2026年6月に上場したスペースX(SPCX)の株価を考えるうえで、今後大きな焦点となるのがロックアップ解除です。
一般的なIPOでは、上場から180日後などにインサイダー株が一斉に売却可能になるケースがあります。しかし、スペースXでは従業員や初期投資家の保有株を、経過日数や四半期決算に連動して段階的に解除する複雑な仕組みが採用されています。
すでに8月6日に最初の大規模解除が行われましたが、今後も12月まで複数の解除イベントが続きます。今回はSEC提出資料をもとに、今後のスケジュールと株価への影響を整理します。
8月6日に約9億1,150万株が売却可能に
スペースXは2026年6月11日にIPO価格を1株135ドルに決定し、6月12日にナスダックで取引を開始しました。
一方、発行済み株式数は約136億株あり、IPO直後に市場で自由に取引できる株式は全体の一部に限られていました。
その状況が最初に大きく変化したのが8月6日です。
8月4日に第2四半期決算が発表されたことで、180日ロックアップ対象株の20%にあたる約9億1,150万株が新たに売却可能になりました。
市場では大量のインサイダー売りが警戒されましたが、実際には想定されたほどの売却は発生しませんでした。その結果、悪材料出尽くしとの見方も広がり、翌8月7日のスペースX株は16%上昇しました。
ここで重要なのは、ロックアップ解除は「株式が売られる日」ではなく、「株式を売却できるようになる日」だという点です。
今後のロックアップ解除スケジュール
8月6日に解除された約9億1,150万株が対象株の20%に相当することから、180日ロックアップ対象グループ全体は約45億6,000万株と推定できます。
SEC資料による今後の主な解除スケジュールは以下の通りです。
| 解除時期 | 追加解除割合 | 解除株数の概算 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 2026年8月20日 | 7% | 約3億1,900万株 | 70日経過による解除 |
| 2026年9月9日 | 7% | 約3億1,900万株 | 90日経過による解除 |
| 2026年9月24日 | 7% | 約3億1,900万株 | 105日経過による解除 |
| 2026年10月9日 | 7% | 約3億1,900万株 | 120日経過による解除 |
| 2026年10月24日 | 7% | 約3億1,900万株 | 135日経過による解除 |
| 2026年第3四半期決算後 | 28% | 約12億8,000万株 | 決算発表後、2回目の完全な取引日から解除 |
| 2026年12月8日 | 残り約17% | 約7億7,500万株 | 180日ロックアップ満了で残存分を解除 |
8月20日から10月までの5回だけでも、合計約15億9,500万株が追加で売却可能になります。
なお、10月24日は土曜日のため、実際に市場で売却できるのは通常、次の取引日となる10月26日以降です。
最大の山場は第3四半期決算後
2026年後半で最も重要なイベントは、第3四半期決算後に予定される28%の追加解除です。
SEC資料では、9月30日までの第3四半期決算を公表した後、ナスダックにおける2回目の完全な取引日から最大28%を解除できる仕組みになっています。
対象株を約45億6,000万株とすると、解除規模は約12億8,000万株です。
これは8月20日に予定される約3億1,900万株の約4倍に相当します。
現時点では第3四半期決算の日程は確定していないため、具体的な解除日も決まっていません。ただし、10月下旬から11月上旬にかけて市場の大きな注目材料となる可能性があります。
12月8日には残存分も解除
さらに2026年12月8日には、180日ロックアップ期間が満了します。
これまで予定通り解除が進んだ場合、第2四半期決算後の20%、経過日数による35%、第3四半期決算後の28%を合わせて83%がすでに解除されます。
そのため12月8日には、残る約17%、株数にすると約7億7,500万株が売却可能になる計算です。
ただし、これでスペースXのすべてのインサイダー株が自由になるわけではありません。
マスク氏の約64億株は2027年6月までロック
イーロン・マスクCEOが保有する約64億株には、通常より長い366日間のロックアップが設定されています。
しかもマスク氏には、従業員や初期投資家に適用される早期解除規定がありません。
そのため契約上は2027年6月12日までロックされています。6月12日は土曜日のため、実際に市場で売却可能になるのは通常6月14日以降になります。
また、一部の大口株主についても2027年まで段階的なロックアップ解除が続きます。
つまり、スペースXの株式需給を巡る問題は2026年12月で終わるわけではありません。
ロックアップ解除で見るべきは「実際の売却」
ロックアップ解除は一般的に株価の下落要因と考えられます。売却できる株式が増えれば、市場の供給量が増えるためです。
ただし8月6日の動きが示したように、解除株数が多くても既存株主が売却しなければ、必ずしも株価は下落しません。
スペースX株は6月16日に終値201.80ドルまで上昇した後、8月13日には141.29ドルまで下落しています。高値から約30%調整しているため、初期投資家が現在の株価で売却を急がない可能性もあります。
今後は解除される株数だけでなく、解除日前後の出来高や株価、実際の売り圧力を確認することが重要です。
特にロックアップ解除日に出来高が急増し、株価が下落する場合には、従業員や初期投資家による売却が増えている可能性があります。
反対に、解除株数が増えているにもかかわらず出来高が大きく増えず、株価も安定している場合には、既存株主の売却意欲が低いと判断できます。
2026年後半は業績と株式需給の綱引きへ
スペースXにはスターリンク、スターシップ、ロケット打ち上げ、AIコンピューティングなど大きな成長テーマがあります。
一方、短期的な株価については企業業績だけでなく、数十億株規模の潜在的な売却圧力を無視できません。
特に注目したいのは8月20日の約3億1,900万株、そして第3四半期決算後に予定される約12億8,000万株の解除です。
ただし「ロックアップ解除=株価下落」と単純に考えるのは危険です。
今後のスペースX株では、何株が売却可能になるのか以上に、実際にどれだけの株が市場へ出てくるのか、そしてその売りを機関投資家や個人投資家が吸収できるのかが重要になります。
2026年後半は、スペースXの成長期待と巨大な株式需給の変化が綱引きを続ける局面になりそうです。
情報ソース:
・Space Exploration Technologies Corp.「Form 424B4(Final Prospectus)」2026年6月11日付、SEC Registration No. 333-296070
・Space Exploration Technologies Corp.「Free Writing Prospectus(Filed Pursuant to Rule 433)」SEC Registration File No. 333-296070
・Space Exploration Technologies Corp.「Amendment No. 2 to Registration Statement on Form S-1」SEC File No. 333-296070
・SpaceX Investor Relations
・Reuters
・Barron’s
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら スペースX
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