AIの進化によって既存のソフトウェア企業が打撃を受けるのではないか――。こうした懸念から、2026年の米国株市場では一部のソフトウェア株が大きく売られてきました。
しかし、足元ではその流れに変化が見え始めています。
バロンズは2026年8月19日付の記事で、ソフトウェア株の最近の反発と、バンク・オブ・アメリカ(BofA)による10銘柄の目標株価引き上げを紹介しています。
今回はこの記事内容をもとに、現在ソフトウェア株で何が起きているのかを整理します。
AIによる「ソフトウェア不要論」が株価を圧迫
生成AIが急速に高度化する中、株式市場では「AIが既存ソフトウェアの機能を代替するのではないか」という警戒感が強まってきました。
特に影響を受けているのが、企業向けアプリケーションやクリエイティブソフトウェアを提供する企業です。
バロンズによると、アドビ(ADBE)は2026年に入ってから23%下落し、サービスナウ(NOW)も17%下落しています。
一方、AI普及によってサイバーセキュリティ需要がさらに拡大すると期待されるパロアルト・ネットワークス(PANW)やクラウドストライク(CRWD)は、それぞれ大幅な株価上昇を記録しています。
つまり、「ソフトウェア株」と一括りにするのではなく、AIによって代替される可能性が意識される企業と、AI普及そのものが追い風になる企業との二極化が進んでいるといえます。
ソフトウェア株に反発の動き
ソフトウェア業界を巡る厳しい市場環境は、ウォール街で「SaaSpocalypse」と呼ばれるほど警戒されてきました。
しかしバロンズの記事では、最近になって一部のソフトウェア株が52週安値から大きく反発している点に注目しています。
たとえばアドビは、6月25日に付けた52週終値ベースの安値193.41ドルから約41%上昇しました。
サービスナウも4月10日の83ドルから約52%上昇。フィグマ(FIG)は6月25日の16.84ドルから約59%上昇しています。
AIによる破壊的影響への警戒感が完全になくなったわけではありませんが、過度に売られていたソフトウェア株を見直す動きが広がり始めています。
BofAが10銘柄の目標株価を引き上げ
こうした株価反発を受け、BofA証券のアナリスト、タル・リアニ氏は8月19日、ソフトウェア関連10銘柄の目標株価を引き上げました。
主な変更は以下の通りです。
| 企業 | ティッカー | 従来目標 | 新目標 | 引き上げ率 |
|---|---|---|---|---|
| ワークデイ | WDAY | 140ドル | 205ドル | +46.43% |
| スノーフレイク | SNOW | 330ドル | 395ドル | +19.70% |
| アサナ | ASAN | 9ドル | 10.75ドル | +19.44% |
| ギットラボ | GTLB | 38ドル | 45ドル | +18.42% |
| ゼータ・グローバル | ZETA | 29ドル | 34ドル | +17.24% |
| アンプリチュード | AMPL | 12ドル | 14ドル | +16.67% |
| アドビ | ADBE | 190ドル | 220ドル | +15.79% |
| サービスナウ | NOW | 130ドル | 150ドル | +15.38% |
| フィグマ | FIG | 30ドル | 33ドル | +10.00% |
| ボックス | BOX | 37ドル | 39ドル | +5.41% |
特に目立つのはワークデイで、目標株価は140ドルから205ドルへ大幅に引き上げられています。
スノーフレイクについても330ドルから395ドルへ引き上げられており、AI時代のデータインフラ関連ソフトウェアに対する期待の高さがうかがえます。
株価上昇の背景に「業績」と「割安感」
バロンズが紹介したBofAの見方では、最近のソフトウェア株上昇には複数の要因があります。
一部のインフラソフトウェア企業で好調な決算や成長加速が確認されたことに加え、大型ソフトウェア株やアプリケーション株では、これまで大きく低下していたバリュエーションが見直されているとしています。
市場心理にも変化が出ています。
これまでは「AIがソフトウェアを破壊する」というリスクが強く意識されていましたが、最近ではその懸念がやや後退し、各企業がAIを自社サービスに取り込むことで成長できる可能性にも目が向けられ始めています。
ソフトウェア企業がAIの「被害者」になるのか、それともAIを活用して新しい収益源を構築するのか。その評価が分かれ始めた局面と考えられます。
アドビについては依然として慎重
ただし、BofAが目標株価を引き上げたからといって、10銘柄すべてに強気というわけではありません。
その代表例がアドビです。
BofAはアドビの目標株価を190ドルから220ドルへ引き上げた一方、投資判断は「アンダーパフォーム」を維持しました。
バロンズの記事によると、BofAは生成AIによってコンテンツ制作のハードルが低下し、低価格サービスやAIネイティブ企業との競争が激しくなる点を警戒しています。
さらに、アドビのAI関連の年間経常収益は全体の2%未満にとどまり、現時点ではAIが明確な成長加速につながったとは判断しにくいとしています。
AI機能を提供していることと、それを大きな売上・利益に変えられていることは別の問題というわけです。
次の焦点はソフトウェア各社の決算
ソフトウェア株の反発が本格的な上昇トレンドにつながるかどうかを判断するうえで、今後の決算が重要になります。
市場が確認したいのは大きく2点です。
1つ目は、生成AIが普及する環境でも既存ソフトウェアへの需要が維持されているか。
2つ目は、各社が自社のAIサービスを実際の収益成長につなげられているかです。
AI機能を追加しただけでは企業価値の上昇には直結しません。AIによって契約単価が上昇したり、新規顧客を獲得したり、解約率を低下させたりするなど、具体的な数字として成果が表れる必要があります。
今後の決算では、売上高や利益だけでなく、AI関連売上、契約額、顧客数、年間経常収益などにもこれまで以上に注目が集まりそうです。
ソフトウェア株は「AIに負ける企業」と「AIを利用する企業」の選別へ
今回のバロンズの記事から読み取れるのは、ソフトウェア株全体が単純に復活しているというよりも、AI時代を生き残れる企業を選別する段階に入ってきたという点です。
2026年前半は「AIによって既存ソフトウェアの価値が低下する」という懸念が先行し、多くの銘柄のバリュエーションが縮小しました。
その結果、業績が堅調な企業まで売られすぎた可能性があります。
一方で、アドビのようにAIネイティブ企業との競争が直接的な脅威となる企業については、株価が反発しただけでAIリスクが解消されたわけではありません。
今後は「ソフトウェア株を買う」という大きなくくりではなく、AIを活用して成長率を引き上げられる企業と、AIによって既存ビジネスの収益性が低下する企業を見極めることが、これまで以上に重要になりそうです。
今回BofAが目標株価を引き上げた10銘柄についても、今後発表される決算とAI関連の収益化状況が、次の株価上昇を左右する重要な材料になります。
情報ソース:Barron’s「Software Stocks Are Bouncing Back From AI Fears. BofA Sees More Gains Ahead.」(By Angela Palumbo, Aug. 19, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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