宇宙開発企業から、通信・AIインフラ企業へと進化を続けるスペースX(SPCX)に対して、市場で新たな警戒論が浮上しています。
2026年8月21日付のバロンズの記事では、ドイツのDZ BankのアナリストがスペースX株のカバレッジを開始し、「売り」の投資判断と100ドルの目標株価を提示したことが紹介されています。
スペースXは、スターリンクによる衛星通信事業やスターシップによる次世代宇宙輸送、さらにAI向けコンピューティング事業など、複数の巨大市場への展開を進めています。
一方で、その壮大な成長戦略を実現するためには、これまでにない規模の設備投資が必要になります。今回の売り評価は、スペースXの可能性を否定するものではなく、巨大投資をどのように回収していくのかという点に焦点を当てています。
ウォール街では依然として高い成長期待
今回の売り評価は市場全体から見ると少数派の意見です。
記事によると、スペースXを分析するアナリストの約75%が買い評価を付けており、ウォール街では依然として強気の見方が優勢です。
平均目標株価は約226ドルとされており、DZ Bankが示した100ドルという水準とは大きな差があります。
この評価差の背景には、スペースXが今後数年間で大幅な売上成長を実現するという期待があります。
市場予想では、スペースXの売上高は2026年の約440億ドルから2027年には1,000億ドルを超え、2030年末には7,600億ドル規模に達する可能性があるとされています。
この成長を支える中心となるのが、衛星通信サービスのスターリンク、次世代大型ロケットのスターシップ、そしてAIコンピューティング事業です。
AIインフラ企業への転換を目指すスペースX
現在のスペースXは、単なるロケット企業ではありません。
特に市場が注目しているのが、AI時代のインフラ企業としての可能性です。
人工知能の発展には、大規模なデータセンターと膨大な計算能力が必要になります。スペースXは、宇宙輸送技術と衛星ネットワークを活用し、将来的には宇宙空間を含む新しいAIインフラの構築を目指しています。
記事では、スペースXがAIコンピューティング能力を大幅に拡大する計画を進めていることが紹介されています。
同社は現在、地上のデータセンターで約1.4ギガワット規模の計算能力を運用しており、2027年末までには10ギガワット規模への拡大を目標としています。
さらに長期的には、数百ギガワット規模のAI計算能力を視野に入れており、これは現在のテクノロジー企業でも例を見ないほど大規模な構想です。
最大の課題は8,000億ドル規模の投資負担
スペースXの成長戦略には、大きなリスクも存在します。
その最大のポイントが、必要となる設備投資の規模です。
記事では、スペースXが2030年末までに累計約8,000億ドル規模の設備投資を必要とする可能性が指摘されています。
この資金の多くは、AI向けコンピューティング設備、通信衛星の拡大、宇宙輸送能力の強化に投入されると見られています。
AIデータセンターは非常に高額な設備投資を必要とします。記事では、1ギガワット規模のAI計算能力を構築するには約50,000,000,000ドル規模の投資が必要になるケースがあると説明されています。
もちろん、これらの投資は将来的な収益につながる可能性があります。
現在、1ギガワット規模のAI計算能力は年間最大500億ドルの収益機会を生む可能性があるとされており、成功すればスペースXは巨大なAIインフラ企業へ成長する可能性があります。
しかし、巨額投資を先行させるビジネスモデルでは、需要の伸びや資金調達環境が企業価値を大きく左右します。
IPO価格付近で揺れるスペースX株
スペースX株は、上場後も大きな値動きを見せています。
記事によると、株価は過去に225.64ドルまで上昇した一方、104.83ドルまで下落する場面もありました。
直近では、初期投資家や内部関係者が保有する3億1,900万株の売却可能期間が到来したことが、株価の重しとなっています。
また、イーロン・マスク氏がスターシップの上段部分を回収するキャッチ試験について、実施まで数カ月かかる可能性を示したことも短期的な材料となりました。
投資家は、スターシップの開発進展が将来の宇宙輸送コスト低下やAIデータセンター構想の実現につながる重要な要素として注目しています。
スペースXの未来を左右する3つのポイント
今回の売り評価は、スペースXの将来性そのものを否定するものではありません。
むしろ、同社が掲げる壮大な成長戦略を実現するために必要な資金規模と、そのリターンを市場がどのように評価するかが焦点になっています。
今後注目すべきポイントは、スターリンク事業の収益拡大、スターシップの開発成功、そしてAIインフラ事業の具体的な収益化です。
スペースXは、宇宙・通信・AIという複数の成長市場を同時に狙う異例の企業です。
そのため、成功した場合のリターンは非常に大きい一方、計画実行には巨額投資と技術的なハードルが伴います。
投資家にとっては、短期的な株価変動だけでなく、同社が長期的な成長計画をどこまで実現できるかを見極めることが重要になりそうです。
情報ソース: Barron’s: “SpaceX Stock Gets Another Sell Rating. Why It Could Fall 25%.” (By Al Root, Aug 21, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら スペースX
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