前回の記事「エヌビディアに6,000億ドルの巨大商機 オープンAIのデータセンター計画が生むGPU需要」では、オープンAIが進める巨大データセンター計画によって、エヌビディア(NVDA)にどれほど大きなGPU需要が生まれる可能性があるのかを紹介しました。
今回は、その続編として「巨大な商機を獲得するためにエヌビディアが背負う金融リスクを、市場はどう評価しているのか」という点に注目します。
マーケットウォッチが2026年8月18日に報じた記事によると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリスト、ヴィヴェック・アリヤ氏は、AIインフラへの巨額支援に伴うリスクを考慮しても、エヌビディア株には現在の水準から55%以上の上昇余地があるとの見方を示しています。
BofAはエヌビディア株に55%以上の上昇余地を想定
マーケットウォッチによると、アリヤ氏は記事掲載時点で約225ドルだったエヌビディア株について、55%以上上昇する可能性があるとみています。
225ドルから55%上昇した場合、株価は単純計算で約349ドルとなります。
BofAが評価しているのは、AI向けGPUの成長性だけではありません。エヌビディアが生み出す巨額のフリーキャッシュフローと、その資金を株主へ還元できる余力にも注目しています。
前回の記事では、オープンAI関連のAIインフラが2030年までに約6,000億ドル規模のエヌビディア製コンピューティング需要につながる可能性を紹介しました。今回のBofAの分析は、その巨大な商機に対して株価がまだ十分に評価されていない可能性を示す内容といえます。
自社株買い拡大が株価の支援材料に
一方で、エヌビディアがオープンAIやAIクラウド企業などに資金支援を拡大していることについては、投資家から懸念も出ています。
自社が資金を提供した企業がエヌビディア製GPUを購入する構造が拡大すれば、利益の質や財務リスクが意識される可能性があるためです。
BofAがこうした懸念への対抗材料として注目しているのが、自社株買いです。
マーケットウォッチによると、エヌビディアは現在、フリーキャッシュフローのおよそ50%を自社株買いに振り向けています。一方、一部の同業企業では75%~100%を株主還元に使っているケースもあります。
そのため、今後エヌビディアが自社株買いを拡大すれば、AIインフラへの巨額投資による懸念を和らげる材料になる可能性があります。
1,050億ドル保証は全額負担を意味しない
今回の焦点となっているのが、SBエナジーと進めるオハイオ州パイク郡のデータセンタープロジェクトです。
この施設ではオープンAIがテナントとなる予定で、エヌビディアは最大1,050億ドル規模の金融支援に関与しています。
ただし、BofAは「1,050億ドル」という金額だけでリスクを判断すべきではないとみています。
オープンAIがリース契約を履行できなくなった場合でも、エヌビディアが1,050億ドル全額をそのまま負担するわけではありません。
施設を別のテナントに再リースしたり売却したりした後でも残る、保証された最低価値との差額部分を負担する仕組みで、支払い義務の上限が1,050億ドルとなっています。
また、過去には10ギガワット規模のデータセンターに対して最大2,500億ドルの保証を行う可能性が報じられていました。それと比較すると、今回明らかになった規模は小さくなっています。
6,000億ドル商機を自ら作り出す戦略
前回の記事とのつながりで重要なのは、エヌビディアがAIインフラへ資金を提供する目的です。
単純に金融事業で利益を得ようとしているわけではありません。
データセンターが建設されれば、そこには大量のGPUが必要になります。つまり、エヌビディア自身がデータセンター建設を支援することで、将来のGPU需要を作り出しているとも考えられます。
AIデータセンターに必要なのは半導体だけではありません。土地、電力、建物、冷却設備などの物理的なインフラも必要です。
BofAは、エヌビディアがこうした「土地・電力・建物」まで含めてAIインフラを確保しようとしている点を評価しています。
GPUを販売するだけでなく、そのGPUを設置する場所そのものを押さえることで、競合より先にAI需要を取り込む戦略です。
最大のリスクはAI需要そのものの減速
もちろん、BofAも今回の戦略にリスクがないと考えているわけではありません。
最大のリスクは、AI市場全体の需要が大きく減速することです。
仮にオープンAIがリース料を支払えなくなったとしても、AIデータセンター需要が強ければ、別の企業へ施設を貸すことで損失を抑えられる可能性があります。
しかし、AI市場全体が減速すれば、新しいテナントを見つけること自体が難しくなります。
その意味では、今回の保証契約で最も重要なのはオープンAI単体の信用力ではなく、AIコンピューティング需要が今後も長期的に拡大するかどうかです。
8月26日の決算で注目したいポイント
マーケットウォッチによると、アリヤ氏は2026年8月26日に予定されているエヌビディアの決算発表で、こうしたオフバランスシート上の契約について、より詳しい情報が開示される可能性があるとみています。
前回の記事で紹介した「約6,000億ドルの巨大商機」と今回のBofAの分析を合わせて考えると、エヌビディアの評価軸は変わりつつあります。
GPUを何個販売できるかだけではなく、巨大AIインフラを成立させるためにどれだけ資金を投入し、そこからどれだけキャッシュを生み出し、そのキャッシュを株主へ還元できるのかまで見る必要があります。
BofAが示す55%以上の上昇シナリオが実現するかは分かりませんが、8月26日の決算では、AI需要の成長だけでなく、金融保証の規模や自社株買いなどの株主還元策にも注目したいところです。
情報ソース: MarketWatch: “Here’s the case for Nvidia’s stock to climb 55%, according to BofA” (By Hannah Pedone, Updated Aug. 18, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
🎧この記事は音声でもお楽しみいただけます。AIホストによる会話形式で、わかりやすく、さらに深く解説しています。ぜひご活用ください👇