い水準です。
PERだけを見る限りでは、S&P500が極端に割高とは言い切れません。
一方でP/Sは過去最高水準に接近
ところが、売上高を基準にすると違った景色が見えてきます。
S&P500の予想P/Sは3.26倍となっており、2026年6月につけた過去20年間の最高水準3.35倍に接近しています。
背景には、予想利益が約35%増加した一方、予想売上高の増加が約14%にとどまっていることがあります。
つまり現在の米国企業は、売上高以上のペースで利益を伸ばしています。
利益率の改善によってPERは低下していますが、売上高から見た株価水準は依然として高いということです。
マーケットウォッチの記事では、Ned Davis ResearchのEd Clissold氏の見解も紹介されています。同氏は、企業の利益率が高い局面ではP/S上昇とPER低下の乖離はそれほど問題にならない一方、景気減速時には利益率が急速に低下する可能性があると指摘しています。
現在の米国株を見るうえで重要な視点です。
「過去より割安」かつ「高成長」の11銘柄
そこでマーケットウォッチが行ったのが、S&P500企業を対象にした成長株のスクリーニングです。
条件は大きく2つです。
まず、現在の予想P/Sが過去10年間の平均を下回っていること。
さらに、2026年から2028年までの予想売上高成長率が年平均15.2%以上であることです。
S&P500全体の同期間の予想売上高成長率は年平均7.6%です。その2倍以上の成長率が期待されながら、過去の自社平均より低いP/Sで取引されている企業を探したことになります。
この条件を満たしたのは次の11社でした。
| 企業 | 2026~2028年予想売上高CAGR | 予想P/S | 予想P/Sの10年平均比 |
|---|---|---|---|
| オラクル(ORCL) | 41.0% | 4.1倍 | 77% |
| エヌビディア(NVDA) | 34.3% | 10.2倍 | 73% |
| レディット(RDDT) | 28.3% | 7.2倍 | 63% |
| スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI) | 26.8% | 0.3倍 | 52% |
| アムコア(AMCR) | 24.4% | 0.9倍 | 83% |
| データドッグ(DDOG) | 22.6% | 15.8倍 | 78% |
| ドアダッシュ(DASH) | 19.7% | 4.9倍 | 82% |
| メタ・プラットフォームズ(META) | 19.0% | 5.0倍 | 70% |
| サービスナウ(NOW) | 18.6% | 7.3倍 | 60% |
| ジェネラック・ホールディングス(GNRC) | 17.1% | 2.1倍 | 84% |
| アポロ・グローバル・マネジメント(APO) | 15.2% | 3.1倍 | 35% |
特に目を引くのがオラクル、エヌビディア、スーパーマイクロです。
オラクルの売上高成長率は突出
今回のスクリーニングで予想売上高成長率が最も高かったのがオラクルです。
2026年から2028年までの予想売上高CAGRは41.0%とされています。
一方、予想P/Sは4.1倍で、過去10年間平均5.3倍の77%の水準です。
クラウドやAIインフラ関連需要が急拡大していることが、今後の成長期待につながっています。
今回の11銘柄の中でも「過去の評価水準」と「予想成長率」の組み合わせが特に興味深い企業です。
エヌビディアも過去の自社平均より低い
もう1社注目したいのがエヌビディアです。
予想P/Sは10.2倍と、一見すると決して低い数字ではありません。
しかし過去10年間平均は14.1倍であり、現在はその73%程度の水準です。
さらに2026年から2028年の予想売上高CAGRは34.3%となっています。
つまり「絶対的なバリュエーションは高いものの、エヌビディア自身の過去と比較すれば割安」という評価になります。
成長株のバリュエーションを見る際には、市場平均だけでなく、その企業自身の過去の評価水準と比較することの重要性が分かります。
スーパーマイクロはP/S0.3倍
さらに特徴的なのがスーパーマイクロです。
予想売上高CAGRは26.8%でありながら、予想P/Sはわずか0.3倍です。
過去10年間平均の0.6倍と比較すると52%程度の水準となっています。
ただし、バリュエーションが低いことには、それなりの理由が織り込まれている場合があります。
単純に「P/Sが低いから割安」と判断するのではなく、利益率、競争環境、財務状況、成長予想の実現可能性などを確認する必要があります。
最大のポイントは「売上高予想が本当に実現するか」
今回の記事で最も重要なのは、11銘柄そのものよりも、将来予想の見方かもしれません。
今回のスクリーニングはアナリストによる2028年までの売上高予想を前提にしています。
特にAIデータセンター関連では、オラクル、エヌビディア、スーパーマイクロ、ジェネラックなどが設備投資拡大の恩恵を受けると期待されています。
しかしデータセンター建設には、電力、送電網、半導体、冷却設備、建設能力などさまざまな制約があります。
計画されているデータセンターが予定通り建設されなければ、現在織り込まれている売上高予想も下方修正される可能性があります。
したがって今回の11銘柄は、「割安株ランキング」として見るより、「高い成長期待に対して現在のバリュエーションが過去より低くなっている企業の候補」として見るのが適切です。
まとめ
S&P500全体ではP/Sが過去最高水準に接近しており、米国株市場のバリュエーションには注意が必要です。
その一方、企業利益の急成長によって予想PERは1年前から大きく低下しています。
そして個別企業に目を向けると、オラクル、エヌビディア、レディット、スーパーマイクロ、メタなど、今後高い売上高成長が予想されながら、自社の過去10年間平均より低いP/Sで取引されている企業も存在します。
マーケットウォッチの記事は、「市場全体が割高だから成長株もすべて割高」と単純化せず、個別企業の成長率と過去のバリュエーションを組み合わせて見る重要性を示しています。
ただし、今回の数値はあくまでアナリスト予想を基にしたものです。特にAI関連企業については、現在想定されている巨大なデータセンター投資が実際に実現するかどうかが、将来の売上高を左右する重要なポイントになります。
今回選ばれた11銘柄は、今後さらに詳しく調べる対象を探すための「入口」として利用するのが有効と言えます。
情報ソース:MarketWatch「These growth stocks are still cheap, despite the S&P 500 being near a record high price-to-sales valuation」(Philip van Doorn、2026年8月25日)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への 投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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